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    まちこ

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    まちこ

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    ジャミルが逆トリップする話/ジャミ監
    監督生が成人してる

    #ジャミ監
    jamiAuditor

    (本当に魔法が使えないとは)



     小さく光を反射したマジカルペンを振ってみるけど自分の髪は一房も持ち上がらない。花を思い浮かべても手元に一輪だって出てきやしない。向こうの世界にいたときに当たり前に感じていた魔力は実は世界の空気自体に含まれていたようで、こっちの世界じゃ微塵も魔力を感じられなかった。

     ピンクのシーツに包まれた枕に顔を埋める。ほのかな花の香りが、制服を着た彼女の後姿を瞼の裏に思い出させる。それは懐かしい光景だった。両隣にはいつも一年生のコンビが陣取っていて、足元にはグレーの猫がリボンを揺らしながら偉そうに歩いている。俺はいつも遠巻きにそれを眺めていた。

     カタカタと響くタイピング音。たまに聞こえる咳払い、遠くからは変な呼びかけをする男の声がする。曰く“サオダケ”というものを移動販売しているときに流れてくるものらしく、昔からあるもの、なんだそうだ。

     少し顔を上げると、紺色のカーディガンを羽織った背中が見えた。瞼の裏に浮かんだ制服を着た背中より大人になった彼女がいる。長く伸びた髪は乱雑にまとめられていて細かい毛束が白いうなじに垂れているのを見るとこっちがくすぐったく感じた。これがありのままの彼女なのか。俺があの日見ていた彼女は幻だったのか。
     じっと見つめていたことに気づいたのか、パソコンの画面を見つめていた彼女がくるりと振り向く。ブラウンのフレームの眼鏡をかけて前髪をかき上げながらにっこり微笑んだ。



    「おはようございます、ジャミル先輩」

    「・・・おはよう」



     枕に顔を半分埋めたまま言うと、大人の見た目をした彼女が、16歳の笑顔で声を転がす。


     ある日彼女は突然帰った。帰る方法が見つかったとかそういう話もなかったのに、帰ってしまった。あまりにも唐突なことで帰ったというよりは煙のように消えてしまったという感覚に近かった。
     彼女がいなくなった学園は、異世界の人間の存在なんてなかったかのように回った。両隣を陣取っていた一年生のコンビはいつの間にかバラバラに、自分の寮が閉鎖された偉そうな猫はいろんな寮を転々と。俺の周りの人間だって彼女の存在を一切口にしなかった。あのカリムでさえそうだった。だけどたまに酷く寂しそうに静まり返ったオンボロ寮を眺めていた。

     その瞬間が訪れたのは、洗った顔を上げた瞬間のことだった。鏡に映るはずの俺は映らず、その向こう側には疲れた様子で髪をかき上げる彼女がいた。制服は着ていないし、髪型だって違う。顔は大人びて笑顔の一つもない。

     俺は咄嗟に手を伸ばした。ぶつかるはずの指先からゆっくりと、鏡に飲み込まれていった。

     気づいたときには硬い床の上に膝をついていて、周りは見知らぬ景色。振り向けば細長くて少し曇っている姿見が俺を映していた。そして響く足音、扉が乱暴に開けられる。飛び出してきた着替えかけの彼女は目玉がこぼれそうなほど大きく目を見開いてよろけていた。
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    まちこ

    MOURNINGずっと我慢していた感情が大爆発した監督生と、その監督生にどう接していいか分からなくてやるせないジャミル先輩のジャミ監

    ジャミル先輩好きな人ほど慰めるの下手くそだといいな(願望)
    「魔法も使えないくせによくのうのうと学園で生活できるよな」

    「いろんな寮の寮長ともつながり持ってるらしいじゃん」

    「いいよなあ、俺も異世界から来ました!とかふざけたこと言っていろいろ免除してもらいたいわ」



     聞くつもりなんてないのに、毎日嫌でも聞こえる彼女の悪口。異世界から来たから、魔法が使えないから、女だから、イレギュラーをつまんでは面白おかしくこねくり回して下品に笑う生徒を見るのは不快だった。不快に思うようになったのは、彼女の人となりを知ってしまったからだろう。必死で足掻いてる彼女を見ていたら、少なくとも俺は馬鹿らしく悪口で時間を過ごす気にはなれない。



    「酷いことはやめろよー、こいつ俺たちと違ってこんなちっぽけな魔法さえ使えないんだぜ?」

    「そうだった!あの狸みたいなモンスターより何にも出来ないんだったな!」



     部活終わり、夕飯のメニューを考えていた頭に流れ込んできたのは馬鹿にしたような笑い声だった。会話にもならない暴言の内容ですぐに彼女が絡まれていることに気づいて辺りを見渡すと、大きな木の方に三人分の人影が見える。

     音を立てずにそっと近づいて行けば、は 1467