刹那の記憶 なぜ……逆らえない
なぜ……引き寄せられる
戸惑いさえも感じない程に、ただ必然的に求めあうように重ねた唇……
其の感触も
腕の力も、温もりも
何処かで記憶している残像の欠片……
――――私はこの男を知っている……?
――――俺はこの女を知っている……?
どちらともなく引き寄せた腕と、唇
僅かな恥じらいだけを吐息で散らして、男は女の身体をベッドに横たえた。
男の名はネオ・ロアノーク
女の名は…………
遡る事12時間前
地中海深くに隠れ潜んでいたアークエンジェルは、交代で地上偵察要員を送り出していた。
偵察任務といっても、むしろ潜水を続けるクルーのストレス解消も含めた外気との接触が主な目的だったのだが、迫り来る開戦の兆し、ザフト、連合、そしてオーブの情勢を探る為には、少しでも外の情報を収集しておく事が大事だった。
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