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    霧(きり)

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    霧(きり)

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    ワードパレット24 結ぶ 足跡 花
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    創作っ子の始まりを書いてみる。以下キャラの名前とメモ書き。

    青野 光祐 絹川 永久
    2人は小学3年くらいまで同じクラスだった。それから永久は家族と海外(メインヨーロッパ)で暮らす。高校は日本で過ごしたい(音楽から距離を置きたい)と思って1人戻ってくる。母方の親戚(鶴田家)に下宿。3年の冬に戻ってきて、2人は同じ高校に通うことになる。

    ##ss
    ##創作

    マツバウンラン 雨上がり、色濃くなったアスファルトの上を光祐と二人、歩く。家から離れれば、景色も見覚えのないものになっていく。けれども、斜め前を歩く光祐は、一切迷いのない足取り。学校見学に行ったとは言っていたけれど、その一度ですっかり覚えたのだろうか。
     ふと、光祐が振り返る。ずいぶん鋭くなった猫目。その瞳孔が光を浴びて縮む。どうしたのと問えば、いや、と言いつつある一点を見つめる。その先を辿ると、自分の靴に至る。
     靴紐が解けていた。一言断ってしゃがみ込み、紐を結ぶ。もう一度謝らなくちゃ、と顔を上げた先、薄紫の花々が目に入った。向こうでも見かけた野花。小さな花を、垂直にいくつもつけたその植物が、道の横に広がる空き地にぽんぽんと生えていた。
    「懐かしい……」
    「何が?」
     指差すと、ああ、と光祐は納得したように足を踏み入れる。ぬかるんだ土に、大きな足跡がつく。あの頃から、随分大きくなっていた。
    「確かにな」
     彼にも見た覚えがあるらしい。いつ見たんだろう、と光祐の顔を見上げる。てっきり花を見ていると思っていたが、目が合った。
    「どうしたの?」
    「……別に」
     不思議に思ったが、頷いて立ち上がる。もう一度だけ、ささやかな花畑を振り返る。その風景に、僕は既視感を覚えて脳に問いかける。
    「早くしないと日が暮れるぞ」
     思い出せないまま意識を引き戻された。慌てて、変わらず先を行く光祐に続いた。
     僕の意識は周りの町並みに移った。これから通う高校への道、今から覚えておかなくてはならない。一際大きな家、コンビニ、町工場……目印になりそうな建物を反すうする。
     そうしていると、いきなり肩を掴まれた。その腕の先で、光祐は呆れたように眉を上げていた。
    「永久、とわってば、聞こえてないな?」
    「ごめん……景色見てて」
    「必死にならなくたって、通ってりゃそのうち覚えるよ」
    「それにどれくらいかかるか……」
     僕は、どうにも地図を読むのが苦手だった。新しい場所を訪れるたび、必死だった。言葉が分からないからなおさら。見て覚えるしかなかった。
     そう返すと、光祐は僕の肩を叩く。
    「大丈夫だって、一緒に通えば良いじゃんか」
     僕が答える間もなく、光祐は背を向け、歩く速度を上げてどんどん前に行ってしまう。置いていかれたらと焦った僕は、小走りで追いかける。
     結果、走らなくても追いつくことが出来た。段々と速度を落とす。その広い背中にまた既視感を抱いた。ただ、今度はハッキリとしていた。
    『いっしょにかえればだいじょーぶ!』
     光祐はあの時もそう言って、何を思ったのか急に走り出したのだ。同じ言葉に同じ反応。今日、戻ってきて初めて会ったわけでもないのに、光祐なんだなあ、といまさらに実感する。
     身長が伸びて背中が広くなっても、目付きや口調が鋭くなっても、根っこは同じなんだ。
     そう思うと肩から力が抜ける。そこでやっと、全身に力が入っていたのだと意識が向いた。少し上がった息を、深呼吸して落ち着かせる。
     変わっていないものを見つけた僕は、ようやく息をつけたような気がした。
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