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    yuzuochu

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    yuzuochu

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    人類が滅亡しかけの世界で生き残ったささがサイレンを鳴らすだけの街頭スピーカーからある日自分の漫才が流れ出して、どこから流れているか興味がわき旅をする終末さされ〜の話読みたいというネタ

     時間を忘れた世界で毎日朝昼晩にサイレンが鳴るスピーカーから、その日サイレン以外の音が鳴った。それは自分がピン、コンビ、チームを組んだ時の3人の音源で日中ずっと流れている。音の出どころを調べるべく、思い思いに集落で過ごす人々から聞き込みをすることにした。
     行く先々であんたの声ずっと鳴ってんなぁって言われる。ほんまお騒がせしますわ〜、と言いながら久々に見る人の笑顔に元気もらったりして、集落をいくつも渡りながら手がかりを辿った先に、この音を流している手伝いをしている飴村に出会う。

     話を聞いてみると自分とは初対面だと言う。だけど情報では知っているらしい。自分は俺が知っている飴村ではなく、随分前に廃棄されていたのを無理矢理起こされて手伝わされているという。性格や感情は廃棄前にはなかったもので、自分を起こした奴がバックアップとっていて「嫌味言われるってわかって復元してるから物好きなヤツだよね、ボクといると仕事って雰囲気がでていいとか言ってさ勝手すぎるよ〜」と飴村はぷりぷり怒っている。
     懐かしさを覚えつつ予想が現実味を帯びてきて、雇用主に会いたいんやけど、と聞けば、どうしよっかな〜と言う姿は少し寂し気だった。
     あれから随分歳をとってオッサンから爺さんになっているだろうし、手伝いがいるくらいだからもしかして…と不安になってると、「会いたい?」と首を傾げる飴村に「会いたい」と間髪入れず答えると「ついてきて」とくりると回り足場の悪さを感じない足取りで歩む飴村の背中を追った。

     瓦礫の山を何度か迂回すると長身の老人ががらくたを並べて眺めている。「飴村どこに行ってたんだ」飴村のリズミカルな足音に気づいたのか見覚えのある双眸と目があった。
    「お、よお久しぶりだな」
     随分と老けてはいるが老弱とは程遠い零の姿。飴村をじいと見つめるとボクは何も言ってないよ〜っとしらを切られた。
    「こんな辺境まで来たんだウチに来いよ」
     零は足元のがらくたを荷物に詰め、見渡す限りでは多少足場の安定した道へとゆっくり歩をすすめた。ここまで来るのに随分と歩いたが、その自分より頼りない足取りに、零と言えどやはり老いているのだと実感してしまった。
     案内されたそこは壊れかけの研究所跡で、集落から随分距離があるのもあって、誰も近寄ろうとはしなかった海沿いの場所にある。
    「危険冒して来るか普通?相変わらずだな」と、皺が増えてますます頬がこけて見えるが面影のある顔で零は笑った。

     こんな世界になってしまって生きている人間がいるだけでも稀有で、生きるだけで精一杯だった。知っている人間が生きていることは奇跡に近い。ここへ来た目的を思い出し、自分のいる集落にずっと音が流れていることを聞けば、時間と、警報を鳴らす役目をずっとやっていたという。音源は繰り返し起きた災害でデータが消えてしまったのを復元したらしい。ここまで出会った人々から久しぶりに娯楽を楽しめたことを喜ぶ声を聞いた。ここに来るまでに人と会っては面白い話を披露したのに、懐かしいという感情というものは、死にゆく世界では安らぎかもしれない。
     よっこいせと言う年老いた掛け声で立ち上がった零は近くにあったラベルの貼ってない瓶を持ち上げて久しぶりにどうだ?と笑う。
    「まさか酒か?!むっちゃ貴重なやつやんどうやって手に入れて…」と聞けば秘密だと言う様にウインクを返された。法も機能しておらず犯罪に手を染めたところで咎めもされないのに相変わらずの秘密主義、気が抜ける。
     狭く雑多な一室。積み上がった本を椅子にしていた飴村は、ボクもう寝るよ〜うるさくしないでね〜!っと言って出て行く。その背中に「今日はおおきにな! おやすみ!」と礼を言う。おやすみ〜と渋々といった風な声が遠くなり零に向き直ると、小さなビーカーに並々と酒を入れて寄越してきた。それを何となく嗅いでみると強烈なアルコール臭にむせる。久しぶりだからきついか?と笑われたがそういう代物ではない。部屋に散らばる本や見慣れぬ形をした器具で何でも作ってしまいかねない男だ、これも自作に違いない。だが一体どんな味がするのだろう、湧き上がってくる好奇心と零との再会に気持ちが昂るのを感じる。
    「乾杯」
     散々言い合ったその言葉は年月を感じさせることなく自然と口から溢れた。
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