実験レポート(没供養)……ふと、ペンが白い手のひらを滑り落ちて床に着地した。後を追うように、ノートもバサリと音を立てた。それを拾い上げてから、コロコロと転がって机の下まで旅したペンを、慌てて追い掛ける。
「おい、落ちたぞ」
差し出すが、面影は掴もうとしない。怪訝に思っていれば、彼が緩慢に唇を動かした。
「ぁ……いえ……」
「は?」
何が言いたいのか分からずそんな一文字だけを溢せば、彼は考えを巡らせるように押し黙る。
そして少しの間の後で、もう一度今度はかたちを伝えるように、ゆっくりと口が開いた。
「……か、い、て?……もしかして、書いて、か?」
出来ないらしい頷きの代わりにまばたきが返される。続いて、彼は誘導するように、自らの視線をシーツにだらんと投げ出された四肢へと順番に向けていった。
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