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    R_Tentacle

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    R_Tentacle

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    Γ②のユメショを一本くらいは書きたいと思って

    Hero's comeback 母さんがよく言っていた。

    『いい?その力を使う時は、絶対に後悔しない人に使うのよ』

    これは代償があるけれど、素敵な力だと。誇れる力だと。

    『お母さんはね、あの人さえ助けられたらいいって思って使ったの。全部諦められるくらい、大事な人だったの。結婚してくれるなんて夢にも思ってなくて…お父さんが、元気に幸せに生きてくれるならそれでいいって思ってたから』

    だから、その時が来るまで絶対に使うなとよく言っていた。


     私は。
     母さんみたいな覚悟なんて持てる気がしなかった私は。

     そんな日、来なければいいと思っていた。


    ***


     定期的な身体測定は、毎度憂鬱になる。
    「前回からまた数字が伸びたな、34番。この調子ならそのうち記録を全部塗り替えられるんじゃないか?」
    「いえいえ、流石にトップ層の人達に筋力では…」
    「そんなことはない!いいか?お前の背中にあれこれ言う奴はいるだろうが、私はお前を心から評価している。性別なんて関係ないことを、お前自身が証明しているんだ。自信を持て!」
    教官の期待の言葉と目が苦しい。悪意がないから余計に。
     この日が一番嫌いだ。力が抑えきれていないことを目の当たりにするから。幾つになっても強くなり続ける自分を思い知らされるから。欲しくもない力が、今もなおそこにあると証明されてしまうから。

     成績表を手にとぼとぼシャワールームに向かう。今日はやけ酒してやろうかと考えていたら、最近よく聞くようになった声が後ろから飛んできた。
    「実力発揮できなかった?」
    「2号さん!」
    総帥が直接リクルートしたと噂のヘド博士の傑作、人造人間。その片割れたるガンマ2号はよく隊員に話しかけていて、自分もその例外ではなかった。
    「ん〜〜〜?…なんだ、むしろ伸びてるじゃないか!」
    「ちょ、ちょっと疲れちゃって、それで…」
    と言うか、自分にはよく話しかけてきている気がする。たまたまタイミングが合うのか、はたまた希少な女性隊員だから物珍しいのか。どうであれ妙な下心はなく、好奇心の類いで話しかけてきているとしか思えない彼との会話は嫌いじゃなかった。
     だから、油断した。女性用シャワールームは少し離れたところにあって、人通りは少ない。スーパーヒーローとして生まれてきた彼に悪意なぞ存在し得ないと、気が抜けていた。

     突然眼前に迫ってきた拳を、反射的に本気で避けてしまった。

    「…やっぱり」
    ニヤリと笑う彼と半端なところで止まっているその拳を見て、はめられたことに気づく。
    「数値的には常識の範囲には収まっていたけど、どうにも違和感があったからもしかしたらって思ったら…落ち込んでたのは隠しきれてないからかな?」
    どっと冷や汗が噴き出す。してやったり顔の彼に返す言葉が見当たらない。体が震えて、視界がぼやけだす。
    「とりあえず、それだけの実力を隠す理由を教えても…ん?」
    彼の表情が少し緩んだ瞬間、私は全力の行動に出た。
    「誰にも言わないでください!!お願いします!!」

    すなわち、土下座である。


    ***


     泣きながら土下座をする彼女をなんとか落ち着かせて、近くのベンチに座らせて事情を全て聞き終わるのに32分27秒かかった。
     曰く、彼女の身体能力は遺伝的なもので、ちょっと鍛えただけでさくさく成長できてしまうのだとか。平穏な人生を強く望んでいた彼女は必死にそれを隠して成長したものの、就職先のレッド製薬会社で偶然暴漢に襲われる総帥に遭遇してしまい、助けた結果レッドリボン軍に配属されてしまったのだと言う。
    「思春期に頑張ってわざとデブになったことがあって…それでも『めちゃくちゃ動けるデブ』にしかなれなくて…」
    ぐすぐすと自前のタオルに顔を埋めて鼻を啜る姿は、脅威のかけらもなかった。てっきりスパイの類だと思っていたのに、蓋を開けてみればただ必死に自分の願いを叶えようとしている女の子だった。
    「…別に、平穏に生きるだけならそこまで難しくないんです。ほら、えっと…ソンゴクウ?でしたっけ。彼もど田舎で目立たず暮らしてるけど、同じ生き方なら全然隠れられるんです。でも、子供の頃からずっと田舎暮らして、ちょっとくらいキラキラした都会で生活してみたくて……それが、それがちょっと人助けしただけで…」
     34番は真面目でありながらもプライベートをしっかり仕事と分けて楽しむタイプだ、と言うのが周囲の隊員たちの評価だった。時折一緒に飲みに行く隊員達からは特に評判が良く、それなりに強いからと酔いつぶれた人を率先して送る接しやすい女性だと言われている。特に親しい友人がいないことに関しては女性隊員の少なさが原因だろうと周囲は納得していて、ボクは彼女が纏う違和感から裏があると思っていた。
     まさか、ただ自分の理想の生活を謳歌したいだけのありふれた女の子だったなんて思いもしなかった。
    「レッドリボン軍から出る…のは、無理か」
    「機密の問題とかあるので…」
    「だよね」
    不運としか言いようがない。大手会社に就職して安定した生活を得たかっただけだろうに、こんな形でひっくり返るなんて普通は思わない。
    「疑って、ごめん」
    「い、いえ!そのっ、スパイとかの心配はして当然ですし!隠し事をしてるのは本当だから…」
    つい咄嗟に人助けしてしまうだけあって優しい気質だ。ヒーローとして何かできることはないだろうか。
    「…悪いけど、誰にも言わないっていうのはできない。該当データにロックをかけても、ヘド博士と1号はアクセスできるからね」
    「そ、そんな…」
    「そこで、だ!」
    彼女の不安を消し飛ばせるようにと、タオル越しに両手を握って向き合う。
    「二人に協力してもらえるよう、ボクが説得する!」
    「えっ…」
    「必要なデータが集まり次第、『人造人間ガンマ』の量産が始まる。そうすれば、普通の隊員が前線に出る必要性は薄くなる。もちろん君だって例外じゃない!レッドリボン軍と縁を切ることは難しくても、限りなく平穏に近い生活は手に入るはずさ。ヘド博士と1号も君の事情を聞けば黙っててくれるし、なんだったらより確実に君を前線から外せるように協力してくれる!」
    驚きで丸く開いた瞳が、へにゃりと力を無くして潤む。
    「ほんと…?」
    「もちろん!」

     また泣き出した彼女の姿を見て、今までどれほど怯えながら暮らしてきたんだろうと思って胸が痛くなる。
     なんとしてでもこの子の平穏を守らなければと、強く、強く自分に誓った。


    ***


     2号さんは約束を守ってくれたらしく、私の実力が軍にバレたようなそぶりはない。ふとした時に1号さんと二人っきりになって「…何かあったら、遠慮なく私達に相談してくれていい」と言われたことからも、彼が説得に成功したと思っていいだろう。
     遠く離れた親以外に自分の味方がいると言う感覚は新鮮で、仕事にもやる気が出てきた。もちろん実力は隠したままだけれど、それ以外をきっちりこなした上で資格の勉強なんかも合間にし始めた。
    「34番、それ何?」
    「最近街に新しくチョコレート屋さんができたので、買ってみたんです。2号さんも食べます?」
    「いいの?いっただきまーす!」
    2号さんは私を心配してか、今まで以上に話しかけてくるようになった。最初は周りが不思議そうにしてたけど、隊員の上位実力者が2号さん達と合同で作戦を行うかもしれないと言う噂が流れたおかげでそれも消えた。もしかしたらヘド博士が気を利かせてくれたんだろうか。
    「街って、本当に色々あるね」
    「はい。ちょっと探すだけで知らない世界がそこらじゅうにあって、すごく楽しいですよ!」
    私がそう言って笑うと、彼は少し安心したような微笑みを返してきた。相当心配されているらしい。変なところでヘマしないようにと、彼が去った後に気合を入れ直した。





     ソンゴハンの娘を誘拐する作戦に異を唱えたヘド博士はもちろんのこと、2号さんと1号さんもいい顔をしていなかった。私も状況的に不安があったから、15番と94番がいなくなった後に口を開いた。
    「隊長、発言よろしいでしょうか?」
    「ん?なんだ34番?」
    「ソンゴハンの娘ですが、こちらに到着後は私に任せていただけませんか?」
    「理由は?」
    「相手は小さい女の子です。年齢的に長時間の我慢は厳しく、見張りが男性だった場合トイレへの同行となればトラブルにつながります。さらにミスターサタンとソンゴハンの血を引いているとなれば、その隙をついて脱走するかもしれません。私であれば脱走が難しい距離まで同行できますし、万が一の際は追いついて捕まえられる可能性が高いかと」
    咄嗟の言い訳としては良くできた方だと思う。理屈としては通っているはずだ。
    「ふむ、なるほど…いいだろう!任せたぞ」
    「はっ!」
    ちらりと2号さんを見れば、ぱちっとウィンクを返された。
     ナチュラル・ボーン・スーパーヒーローともなると、ファンサービスもさらっと出てくるんだろうか。





     小さい子供相手にものすごく大人気ないカーマインさんを見送った後、私はヘルメットを一旦外して人質に挨拶した。
    「こんにちは、お嬢さん。これからしばらくは私と一緒だから、よろしく」
    なんだこいつと言わんばかりの顔で見上げてくるけど、怒りの類は微塵も沸かない。可愛さと申し訳なさで情緒は若干乱れているが。
    「急にごめんね。トイレとかは大丈夫そう?次いつ行けるかわからないから、今のうちにしといた方がいいと思うんだけど…」
    「………いく」
    ヘルメットを被り直して、一言断ってから彼女を抱える。そのまま部屋を出て目的地に向かえば、知り合いの隊員に遭遇した。
    「33番、いいところに。ちょっと頼まれてくれる?」
    「お?どうした?」
    「それがカーマインさんが人質用のおやつ食べちゃってさー。私はこの子から離れられないから、追加を部屋に持ってきてくれるとありがたいんだけど」
    「あの人、そう言うとこあるよな…わかった、すぐ持っていく」
    「ありがと。今度1杯おごるよ」
    いつものようなやりとりの後に人質の名前を聞いたらすんなり答えてくれた。
    「…お姉さん、なんでこんなところにいるの?」
    どうやら悪人判定は解除してくれたらしい。ちょっと気持ちが楽になった。
    「運が悪くてね〜、良いことしたのにここに行けって言われちゃった」
    「ふーん…」
    この後、嬉しそうにオレオを頬張る姿にしばらく癒された。





     飛行機に乗っていたはずの94番が何事もなかったかのようにやってきた時、私は迷わず銃を構えた。
    「おっと」
    「本物の94番はどうした?」
    「…気絶させただけだ。今頃保護されて救護室に放り込まれてるだろうさ」
    わかる、眼前の人物はこんな銃で対抗できる相手じゃない。私が本気を出せば逃げ切れる可能性はある。でも、でもそうしてバレるくらいなら、いっそわざとやられて━━━。
    「お姉さん待って!ピッコロさんは悪い人じゃないよ!」
    「パン、下がっていろ。オレは大丈夫だ」
    パンちゃんの口から飛び出した名前にさっと血の気がひいたけど、どうやら本当に彼女にとっては危険な人物ではないらしい。
    「……パンちゃん、君にとってその人は大丈夫な人なんだね?」
    「うん!」
    少し考えた後、私は銃を下ろした。
    「人質がこの場から動かないなら、仕事上問題ない」

     ああ早く、早く終わってほしい。

     なんでもいいから、早く私の平穏に戻ってきてほしい。


    ***


     二人の姿を見た時、安心して覚悟ができた。

    「生体スコープで見てみろよ」
    1号が見た先には、ヘド博士を背負ってなんとかその場から離れようとする34番がいる。多少ダメージを負ってしまったのか本調子ではなさそうだけれど、足はしっかりしている。
    「…本当に、優しいよね」
    「2号…」
    「ボクが言い出したことだけど、後は頼む」

     パワーを高めながら成層圏まで昇り、一定値を超えるまでそこに留まって地球を見下ろす。
     蒼く、大きく、美しい星だ。様々な場所で、様々な人々が、それぞれの日々を生きている。
    『いつか、旅行で他の街にも行ってみたいんです。きっとその土地の気候とか、民族とか、そういったものでまた違った姿をしてるだろうから。もっとたくさん、新しいモノが見てみたいなーって』
     ほんのり頬を色づかせて小さな夢を語る彼女を思い出す。その時はたくさん写真を撮って、ボクに見せてくれると約束した彼女を思い出す。
     平穏に生きたいと泣いていた彼女の、タオル越しの手の感触を思い出す。

     落ちる。

     落ちる。落ちる。落ちる。

     自分の手で約束は守れないけれど。きっと優しい彼女を悲しませてしまうけれど。

     吼える。

     吼える。吼える。吼える。

     ボクはスーパーヒーローだから。ヘド博士に、1号に、この星の皆に…彼女に、笑って生きてほしいから。

     セルマックスにぶつかる直前、彼女に呼ばれた気がした。





     「━━━ご…さん……に……さん…」

    声が聞こえる。上の方から、優しい声が降ってくる。

    「2号さん」

     はっきりと聞き取れた時に声の持ち主がようやくわかって、思わず飛び起きる。眼前に広がる光景にいるのはヘド博士と1号、そして一緒に戦ってくれた戦士達。
    「2号!!よかった…!」
    飛びつくヘド博士は難なく受け止めるものの、状況がよくわからない。
    「1号、これは…?」
    「後ろにいる34番のおかげだ」
    振り向けば確かに、ヘルメットを被ったままの彼女がいた。
    「彼女が持つ特殊能力のおかげで、お前は死なずにすんだ」
    「正直、人造人間にも通用するか心配だったんですけど…うまく行ってよかったです」
    笑ってそう言う彼女は、疲労だけとは思えない弱さがあった。
    「…その力、何かデメリットがあるんじゃない?」
    「2号?」
    「本来であればボクが助かる方法はない。それをひっくり返す力だ、何かしらの代償があってもおかしくないだろ」
    ぎくりと反応した姿は確信を得るには十分だった。

    「34番、君が払った代償はなんなんだ?」

    「………まあ、黙っていなくなるのはダメだろうなと思ってました」
    彼女はそう言うとヘルメットに手をかけた。
    「えっと、その…できれば、叫ばないで、ほしいなって…」
    そうして白日に晒された彼女の顔は、自分が知っているそれではなかった。
     左に二つ、右に三つと不揃いな赤い目。水色の肌。そしてゆらゆらと動き回るくすんだ緑色の髪。自分の後ろで誰かが息を飲んだのが聞こえた。
    「その、母方の種族なんですけど…こんな見た目だから普段は擬態してるんです。でも、一生に一度だけ使える人の命を救う力を使うと、擬態の力が無くなっちゃって…」
    そうして話している間、彼女の目はどれもこちらを向かない。髪の毛も、視線が合わないようにしているのか前方に集まっているように見える。
    「こうなった以上もう街では暮らせないので、実家に帰ろうと思います。お世話になりました」
    そう言って頭を下げる姿を見た時、何かが自分の中で切れる感じがした。

    「そんなのあんまりだ!!」

    彼女の肩を掴んで強引に視線を合わせる。驚いて目が丸くなるところは、擬態している時と変わらなかった。
    「いろんな街に行ってみたいって言ってたじゃないか!新しいモノをたくさん見たいって!君は、君はただ普通の人みたいにいろんなものを楽しみたかっただけなのに…こんな、こんなのって…!」
    困ったような笑みに表情が変わっても、やっぱりそこにいるのは自分がよく知る彼女だ。ささやかな願いを胸に毎日を精一杯生きていた、優しい女の子だ。
    「2号さんの命には変えられませんよ」
    こんな結末の為に命をかけたんじゃない。こんな顔をさせたくて覚悟を決めたんじゃない。こんなこと、不運なんかで片付けていいことじゃない。
     「…見た目の問題なら、どうにかなるんじゃない?」
    想定外すぎる状況にパニックになっていたら、ブルマ博士から救いの手を出してくれた。
    「帽子とかサングラスだけだと心許ないでしょうけど、ホログラムの応用で目周りを誤魔化すくらいならいけるでしょ」
    「確かに。肌色は珍しいけど、髪は大人しくしていればパッと見普通だ。君の平穏の為に力を貸すって約束したし、必要な道具はいくらでも作るよ」
    後に続くようにヘド博士がそう言うと、34番が申し訳なさそうにオロオロしだす。
    「そ、そこまでしてもらわなくても…」
    「そう言う話なら1年待ってドラゴンボールを使えばいい。見た目を変えるくらいならどうと言うことはない」
    「ドラゴン、ボール…?」
    「簡単に言うと、何でも願いが叶う玉だ」
    「そんなとんでもないものがあるんですか!?」
    さらにピッコロの口からぶっ飛んだ情報が出てくると、そっち側の面々が確かにと頷く。どうやら実在するらしい。
    「ってことは、残りの心配はこの先一年の生活ね。実家に一旦戻ってもらうのも手でしょうけど…なーーーんか、遠慮して逃げ回りそうよね」
    「うっ……で、でも、流石にこの姿で街で働いたり暮らすのは…」
    「そんなの、私が雇ってあげれば良いだけの話でしょ」
    「ちょっ!?」
     手をワタワタさせて慌てる彼女を見ていると、なんだか胸が温かい。なんとか彼女の願いを叶えてあげられそうだと一安心した時、最初以外はずっと黙っていた1号が再び口を開いた。
    「2号、この先どうにかなる目処がついたが、彼女がこれから一年大変な思いをすることには変わりない」
    「そうだね…」
    「そして、こうなった最大の要因はセルマックスだが、お前が死ななければ彼女が無理をすることはなかったのも事実だ」
    「うん」
    「となると、2号がなんらかの形で責任を取るのが正しいだろう」
    「うん…うん?」
    なんだか話が変な方向に行ってる気がする。34番も気づいたらしく、こっちに視線を戻している。
    「この場合、不本意かつ解決可能な形とはいえ、彼女を傷物にしてしまったと解釈できる」

    「ならば、妥当な責任の取り方は『結婚』だろう」

     数秒の沈黙の後、複数人の絶叫が辺りに響いた。
    「い、いいいいいい1号さん何言ってるんですか!?」
    「少し古いものだが、社会規範沿った対応のはずだ」
    青い顔を真っ赤に染めて髪の毛を暴れさせながら彼女が抗議するものの、1号は平然と言葉を返している。
    「しょっっ、そんな、私っ…2号さんにそこまでしてもらう義理なんてないです!」
    「…近くにいた方が君を守りやすいのは確かだね」
    「ヘド博士まで!?」
    ヘド博士も乗り気らしく、さらっと援護射撃をしている。
     ボクはと言うと、最初は確かに驚いた。驚いたけど、でも、拒否する理由なんて一つもなくて。
    「に、2号さぁん!」
    若干涙目になってる彼女を見たら、ちょっとからかいたい気持ちも湧いてきて。
    「…ボクじゃあ、嫌?」
    手を握って間近でそう囁いてみた。そしたら顔の赤みが一気に肩まで浸食して、髪の毛が凍りついたように動かなくなって、体がぷるぷる震え出して。
    「こっっっっっっ………困りますーーーーーーー!!!」
    耐えきれず、彼女は脱兎のように駆け出した。
    「あ、ちょっと!34番!!…って、そういえば名前知らない!」
    仕事の都合とはいえ、あまりにも今更なことに気付いて後を追う。
    「ねぇーー!!名前教えてよお嫁さーん!」
    「勘弁してくださいーーーーー!!」
     そういえば彼女は飛べないのだろうか。普通より強いのは知っているけど、実際はどのくらいなんだろうか。もう行ってみたい街をいくつかリストアップしているだろうか。甘いものの中でも特に好きなものはなんだろうか。
     考えれば考えるほど知らないことはたくさんある。もっと、もっと彼女を知りたい。
    「ねえってばー!」

     まずはあの子を捕まえないと!


    ***


     「わざとだろ、1号」
    「ご協力ありがとうございます、ヘド博士」
    そう言って二人は笑いながら、なんとか大切な女性を説得しようとする2号を見守った。
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