テンペスト 日曜日——U-17日本代表合宿所の休息日——の午後四時。
招集された学生たちが思い思いに過ごす中、跡部はひとり、ピアノと向き合っていた。
合宿所のバーの片隅に設置されているピアノだ。バーは宿舎の北側のはずれにあるためか、外界から切り離されたかのようにひっそりとしている。
初秋の冷ややかな空気をそのままに感じられるこの空間を跡部は気に入っていた。合宿所ではひとりの時間が取れないのも相まって、休息日には好んで足を運んでいる。
跡部が鍵盤に指を滑らせていると、不意に声がかけられた。
「ベートーヴェンの『ピアノソナタ第17番』ですね」
跡部が指を止めた。
「鳳か」
どうした、と跡部が鍵盤から顔を上げた。
バーのピアノは、休息日であれば誰でも利用できる。
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