ごはんを食べよう18昼下がりのリビングで、テレビから流れるニュースの声が響く。
近所の動物園にカピバラの赤ちゃんが産まれた、とか、野球選手が活躍した、だとか、そういうニュースをぼんやり聞きながら、イソップとイライはソファでくつろいでいた。
今日は休日だから仕事はない。
毎日ゲームをしていたあの頃が嘘みたいで、本当にあの荘園は存在したのだろうか、なんてことを考えてしまう。
隣に座るイライの肩にフクロウはいない。あの荘園に置き去りにしてしまったのだろうか。
そんなことを思って、けれどいくじなしの自分はそれを確認できない。
イソップは、は、と息を吐いて、横目でイライを見つめた。
どれだけ見ていても飽きない。イライは表情が豊かな方ではない。あの荘園にいた頃などは、いつも口をへの字に曲げていたほどだ。それが心労ゆえのものだとここにきて改めて分かった。
イライは今、いつもうっすらと微笑んでいるから。
「……かわいい」
「えっ」
口に出していたらしく、イライが驚いたように肩を跳ねさせる。そしてニュースを見やり、「ああ、かわいいよね、カピバラの赤ちゃん」と笑った。
「いえ、あなたが」
「あなた?」
「イライが、かわいい」
そう言うと、イライはボフン、と湯気が立ちそうなほど真っ赤に頬を染めた。