バレンタイン 街中のあちこちからチョコレートの香りが漂いそうな今日は二月十四日、バレンタインだ。職場でも義理チョコが飛び交っていたが、貰ったチョコは全部仕事を進める上での脳の栄養となった。本日の仕事を終わらせ、残っている社員に軽く挨拶をして足早に帰路へと着く。今日はリョータが休みで家でのんびりしているだろうから、早く帰って少しでも長く一緒に過ごしたい。
帰る途中で見かけた男性は花束を大事そうに抱え、緊張した面持ちをしていた。彼はこれから大事な瞬間を迎えたりするのだろうか。その場面と、いい結果を想像して何故か私の方が浮足立ってしまう。
「ただいまー」
いつもなら鍵が開く音で玄関まで飛んで来るリョータの出迎えがないことに疑問を抱く。
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