初雪 年の瀬も迫ってきた冬本番、夏油と五条は任務を終え高専の寮へと戻る最中の事。迎えの車が渋滞に巻き込まれてしまった為、電車と歩きで戻ってくる方が早いという結論に至り、男子寮の建物が見えてきた時だった。同じ歩幅で歩いていたはずの友人が立ち止まるので夏油は少し遅れて振り返り、来た道を数歩戻る。
「悟?」
「……雪だ」
五条が真上を見詰めながらそう呟くので夏油も反射的に上を向いた。時刻は既に夜十時、腹の虫が騒がしいのも忘れて二人は舞い始めた雪に息を吐く。負けじと白いその吐息が更に寒さを際立たせる。
「降ってきたね、このまま振り続けたら積もるかな」
「積もったらどうすんの?」
今だ上を見上げながら問いかけてきた五条へと視線を戻した夏油は一瞬考え込むように目を伏せる。
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