「好きって言ったら怒る?」
「何それ」
「え〜、ほら巴くんに告白したさぁ」
嘘だ、本当かもよ?などと、繰り返された後話題は直ぐに今晩のドラマの展開に変わっていった。
目の前での雑談をたまたま耳にしてしまった、みつるはと言うと心臓がトマトの様に潰れている。今は昼休み、教室にも人がそこそこ居て話し声などそこら中から聞こえるはずなのに聞こえたその話題。食べかけの菓子パンが喉を通らなくなった。
目線で当の本人を探してみると、離れた席で友達と話で盛り上がっているようだ。だからと言って何かある訳では無いけれど。
告白されるのか……。
かっこいい、優しい、身長が高い、イケメン……私がパッと思い浮かぶだけでも、どこを取っても非がない彼がモテるのは当然だ。
自分には関係ない。たまたま席が隣で、話しかけられるだけ、自分にはそう言った気持ちは無いし、巴さんもそうだろう。なら、先程の胸の痛みは何だったのか。
ヒラヒラと、目の前で手を振られる。驚いて顔を上げるとその本人が私を見下ろしていた。私が気付いた事に気がつくと軽く笑って席に座る。
「ぼけっとしてたから、どうしたのかなって思ってさ。もうすぐ昼休み終わるぜ?」
「え?」
時計を見ると後十五分程度しか残っていなかった。慌てて残していた菓子パンを手に取る、授業中にお腹がなる事は避けたかった。
「パン食べかけだったけど、もしかして具合悪い?」
「いえ!大丈夫です、少し考え事をしていて…」
「そっかでも、みつるさん毎回昼飯が菓子パンだけだともたないよ?」
「そうですかね、これでお腹いっぱいになるのであんまり気にしていないんですけど」
まだ少し食べる気は戻っていなかったけれど、口に含み喉に押し込めば勝手に胃に行く、そう意識して一口ずつ進めていった。口に運んでいる最中ずっと横から視線を感じる。横目で確認すると巴さんが此方を見ながら何故かにこにこしていた。
「あまり見られていると恥ずかしいのですが…」
「ごめん、食べてる姿が小動物みたいでよ」
謝りはしたものの、巴さんの視線は未だに自分から外れない。悪意がないことは分かっているけれど、そわそわとする心が落ち着かない。
「…好きなんですか?
小動物が」
一瞬の沈黙の後、不知火はパッと笑って答えた。
「あぁ、すごい好きだぜ。実は俺ん家白猫飼ってるんだ」
「そうなんですね、私も猫好きですよ」
自分が何を言おうとしたのか分からなくて、心臓が痛いくらい音を立てて鳴っている。小動物の事なんて聞く気はなかった。
「じゃあ、俺たち猫派って訳だ」
「同じですね…」
何か言いたかったけれど、言葉が上手く出なかった。