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    prototypekayan

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    prototypekayan

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    連載のおまけに書こうとしたけど入れなかった部分。
    タイタンの面子が出ます。

    ##スミイサ連載番外編

    巨人たちの夜会 日付が変わったころ、広すぎるマンションのリビングでスミスは一人でソファーに腰掛けていた。ガラスのテーブルには買ったばかりのヒーローグッズが無造作に散らばっている。まだ水滴が滴る髪をタオルで乱暴に拭きながら鼻歌混じりで片手でスマホを操作する。
    「イサミはもう寝てしまったかな」
     おやすみのメッセージは既読がつく気配はない。今日は流石に疲れてしまったのだろうか。彼の安らかな寝顔を想像して頬が緩む。
     
     ピピピピ……
     
     ペットボトルの蓋を捻ったその時、テーブルの上に放置していたスマホが着信音と共に震える。まさかイサミ?と一瞬高鳴った心は画面の表示を見て急降下で沈んでいく。これから起きる面倒を想像するとこのまま放置でもいいのだが、着信音で子ども部屋のお姫様が起きてしまってはいけない。スミスは面倒くさいと溜め息を吐きながら電話に出た。
     
    「…………何の用事だ?」
    『おお、怖い怖い。もしかしてお楽しみ中だったか?』
    「そんなわけないだろ。で、そんなつまらないことが聞きたくて電話してきたのか、ヒロ」
     
     スピーカーから陽気な声が聞こえてくる。こんな遅い時間に電話をかけてきたのは同僚のヒロだった。彼の声の後ろでジャズの音色がすることからどうやらどこかで飲んでいるようだ。
     
    『意中の彼とのデートはどうだったかな、マリーン?』
    「……はぁ」
    『おぉっと、まさかまさか振られたとか?』
    「もう切るぞ」
    『ああ! 待てよスミス。デートがどうなったか俺たちも気になってたんだよ』
    「…………ん? 他に誰かいるのか?」
    『ああ、俺もいるぜスミス』
    「リョウマ!」
     
     どうやら電話の向こうにいたのはヒロだけではなかったらしい。直属の上司にあたるリョウマ・アラカイの声にスミスは驚いて姿勢を正す。
     
    『今日は友人としてだ、気を楽にしてくれよ』
    「あ、ああ。すまない」
    『で、スミス〜。今日はどうだったんだ? 俺もリョウマもそれが気になってな』
    「酒の肴にしていたわけか」
    『まあそうとも言うな』
     二人が声を揃えて笑うのを聞きながらスミスはペットボトルに口を付けて水を飲む。ひんやりとした水は全身に染み渡りスミスは幸福に震えた。
     
    「——告白したよ。愛してるって」
    『っおお!』
    『やるじゃないか色男』
     冷やかしの口笛で囃し立てられてくすぐったくなり無意識に髪を触る。脳裏に浮かぶのは顔をほんのり赤く染めたイサミの姿。夕陽に照らされて更に美しい想い人。
    「返事は保留になった。今後のお楽しみってことだな」
    『は!?』
    『これはまた面白いことになってるじゃあないか』
     ヒロは驚いているようだがリョウマは感心しているようでグラスの氷の落ちる音が聞こえてくる。
    『お前よく我慢したな。そのまま強引にイエスって言わせるかと思った』
    「それじゃ意味ないだろ。イサミが心から俺を求めてくれないと。俺は待つって決めたんだ」
     ソファーに背中を預けて天井を見上げる。幸せなデートの思い出に胸がいっぱいになっているスミスの様子を電話の向こうから見透かしたようにリョウマが笑う。
    『そうだな。相手から求められるまでじっくり待つことも大事だ。獲物を確実に仕留めるにはな』
    『リョウマがそう言うと説得力が違うなあ。流石社内で一番モテる男』
    『褒めるなよ、照れるだろ』
    『……褒めてないぜ』
     
     リョウマの言うとおりだ。今までのスミスなら大いに同意していただろう。
     臆病な相手の警戒心を解いて、安心しきったところを仕留める。
     狩りの基本だ。
     でも今日のイサミの顔と唇のぬくもりを思い出すとどうも後ろめたさが勝ってしまい大きく頭を振った。
     
    「待て待て待て待ってくれ! 俺はイサミに対しては誠実でありたいんだ。獲物なんてそんな言い方しないでくれ」
     震えるような大声に好き勝手に話していたリョウマもヒロもぴたりと会話を止めた。スピーカー越しに痛い沈黙が続く。
    『まさか、スミスお前、ティーンじゃないんだし……』
    『本気、なのか』
    「当たり前だろう! 今日のために俺がどれだけ心を砕いたか分かるか?」
    『お前最近心ここに在らずだったのはやっぱそれか』
    『お前、昨日提出されたデータ、ミスだらけだぞ。明日再提出しろよ』
    「そ、それは、その、申し訳ない」
     電話越しのリョウマの呆れた声に肝が冷え、スミスはしどろもどろになりながら謝罪する。
    「でも、その、初めてなんだ。こんなに人を好きになったのは。だから大切にしたいんだ」
    『スミス、お前そんな奴だったのか』
    「最初はイサミを独占したいとか考えてたけど今は違う。ルルを大切にしてくれるところとか、楽しそうに仕事をしているところとか、ずっと側で見ていたいだけなんだよ」
    『はぁ〜シンデレラにすっかり夢中だな』
    『そこまで言われるとどんな奴か気になるな。今度連れて行ってくれよ』
    「駄目だ! イサミにちょっかいかけるならいくら二人でも許さないからな」
     
     勢いにまかせて最後の一口を一気に飲み干す。空になったペットボトルを両手で包み込んで胸元に寄せて熱い息を一つ。興奮した息遣いを二人に気取られても構わない。
     
    『イサミを守るナイトってか。独り占めとは悪い男だな、ルイス・スミス』
    『いや、いい男だよお前は』
     ヒロとリョウマから正反対の評価をもらいながらスミスは笑う。ジャズと賑やかな二人の声を聞きながらスミスはそっと目を閉じる。
     
    (俺をもっと好きになって、イサミ)
     
     多分きっとそう遠くない未来。イサミは俺の手を取ってくれる。
     
    『しかし日本の文化は分からんな、付き合うのに告白? 何回かデートしたらそれでカップル成立では?』
    『日本人は奥ゆかしいからな』
    「ヒビキに聞いてなかったら何も知らずにイサミと付き合った気になってるところだ。危ないところだった……でも、告白も悪くない。イサミの照れた顔も可愛かった……あの顔が見れるなら俺は毎日イサミに愛を囁くよ」
     
     その言葉通り、翌日以降スミスの猛アタックが始まり、仕事の合間に致死量の惚気を聞かされることになるとはこの時はヒロもリョウマも思ってもみなかったのである。
     








    アラカイは爆モテだろうな〜という印象です。
    あとスミスが飲んでたペットボトルはあれです。イサミの置いてったやつです。
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