ごはんを食べよう26(完)「いつか、荘園に行きませんか」
「……戻る、ということ?」
「いいえ」
ぴくり、と肩を震わせたイライに首を振る。
イライもイソップの意図しているところはわかっているのだろう。
それでも条件反射で震えてしまった、というところか。
イソップは手を伸ばしてイライの手を撫でた。
重ねたまま、静かに口を開く。
「僕たちがいなくなったあと、荘園に何があったのか、今では知る術はないでしょう。……それでも、僕らがあそこにいたことは真実です。だから、確かめにいきましょう」
「そして、お別れをしよう、と?」
「ええ」
イソップは頷いた。
「荘園にお別れを……僕たちが、ここで生きていくために」
重なった手が、今度はイライの手によって絡められる。しっかりと繋いだ手は温かかった。生きている。
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