5月6日 何回かノックをしても返事もない。たしか、談話室に行くと言ってたはずだけど。ドアノブを回すと簡単に開いた。
この部屋に入るのは初めてだ。前に来た時はカルエゴくんが「俺が一人で入るからお前は外で待ってろ」と言って、廊下で待たされた。
部屋の中は電気もつけず、カーテンも閉めたままで薄暗い。タバコとお酒の嫌な匂い。窓を開けたいくらい。足元もよく見えない中を窓に向かって進むと、突然何かにつまずいて派手によろめいた。
「いってぇー」男の人の低い、不機嫌そうな声。
「ごめんなさい! 気が付かなくて。」
シーツをかぶった人影が、のそりと上半身を起こすのが見えた。黒くてボサボサの癖っ毛に、無精ひげ。多分この悪魔が、カルエゴくんの叔父さんだ。会うのは初めて。
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