冷やせるもんって限界がある音が暑い。
どうしてこう蝉の鳴き声ってやつは音だけで暑いのか。
夏の象徴みたいな顔をして、ブクロのど真ん中で鳴きやがる。
昔はそれなりに、小さかった二郎と一緒に蝉取りした覚えもあるが、今じゃセミ爆弾にみっともなくビクッと肩を竦めてしまうほどには、生き物と縁遠い生活を送っている。
ちなみに、サブちゃんは昔から虫が苦手だから三郎と虫取りや生き物を見つけに公園に出かけたことはほとんどない。
二郎は今でも蝉の抜け柄ひとつで喜んでいるが。
ああ、そういえば身近にもう1人、いや、2人ほど蝉に喜ぶ人間がいたな…。喜ぶというより、まるで学会に出ているかの様な神妙な顔でこれは何ゼミだとか、羽化したてだとか話していたな…。
などと、今は遠くの地元の様子に意識を飛ばしながらひたすら山道を歩く。
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