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    mmmuutoo

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    はんぱれイベントの後編を読んでの虎伊です。虎→伊地
    何番煎じかと思いつつも、いくら煎じても良いのでは?という気持ちで書きました。伊さんの強さよ…

    サバイバル!


     呪霊が霧散していくのを見届けつつ、虎杖が札を取り出した。
    「伊地知さん達と合流できたん、皆に連絡するわ」
    呪力を込めると狼煙のように呪力が打ちあがる呪符である。電波も入らない霊峰での任務では、それぞれのグループがこれを持ち歩いて危険や任務の完了を知らせるのだ。
    「おーさんきゅーな悠仁。潔高、怪我はないか?」
    「ええ、私は大丈夫です。パンダくんも虎杖くんもありがとうございます」
     伊地知が山中で行方不明になったが、帳を頼りに虎杖とパンダのペアが無事に発見したのがつい先刻のことであった。呪霊を祓い終え、草のしげみに身を隠していた伊地知を見れば、葬式を思わせる真っ黒なスーツが泥に塗れ、一緒に呪霊から逃げていたもう一人の補助監督から付着した血液でも汚れていた。呪霊を避けながら怪我人と共にここまで移動できたのは伊地知の経験値があったからこそであろう。
     虎杖の手にある呪符が、呪力を与えられて青い煙を真っすぐ上へと登っていく。パンダは伊地知の頭をぽんぽんと撫でた。
    「潔高って意外と図太いよな。修羅場だったってのにケロッとしてんじゃん」
    「いえ、皆さんを信じていましたから」
    「……さ、戻ろうぜ! 伊地知さん、立てる?」
     上空まで煙が上ったのを確認した虎杖が声をかけると、伊地知と補助監督が立ち上がる。が、怪我をしている身には山の斜面で体制を保つのはなかなかに難しかったようだ。伊地知が咄嗟に彼の身体を受け止めた。
    「おっと、大丈夫ですか?」
    「す、すみません……力が入らなくて……」
    「気が抜けたんだろ。俺がおぶってやるよ」
    「全ての攻撃をいなせた訳ではないんです。彼の脚、被呪している可能性もあるので、できれば早めに救護に診てもらいたいのですが……」
     眉根を寄せる伊地知に、パンダは分かった、と頷いて虎杖に視線を送った。今回の元凶とも言える呪霊は祓ったが、この霊峰でお前ひとりで大丈夫かという問いである。
    「だーいじょうぶ! もし迷っても伊地知さんがいるし」
    「それもそうだな。俺は先に行くけど無理はすんなよ」
    「すみません、よろしくお願いします」
     怪我人を背負ったふわふわの白黒は、あっという間に豆粒のようになってしまった。
    草や枝を踏みしめながら虎杖は盛大にため息を漏らす。
    「ねえ、信じてましたってさ、俺だから言ってくれたんかと思った」
    「……え? うわ」
     パキ、と小枝が折れる音。苔で足を滑らせた伊地知は、虎杖に二の腕を掴まれてかろうじて転ばずに済んだ。こっちが歩きやすいよと誘導されて、伊地知もそろそろとついて歩く。
     虎杖はじとりと一度伊地知を見やり、また視線を前方へ。
    「虎杖くん、怒ってます?」
    「伊地知さんはさ、俺を信じて待っててくれたのかと思ったってこと」
    「もちろん、虎杖くんのことも信じていましたよ。必ず来てくれると」
     む、とした顔が伊地知の視界の端に入った。
    「違うって。その他大勢の術師じゃなくて、俺のことを頼りにしてほしかったってこと! 信じてましたって言われて……勘違いして喜んだけど伊地知さん、パンダ先輩にも言ってたからさー……勝手に浮かれて勝手に落ち込んでる」
     子どもが駄々を捏ねるような口調の虎杖に、伊地知は説き伏せるように優しく言うのだ。
    「虎杖くんが来てくれた時、本当にほっとしましたし、やっぱり来てくれたって嬉しく思いましたよ。ありがとう、虎杖くん」
    「……どう、いたしまして」
     不服だ。虎杖は不服なのだ。その他大勢にかけられるであろう言葉なのに、自分だけに言われているかのように錯覚させるこの大人の対応が。しかし、それと同時に蘇る。帳の中で伊地知を見つけた時の彼の顔。おおいに安堵して、目を見開いてくれたあの表情は、間違いなく虎杖に向けられたものなのだ。
    「っはー……」
    「どうしましたか?」
    「大人ってずりぃね」
    「え。そ、そうですか……?」
     虎杖の心中を知ってか知らずかそんなことを言うのだから、ちょっとくらい自分のことで困ってくれよと思ってしまう。虎杖は伊地知を抱き上げて、荷物でも運ぶように肩に乗せた。
    「呪霊に見つかっても面倒だから、走るわ」
    「え、いや、歩けますよ……⁈ 怪我もないの、で……ッ!」
     伊地知の言葉は中断させられた。虎杖が大きく一歩を踏み出したからだ。伊地知よりも遥かに硬い、逞しい背中。あまりにも頼もしい術師の背に、伊地知はただただしがみつくことしかできなかった。
     虎杖の思惑に伊地知が気付くのが先か、それとも虎杖の堪忍袋の緒が切れるのが先か、それは誰にも分からないのであった。



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    Replies from the creator

    mmmuutoo

    DOODLE五伊地(♀)です。五→伊♀の図。片思いが好きすぎる。自分が一番厄介なんだなって気付く五。
    俺の、僕の、お前 弱くて、呪力量も少なくて、とびぬけて器用でもなくて、一般社会に居た方が確実に幸せだったろうなと思う女子生徒。それが伊地知だった。同世代の女子なんて歌姫か硝子しか知らないからとりあえず同じように扱ってたけど、あまりにも雑すぎるって七海や傑によく言われたっけか。高専の教壇に立つような年齢になったからこそやっと分かる。確かにそうだったって。呪霊を祓う知識は持っているけど、伊地知は頭のネジが飛んでない。呪力の使い方なんて知らないでもやっていけそうな、かなりまともな分類の人間なのだから、それ相応の扱いをしてやらなければいけなかったんだって。
     修行だって言って低級呪霊の巣窟に放り込んだり、傑や硝子としてたように七海と一緒に同じ部屋をとって旅行してみたり、寮室で一晩中ゲームしてみたり。そういうの、あいつは苦手だったのかも、とか今となっては思う。でも僕の知ってるモデルケースは、あいつらと過ごしたそれしかなかった。灰原も傑もいなくなって、硝子は自分の進む道を決めてて、七海は死んだ目で日々を消化してた。
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    mmmuutoo

    DOODLEこぉせん五伊地。五→伊です。伊くんが災難続きの日。
    潔高くんの厄日

     テレビをつければやれ最高気温更新だの海だの川だの。虫も人間も暑い暑いと喚いている。ここ、呪術高専も全く例外ではないが、木々に囲まれた山奥であるぶん、都会よりは随分と涼しいのだ。
     普通に過ごしていれば、であるが。
    「っは、が……!」
    「げ! 顎入った」
    「伊地知くん!」
     四時間目は伊地知は一人体術の自習の予定であった。しかし、任務帰りの七海が加わり、現地調査帰りの灰原も加わり、三人でかわるがわる身体を動かし続けていれば、この暑さで当然汗も滴り落ちる。そよそよと木々を揺らす風だけが救いである。
     今は灰原と伊地知の組み手中。七海はスポーツドリンクを飲みながら、それを観察していた。
     伊地知は灰原の蹴りに備えて腰を落として右に腕を構えて灰原の蹴りをいなそうとした。ふと、呪力で腕を強化しただけでは踏ん張りが足りず身体ごと吹っ飛ばされたのを思い出した伊地知は、足にも呪力強化を、と気を逸らしたのがいけなかった。細い顎に気持ち良くヒットした灰原のスニーカーは、骨を砕かん勢いで振り切られた。ずざざとグラウンドに横たわる一年生の身体はいつも以上にひどくちっぽけに見える。
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