harvest moon どのような事にも。僅かなりとも動揺したり、我を忘れて動転するようなことは。
毛頭ない、あり得ないと。降谷は自負している。
極限の状態に晒され、叩きつけ、覚え込ませた、我が身の精神。
生死の狭間を潜り抜けやり遂げたトリプルフェイスの仮面は。伊達じゃない。
真っ暗闇に包まれている阿笠邸に。降谷は眉を寄せる。
この時間しか来れなかったことは、申し訳ないが。来ることは伝えているし、そもそもこの家にいる保護対象者の、定期面談が要件だ。留守にしているとは、思えないし、あってはならないことでもあるが。
門柱の灯りも付いておらず、いつもはサーチライトで明るくなる玄関前の灯りも、そのスイッチが切ってある。
この家の主の愛車であるビートルも見当たらないことを確認しながら。降谷は取りあえず、ドアホンを鳴らす。
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