鏡一人との出会いは、村の幼児の健康診断だった。
市で行われる検診の他に、神代先生と静江小母さんが両親や祖父母から相談を受けつつ、診療所の病室で子供たち同士を遊ばせたりして、基本的には母親を休ませることが目的の集まりと言った方がいいだろう。
お前と同い年の坊っちゃまだ、と祖父に紹介され、頭を押さえつけられ、
「こんにちは、ひむろしゅんすけです」
と頭を下げさせられた。
「おじいさん、僕には誰にもそんなことさせない
でいいんです。……こんにちは、ごめんね、僕はかみしろかずとです。また会えたね。僕に頭なんか下げないでいいんだよ」
淀みなく語る落ち着いた声。こんな子供が、こんな山の中の小さな村にいるのかと、その辺で転がったり、おもちゃをぶっ壊したり、癇癪を起こしたり、母親を求めて泣く幼児たちの中で俺は立ち尽くした。
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