乳香とウイスキーかつては兵の詰所として使われていた場所――そこに宿泊するまでは良かった。
「参ったな。ベッドがひとつだけだ」
アモルト神父がばさりとシーツを広げる。少し埃っぽい匂いにトマース神父は少し咳き込んでしまった。
「長旅の疲れもあるでしょう。貴方が休むべきです」
残り199体の悪魔を祓うべく様々な場所を彼等は訪れている。だが、現地調査は中々骨の折れるものだった。悪魔の背景には必ずその存在を隠匿しようとする教会があり――関係者も重い口を開こうとしない。だがアモルト神父は神の御名において行われた宗教裁判や魔女狩りの類は裏で悪魔が糸を引いていたものだと確信し、図書館で資料を集めていた。
トマースもまた悪魔憑きと思しき者がいないか聞き込みを行ったがその日は徒労に終わったのだ。
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