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    うちよそ(灰島肇と鬼頭彰人)

    すけべの次に"終わり"を書くの、情緒の振れ幅でバカになりそう

    元ネタ診断メーカー
    https://shindanmaker.com/878367

    ##うちよそ

    灰島肇。人として大切な何かがすこんと抜け落ちたような男。そんな人間の心の隙間に見えたところに、自分はうまくはまり込んでいたつもりだったのだ。

    「なあ、俺ってあんたにとって何なの?」

    ソファでスマホをいじりながら、なんとはなしに口をついて出た、その問い。今にして思えば、なんと言われたかったのだろう。どんな言葉を期待していたのだろう。
    ネットを眺めていたら、たまさかそんな記事が目に入った。だから勢いで、ずっと気になっていたことを聞いてみた。それだけのはずだった。
    後先考えずに放った言葉のせいでこの男には散々な目に合わされてきたのに。甘やかされていると、彼の中に自分の居場所があると、いつしかそう思い込んでいた。

    「は?カワイイ弟だろ」
    「そーいうことじゃなくてさ、オニーチャンじゃなくて、灰島肇としてどう思ってんの、って……え?」

    即答された言葉にどこかくすぐったさを覚えつつも、聞きたいのはそうじゃないんだよなとスマホから顔を上げると、デスクに向かっていたはずの灰島が眼前に立っていた。自分を見下ろすその目は深海のように冷たく、暗い。
    明らかに灰島の纏う空気が変わっている。けれど自分にはその理由も、次に言うべき言葉も、わからない。
    そうやって言葉に詰まっていると、勢いよく襟元を掴まれる。眼前にぐいと寄せられたその表情からは何も読み取れない。いつもより一段と低く聞こえた声もまた、無機質だった。

    「何て言葉が欲しかったんだ?なあ言ってみろ、鬼頭彰人。お前がオレの、何だって?」
    「そ、れは」

    知らない。こんな灰島肇を。俺は。知らずにいられたはずだった。知らずに、いさせてくれていたのに。
    ――取り返しのつかない事を言ったのだと、理解した頃には遅かった。無言の時間に耐えられずに目を逸らしてしまった。
    それが、終わりの合図だった。
    襟元を掴んでいた手が離れていく。待ってと口にする僅かな時間すらも与えてはくれなかった。

    「帰れ」

    たった一言、冷たい声を残して、灰島は仕事部屋へと姿を消した。かちゃり。鍵の掛けられた音が、ひとり残された空間に虚しく響く。自分の心臓の音がひどくやかましい。

    いつしか外は雨が降り出していた。
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