文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day22 大学部に併設された図書館にひっそりと存在する閲覧室。自習室とは違い1人掛けのソファと申し訳程度のようなテーブルが並べられたその部屋は、いつ来ても人影も疎で穴場のような場所だった。
汐見以外の誰も居ないその部屋を独り占めしながら、手元にあるタブレットをするりと撫でる。そこに表示されているのは一世紀半前、まだ人類が地球の周りを回る事しかしていなかった時代のエッセイを電子化したもので。オールドシャトル計画に参加した日本人の配偶者が記した軽快な筆致のエッセイは、とうの昔に紙の本としては絶版になっていて――古典ライブラリとして無料公開されている中から汐見が見つけ出したものだった。
自身の携帯端末にダウンロードしても良いのだが、シンプルなものを好む汐見の持つ端末は画面も小さいもので。メールのやり取り程度であれば苦ではない程度の大きさではあるが、長文を読むのであればタブレットの方が読みやすい。
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