ごはんを食べよう22「イライは」
「イソップくん?」
「イライは、いつから僕を想ってくださっていたんですか」
それは、とイライは息を呑んだ。「わからない」と続く言葉に、イソップは微笑んだ。
「僕は、荘園にたどり着いて半年くらい経った頃です」
イライが目を見開く。予想していた答えと違ったのだろう。日本に来てからだと思っていたみたいだし。
「……ずいぶん前だね」
「はい」
イライの声が驚きに震えている。ふふ、とイソップの喉から笑い声が漏れた。
なんてかわいい人だろう!
「僕は願いを持って荘園に行ったわけではなかったんです。彷徨う魂を導こうと思って自分から向かいました」
「ええと」
「僕は、最初あなたを送りたいと思っていたんです」
イソップの銀の目が、イライの丸くなった群青の瞳に映る。
「でも、気付いたら、あなたを送るより、あなたの隣にいたいと思うようになりました。きっと、恋をしたタイミングをいうならあの頃です」
抱きしめた腕の中で、イライの匂いがする。
おだやかで、心が安らぐ、好きな匂いだった。
「だから、あの荘園に残してきた目的はなかったんです。あなたと生きられるだけ生きていたいと思って……だから、最後のゲームであなたを庇った」