がきぬい「ともくん!」
「不知火先輩!」
「俺達どっちを選ぶんばぁ」
どうしてこうなったのか、不知火には分からない。けれど目の前には姿の違う二人の新垣がいる。どちらかが不知火にとっての後輩のはずだが、何故か思考が朧気で分からない。これは夢なのだろうか。
困ってしまった不知火は眉を下げ、逡巡した後に二人の肩を抱く。
「どちらも新垣だって言うなら、選ぶ事なんて出来ないさぁ。俺にとって新垣は、大切な後輩やし」
「不知火先輩……」
「ともくん……」
目を潤わせ、二人は不知火を見上げている。これで分かってくれたかと頷いていると、彼らの目がキッと釣り上がった。
「今はそういうの求めてないっ!」
二人から返ってきたのは、罵声であった。呆気に取られ、不知火はポカンと口を開ける。すると、彼らはパンっと手のひらに拳を打ちつけた。
「ともくんは一回分からせる必要があるさぁ」
「賛成。俺達がどれだけ不知火先輩のこと好きなのか……理解しもらわないとやー」
じりじりと二人が迫ってくる。逃げようにもどこへ行けば良いのか分からず、不知火は飛びかかられるがまま新垣たちに捕獲されてしまうのだった。