天使と悪魔(仮) 骸骨のようにやせ細った神父は震える指先で、部屋の隅の子どもを指さすと声を絞り出した。
「貴方がたにお渡しできるものは、もう、あの子のほかにはありません、私にはもう何もないのです。どうぞあの子をお金に替えてください」
指をさされた痩せた男の子は、黙って神父を見返していた。今まさに自分自身を売り払おうとしている神父を。
「おい、ふざけるな! お前の借金がいくらになるか分かってんのか! あんなガキで足りるか!」
椅子に座った神父にカルエゴが詰め寄ると、神父は力なく首を左右に振った。
「本当に、もう何もないのです、何も。私は……全てを手離しました、最後まで守りたかった、信仰心……までも」
神父は苦しそうに顔を歪めると、胸から下げた十字架を両手で握りしめた。すでにまっすぐに姿勢を保つことすら難しいのか、両肘を机について倒れ込むようにしながら、必死に言葉を繋ぐ。
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