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    Na0

    雑文をポイっとしにきます🕊

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    ついに私にも『うちの詩人』って言える像ができました。近衛リンゼルをオリジナルキャラ目線で。
    深夜の自主練。

    素振り24 勇者が姫様の近衛騎士に任ぜられた。
    その事実は、またたく間に城内を。そして、城下町を駆け巡ったようだ。
    口さがない者たちは言う。
    ──年頃の姫様のお側に置くのが、同じ年の頃の勇者とは。陛下もまた珍しく分かりやすい事を、と。
    目覚めの訪れない姫様。
    力を行使できない姫巫女は、王家の負債。
     しかし、不思議な事に今代の御世において、他に『ゼルダ』の名を継げそうな姫は、王家の直系ならびに傍系をみても他には現れていない。
    お館様の情報網に抜けはない。
    たぶん。
     王家の一の姫を『ゼルダ』と名付ける習わしは古くからあった。力の大小はあれど必ず力を現し、もし直系に姫が産まれなくとも、そのすぐ近くに力を現す姫は存在し続けていた。
     これもまた厄災の前触れなのか。
    人々は恐れている。
    だから姫巫女と勇者。二人が今世に現れてこそ人々は安寧を得られるのだ。
     姫巫女の覚醒がならない今。それを補って埋める為、姫巫女に付き従い、傅く勇者。
    賢王と名高い陛下の策にしては安直がすぎるが、それがこの件の絶妙な所だ。
    民草には、それくらいが良い。
    勇者もまた信仰の対象になりつつあるしな。
     勇者。世界の危機に際し、女神に選ばれる魂。女神に愛されるただ一人の男。
    ほら、これで一本書けてしまいそうだ。
    女神と勇者。勇者と姫巫女。姫巫女から勇者への片思いでもいい。
    どれもうけそうだ。
    そうだ、勇者の想いが姫巫女に向かってる。それが女神には面白くなくて、力が目覚めないってのはどうだろう。
    面白いんじゃないか。同情をさそって、さらにうけそうだ。
     幸いにも二人揃って見目も麗しいときてる。
    流行りの役者をあてるか。
    恋物語にして絵物語や戯曲にすれば、文字を読めぬ者にまでその幻想が行き渡り、簡単に酔う事ができる。
    現実と虚構の絶妙なバランスだ。
     悲恋にするか?
    それとも誰もが望む幸せな結末か。
    つい口元をにやりとさせて、紙に2つの結末を書くと文机に筆を転がせる。
    おっ。筆が止まった。
    運命は幸せな結末を選んだか。
    「失礼します」
     背後の扉から弟子の声がした。
    入室を許可すると、一拍おいて静かに入ってくる。
    一族の特徴でもある銀髪を肩の少し上で切りそろえ、前髪も眉の高さで同じようにしている。
    眉は太く、尻上がり。
    赤い瞳は細くて切れ長の美丈夫だ。
    これで性格に柔軟性があれば、最高の弟子なんだかな。
    見た目通りの堅物だ。残念。
    「師匠、陛下がお呼びです」
    「わかっている」
    「久しぶりに筆が進まれていたご様子ですね」
     弟子がソワソワと机の上を気にしていた。
    かわいいやつだ。
    音楽と詩を愛する男だ。容姿もあったが、何より詩人としての才と情熱がある。
    そこを買って弟子にとった。
    「みるか?」
    目を通すと想像した作品ではなかったんだろうな。
    想像どおり、顔をしかめてやがる。
    わかりやすいやつだ。お前が姫様に懸想しているのは、詩人の皆が知っている。
    「どうした?」
    俺は、意地悪くニヤニヤとした表情を浮かべた。
    「里の者として、一つ忠告だ。感情を表には出すな」
    「申し訳ありません。しかし……これは!あまりにも不敬です。姫様がこれを知られたら、なんと思われるか」
    「そうだよな。けど面白くはないか!」
    「失礼を承知で申し上げますが、師匠にしては安直です。テーマもらしくありません」
     弟子の意見に、俺もまた素直に大きな声をあげて笑った。
    嫌だねぇ。真面目で、おべっか一つも言えない。
    何より、目の付け所が鋭い。
    「さすがだな。ここだけの話、これは案件ってやつだ。陛下よりのご指示でな」
     はっとする弟子の表情。
    可愛げないよなー。「なんで?」って聞いてこないだもんな。
    「姫様を民草の心に添わせる。為政者の考えることはいつも同じだ。忘れるな。これもまた王家の。姫様の為になる」
     納得いかない表情を浮かべてやがる。
    若いねぇ。
    「これは姫様にはご覧いただけない。悲しませたり、苛立たせるのは、俺も詩人として本意ではない」
     脚本を受け取り、机に無造作にぽいっと投げる。
    「しかし、恋はな。わからん。男と女。近くにいれば、もしかして、もしかするかもしれん」
    「不敬です!」
    「ほらっ!だから恋はわからねぇ。真面目だか、小心者のお前がそうやって、師匠の俺に声を荒げる。誰より分かるだろ、恋ってやつの恐ろしさ」
     反論しようにも言葉が浮かばないのか、弟子はぱくぱくと口を開いて閉じるを繰り返した。
    「お前は優秀だ。誰よりも神々の音色に近く楽器を奏でる。一度こうと思ったら絶対に曲げない。成し遂げる強さがある。いい楽士になるだろう。しかし」
     弟子の胸に、とんっと指を刺す。
    「良い里の眼にはならん。感情を表にだしすぎだ。邪魔になるなら里に返す。楽器を奏でる為のその細い指で、畑でも耕すか?」
    「申し訳ありません。未熟でした」
     弟子は悔しげに唇を噛む。
    そこだぞ、お前。
    だがもう今日は面倒だ。
    「わかればいい。俺もお前を手放すには惜しい」
    立ち上がって、伸びをする。
    「さ、陛下はどんな結末をお気に召すかな」
    「……」
    「その時は、そうだな。お前に一節書いてもらおうか」
    「本当ですか?!」
     弟子が現金にも瞳を輝かせる。
    「あぁ。報われぬ恋に焦がれる騎士の心情を謳うシーンとかいいな!きっと名作が生まれそうだ!」
     弟子は、怒りにかっと顔を真っ赤にした。
    やばい。こいつ、こんな顔もしやがるのか。
    面白い。
    今度、ゆっくり観察だな。こりゃ。
    「そ、こ、だ」
     企みはそっと隠し、俺は顔を指差し、にやりと笑う。
    すると、悔しそうな顔を一瞬でしまい込んだ。
    なーんだ。やっぱり可愛げのない奴だ。
    しかし、師匠としては見込みのある弟子を誇る。
    「よし!」
     俺は羊皮紙をくるくるとまとめると、そらを手に陛下の私室へと向かう。
    はてさて。今回の作品は楽しくなりそうだ。色んな意味でな。



    🕊🕊🕊


    百年前の関係性解釈をメモしてたら、これは誰の視点だ?ってなって、なんか急に扉からイザーク(種)似の詩人が入ってくるイメージが。脳内の話です。
    じゃあ、これを彼の師匠視点にするとどうなるかな。と、書き出したら楽しかった。
    詩人あんまり興味なくて、百年近くかけて志を貫ける強さがあって、真面目なんだろうな。くらいにしか思ってなかったんですが。
    なんか急に降ってきたうちの彼は、近衛以上に不器用そうなやつでした。
    長い年月を経て、意志を託す弟子にぽろりと打ち明ける若い頃の未熟さや嫉妬心。なんかかわいい…。その弟子が、リト族的には少し異質なのもまた。(男が戦士、女が歌でしたっけ?)貴族じゃないのに!って、怒り、拗ねてた彼が寛容性を身につけてるってなってまた。くる。
    ビジュアル出てないのもいい。
    にくい!
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