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    徳田ネギヲ

    @tokudaSAN0

    ごった煮。そのまま流すのちょっとどしよかな…ってやつを置いてます。最近はスタバレの主♂×セバスチャンで幻覚をみている

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    徳田ネギヲ

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    【ス夕八゛レ】週間ライティング
    お題:カリコ砂漠

    弊牧場主ルーカス・テューダーの死生観。重い。
    ※弊主♂×セバスチャン結婚前提

    ルーカスまとめはこちら
    https://poipiku.com/2213141/9499627.html

    #StardewValley週間ライティング
    #StardewValley

    "Never."------------- 
     
     
     カリコ更紗の砂漠――とは名ばかりの緑化が施された大地。本来であれば風が様々な更紗模様を描く一面の砂地は、マツ・オーク・カエデが一定間隔で立ち並び、青々とした葉を繁らせている。
     カリコ植林地とでも改名すべきか――勝手に植えておいて勝手に改名するのもおこがましいか。ギラギラと照り付ける太陽の下、そんな枝葉末節を考えながら、牧場主ルーカスは、自らが植えたその木々に斧を振るっていた。
     スターデューバレーに根を下ろして3年目、冬。かねてより農場の大規模な改修を進めてきたが、採り貯めたつもりの建材がいよいよ底を尽きようとしている。シンダーサップの森も、鉱山へ続く山道も、伐れる木は全て伐り倒した。新しく建てたビッグシェッドの中には保存ジャーをずらりと並べる予定でいたが、理想の数に届かないばかりか、作り足すことさえままならない。
     やむなくここカリコ砂漠を勝手に植林地として、枯渇した木材の確保に努めている。土地を広く使用できるのもあったが、何より季節に関係なく苗が育つのは有り難い。ワンシーズンの間に雑木林へと変貌していく砂漠に、サンディや砂漠の商人は感嘆の声を上げはしたが、二人とも微かに当惑の色を浮かべていたことは憶えておくべきだろう。
     この林を全て伐り倒して再度種を植え尽くしたら、今度は鉱山に籠ってひたすら石を砕く作業が待っている。聳え立つ労働の山を前に、ルーカスは深い溜息を吐いた。
     作業の手を止め、疲労の溜まり始めた腰を伸ばす。上半身を捻りながら辺りを見渡していると、ふと高台の上に目が留まった。
     砂地に半分埋もれたドラゴンの骨が、今も尚餓えたように天へあぎとを構えている。その虚ろに窪んだ目と目が合ってしまった気がして顔を背けると、水場の向こうに洞々と口を開けた窟に視線が捕らえられた。一度おっかなびっくり入りはしたが、4階あたりで限界を感じて逃げ帰ってきたドクロの洞窟。あのまま進んでいたらまず間違いなく、診療所に担ぎ込まれていたことだろう。

     ――いや。もし中で倒れたまま、誰にも見つからなかったら。

     屍を目の当たりにしたせいだろうか。自分が死ぬところを想像してしまって、日向に居るにも拘らず肌が粟立つ思いがした。ジリジリと皮膚を灼く日光とも怖気ともつかないそれに、思わず腕を抱く。
     もし誰にも見つからなかったら、遺体はどうなるのだろう。モンスターに貪り喰われ、白い骸を晒して、無念の叫びを上げたまま、天井にあぎとを向けるのだろうか。あのドラゴンと同じように。

     ――ああ、"嫌だ"。

     悪い想像を断ち切るように、斧を振り上げる。マツの木がメキメキと断末魔を上げて、地に伏した。切り株に刃を突き立て、根こそぎ割いていく。散らばった生木はまるで砕かれた骨のようだった。
     谷に来る以前には、死について深く考えることは無かったように思う。元より生についても希薄な方だったかもしれない。忙殺され、磨耗し、ある日突然斃れたとしても、それは文字通り己の命運尽きる時。そう思っていた自分が、いつ来るとも知れない死に怯えている。
     デスクワークと比べれば、事故の危険を孕む鉱業やモンスター討伐業に現実的な死の存在を感じるのは自然なこととはいえ――幸福の只中に在るからだろうか、今、心から死が恐ろしい。
     きっかけはやはり、所帯を持ったことだった。今際の際に最も気掛かりなのは、パートナーであるセバスチャンのこと。彼を残して逝くことは、ルーカスにとっては自身に課した約束の反故でもある。
     彼と直接取り決めたものではない。寧ろ本人には話したこともなかったが、ルーカスは己の死期について、年下である彼よりも後にすると決めている。彼を最期の瞬間まで独りにしたくないという、身勝手な願いからだ。
     彼自身がそれを望むかどうかは正直なところわからない――怒られるような気もするし、案外悪くないと言うような気も少ししている――だから話していない。これはペンダントを贈る時に決意した、独善的な密約。勿論、共に逝ければそれがベストだけれど。
     昏い洞窟の中で人知れず朽ちていくなど、望みの対極とも言っていい。遺体が見付かったとして、それを見た彼の心中を思うと――自分への情けなさで胸が潰れそうになる。
     実のところ、ここまで忌避感を感じているのは、死そのものより彼を独り残すことに違いなかった。彼より後に死にたいのも、結局は「置いて行かれる経験」をもうさせたくないからで。
     かつて孤独に吞まれ、やがて孤独を愛するようになった彼に、わざわざ孤独を手放させたのは自分なのだ。それをまた孤独に突き放すなんて、それこそ身勝手というものだろう。
     どうせ身勝手であるならば、せめて責任だけは果たしたい。たとえそれが独善だったとしても。
     
     気が付けば、カリコ砂漠に薄暮が迫っていた。考え事をしながら手を動かすには、この谷の一日はあまりに短い。
     昼間よりその温度を和らげた風が、植えたばかりの種たちに優しく砂を被せていく。太陽は山間やまあいに身を沈め、深い影が大地を覆う。
     木々はまだ少し残っていたが、今日は終業とすることにした。指輪のおかげで夜間でも作業は可能だが、今は一刻も早く帰って、彼の顔が見たかった。


     * * *


     家を出る時に降っていた雪はまだしんしんと続いていた。急激な気温差に身震いしながら、バス停からの短い帰路を急ぐ。
     玄関のデッキに足をかけたところで、大きなくしゃみをひとつ。音のない雪の夜にそれは吸い込まれるように消えていった。

    「ただいま……はぁ、さっぶ」
    「おかえり。中までくしゃみが聞こえたぞ。早く火に当たれ」

     ドアを開ければ、ぱちぱちと暖炉の薪の爆ぜる音、ミニ・ジュークボックスから流れるお気に入りの曲。温かく心地好い空気と、パートナーに出迎えられて、ようやく人心地ついた気がした。生きてこの家に帰ってきた幸福を、密やかに噛み締める。

    「今日はどこへ行ってきたんだ?」
    「砂漠へ木を伐りに」
    「『砂漠へ木を伐りに』……か、フフ」
    「フ……ごめん、俺も変なこと言ってる自覚はある……」

     一行で矛盾した報告を笑いながら、かくかくしかじかと今日の業務内容を説明する。農場の内外で行う仕事が、在宅ワーカーの彼にはとっては面白いらしく、毎日こうやって業務報告をするのが習慣となっている。

    「そうか――何にせよ、無事に帰ってきてくれて何よりだ」
    「……? 何かあった?」
    「……いつだったか、鉱山で倒れてたのを母さんが見つけたことがあっただろ。ああいう無茶をまたしてるんじゃないかってな」

     そう言われて、かつての醜態を思い出した。
     体力も僅か、回復もままならない状況で、あと1階層でエレベーターのある階に行けるからと先を急いで結局モンスターに囲まれた時のことだ。這う這うの体で逃げだして、鉱山の入り口で気絶したところに、たまたまロビンが通りかかって――あれはそう、1年目の冬だった。
     ちょうど今のような時節、確かにあの頃はまだそういう無茶もしていた。痛いところを突かれて視線が泳ぐ。

    「お前はタフだって分かってるけど……時々心配になるんだ。ライフエリクサーや頑丈なブーツを持たずにモンスター狩りに出るなよ。いいな?」
    「そう言われてからはちゃんと持つようにしてるよ」

     詰め寄るような口調で心配する彼に、バックパックからピンクのボトルを取り出して見せる。もう何度目かの忠告になるが、定期的にそう言ってくれるのは確認の意味でも有難い。いつまで経っても安心させてやれないのは不甲斐ないばかりだが。
     いつもならそこで終わる話だった――短い溜息のあと、ぽつりと彼が呟く。

    「オレの知らないところで死なれるのが一番嫌なんだ」

     息を呑む。帰り着いた時、自分は何か変な顔をしていただろうか。あるいはただ単に考えるタイミングが重なってしまっただけなのか。
     いずれにせよ、突然の見透かしたような言葉に少なからず動揺した。実際彼は察しが悪い方ではない。表現に棘を纏わせるから、勘違いされやすいだけで。

    「そんなこと――」

     しない、と言いかけて口籠る。
     どれだけ強くそう願っていても、やはり確約のできないことには違いなかった。嘘を吐くことになるかもしれない――それでも。
     しっかりと目を見据えて、強い言葉で、はっきりと否定した。せめて自分自身はそう在ろうとしていることだけは確かだから。

    「"絶対にしない"よ」

     ――ああでも、君が亡くなった後で死ぬのは、「君の知らないところで死ぬ」うちに入るんだろうか。やっぱり、「身勝手なヤツだ」って怒られる気がする。




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    Replies from the creator

    徳田ネギヲ

    DONE【ス夕八゛レ】ディメトリウスとセバスチャンの話 弊牧場主もでます
    とてもとても蛇足な気がする…でもなんとかこうならんかなこうであってほしいなっていう願望を込めました…二次創作ってオタクの願望でェ……
    これは幻覚です弊谷ではこうみたいなアレです何も正しくないです あと専門用語とか構成とかは軽く調べた程度の知識しかないんで間違ってたらスンマセ
    Comfort Zone1.Introduction

     ディメトリウスの胸は未来への輝かしい希望に満ちていた。「私たちはきっととても良い家族になる」、心からそう信じていた。
     もちろん、不安が全くのゼロだったわけではない。だからこそ、どうしたら新しい家族に自分を受け入れてもらえるかをよく考えたし、専門書も買って勉強した。そして根気と愛情さえあれば、どんな苦難だってきっと乗り越えられると信じていた。だってもう「家族」なのだから。そう、定義されたのだから。



    2. Literature Review

     結婚して三か月、ディメトリウスは未だかつてない難問に直面していた。

    「セバスチャン、大丈夫怖くないよ……、はあ……」

     この度伴侶となったロビンの連れ子、セバスチャンが、一向に自分に懐いてくれないのだ。今もまた、ロビンの陰に隠れるようにしながらこちらを窺っている。
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