「はい、検定お疲れ様でした。ちゃんと周りを見て走れてるし、うん。問題ないね」
戻って来た教習所。今日合格すれば全行程終了。残すは筆記の本試験のみ。
免許を取るのに教習所に行った初日、受付をしていたら背後から覆いかぶさるように覗き込まれ、びっくりして振り返って、またびっくり。だってその容姿はつい見惚れてしまう程。絹のような白髪に、白い肌。室内なのに真っ黒なサングラスをかけていても、すらりと通った鼻筋に形の良い薄く艶やかな唇。かけられた声も耳なじみの良い優しい色に、思わず呆けてしまう。
「僕がいるのはこの日とこの日と……」
覗き込まれたスケジュール帳。いつの間にか話が進み、勝手に俺の受講日が決まっていたあの日が懐かしい。
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