『ふぅ。また大変な事になりましたね…』
目の前に現れた複数のボタンの前で首を傾げそれを見つめる長身の女性、祷はため息交じりにそう呟く。
前回の判子の事を思い出しながら警戒は強めにしておこうとスイッチは押さずにまた一人口を開く。
『一度は亜空間への移動は成功しましたが次も成功するとは限りませんしもっと情報が欲しいところですね』
そう言うと暗い廊下へと懐中電灯の灯りを頼りに足を進める。
暫く壁や教室などを探索して再び廊下へ出ると足元からカサッと紙を踏んだ音が聞こえ足元へと懐中電灯を向け紙を拾い上げる。
『これは…地学の資料でしょうか…なぜこんな廊下に…?』
そう疑問に思い廊下を照らすように懐中電灯を向ける。
照らした先に男性の足が視界に入り思わず心臓が飛び跳ねる。
『だ、大丈夫ですか…!』思わず声を張り上げ急いで駆け寄る。
そして見覚えのある姿に再び声を漏らす。
『や、八頭司さん…?』
ハッと我に返り、なぜ倒れているのか壁のボタンと彼の性格を考えた瞬時に全てを理解する祷。
『この人は……はぁ』自分の額に指を宛て大きなため息を一つ。
きっと残業して作っていたであろう散らばった資料たちを拾い上げ、廊下の隅へ避難させ八頭司さんの体を持ち上げる事は不可能なので整え廊下の隅へと引き摺って移動させ、年の為脈をとる。
『よかった…まだ無事なようで…ですがこのままではよくありませんね』
無事を確認すると安堵する。
ただこのまま放置にはできないので自分自身もこのスイッチを押さねばと決意をする。
祷は直ぐには押さず自身が入ってるチームへとメッセージを送る。
”○○階の廊下で八頭司さんを発見。スイッチを押したようなので救出へと向かいます”
そうチームへと送信すると祷はスイッチを押す。
再び亜空間へと移動する。
移動には見事に成功するも着いた先には暗闇が広がる空間。
室内なのか確認しよう立ち上がると同時に頭痛が襲う『…ッ、これは…間違いなく七億不思議の気配…ですね』眉間に皺を寄せつつ灯りを照らすと無数のスイッチ。
祷は言葉を失う。
自分のいる空間には人の気配は感じられずどこかに移動したか飛ばられたの二択であろうと考え『あの方はどのボタンを押したのでしょうか…』腕を組み思考を巡らせる。
ボタンに指を翳し、頭痛が一番酷くなったものを押そうと決意。
暫くして一つのボタンで指が止まる。
『…恐らくこのボタンでしょうか』そう決めた瞬間、指を一旦離し一呼吸。
常備していた水なしで飲める頭痛薬を飲み込むと再びボタンを押しそのまま別空間へと移動をする。
寒い。
その言葉がピッタリ当てはまる冷え切った部屋だ。
『…この格好で来るべきではありませんでしたね』そう言葉を漏らし周りを確認する。
そして視界に床に転がる八頭司さんの姿と『無理難題ナ試験も考えたノニ』の言葉が耳に入りまたため息をつく。
『…無理難題な試験では誰も合格しないのではないですか?』
そう言葉にして八頭司さんへと近寄ると自分の上着をかける。
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