七月十三日の刻印「えー、うむ。と、隣の人はいますか?」
いつになく上ずった煉獄槙寿郎の声が響いたのは、大型バスの中だ。
それに対して、
「はーい!」
と満席の子供達が一斉に声を揃えた。
中ほどの席に着いている杏寿郎も両手を挙げて答える。
槙寿郎はそれでも慎重に人数を確認した上で、運転手に出発の合図をした。
子供で満載の大型バスはそろそろとサービスエリアを出て、まもなく高速道路に合流した。
今日は子供会の遠足、夏休みには一足早いが、子供達には待ちに待った遠出だった。
今年の子供会の世話役を引き受けた槙寿郎は最前列でシートベルトをしめつつ、バスガイドよろしくマイクを握っていた。
剣術道場とは勝手が違い、何度もつっかえながら、それでも手元のカンペ(次男と留守番の妻が書いてくれた)を読み上げる。
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