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    まちこ

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    まちこ

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    スパイスとジャミル

    #ジャミ監
    jamiAuditor

    「このスパイスの香りも、きっと忘れてしまう」



     最後の夜、賑やかだったオンボロ寮が静まり返っていて、彼女の声はやけに大きく響いた。談話室のソファに座ったまま俯く俺の髪を一房持ち上げて唇を寄せた監督生は少しだけ寂し気だ。それが、気に食わない。泣いてしまえよ、たったそれだけの気持ちなのか、なんて、八つ当たりをしたくなる。



    「・・・随分と薄情なんだな」



     彼女の指から落ちていく髪が首筋をくすぐる。影が揺れる。月明かりが照らす肌は淡く光っている。



    「私も忘れたくないけど」

    「本当に?」

    「ジャミル先輩ごと持って帰りたい」



     寂し気な顔のまま、小さく肩を上げてくすりと笑った彼女は少しだけ目を伏せた。



    「でも出来ないから」



     短い呼吸。俺から離れていく身体。



    「全てを捨てて、なんて、私には言えないから」



     そう言うと彼女は立ち上がって俺を見下ろした。それだけで分かる。ああ、もう行ってしまうんだと。

     反射的に手首をつかむ。だけど驚くこともなく彼女は少し下唇を噛んだだけだった。全てを見透かしたような顔に俺は情けなく泣きたくなった。



    「すべて捨てる覚悟はできてる、って言ったら?」



     俺の掠れた声に彼女は目を丸く見開いた。驚いた顔で凝視する。



    「いいさ。君と一緒に居れるのなら全て捨ててやる」



     軽く手首を引っ張った。









     手が虚しく空を切る。つかみ損ねた温もりに気づいて飛び起きて、俺は大きく息を吐いた。ああ、夢だ。あの日の夜の夢。―――そして叶わなかったその先のこと。

     すべて捨てる、と言う前に彼女はまるで先手を打つように「幸せで」と言った。唇の端を持ち上げただけの微笑みは涙で濡れていた。彼女の涙を見たのは、それが最初で最後だった。



    (朝飯、作らないと)



     親指で目じりを擦った。涙は出ていない。







     嗅ぎなれたスパイスの香りがするたびに胸が痛くなる。忘れられればいいのに、きっと俺は忘れられない。
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    まちこ

    TRAINING失恋した監督生と慰めるジャミル先輩のジャミ監「迷惑だ」

    「え?」

    「大体異世界から来たなんてそんな話、誰が信じると思う?君と一緒にいると嫌気がさす」

    「どう、し」

    「はっきり言わないと分からないの?」



    “君のことが心底嫌いだよ”



     どうして、この間まで一緒に笑ってくれてたのに。楽しかったのに。本当に、好きだったのに。



     空は真っ青に晴れていて、目が眩むほど太陽が眩しい。日差しは優しく降り注いで程よい熱を制服の黒が吸収する。足取り軽く歩いて行く同級生をぼんやり眺めながら、胸はぎゅうぎゅうに締め付けられた。

     彼は優しかった。グリムを探していたらいつの間にか一人になっていた私に声をかけてくれて、探すのを手伝ってくれた。結局グリムはエースとデュースの場所にいて、何をしていたんだと理不尽に怒られるオチが付いてしまったけど、それを一緒に笑って流してくれたことが嬉しかった。錬金術の授業でペアになったときもあたふたしている私を助けてくれたし、向こうの世界の話をすれば興味を持って聞いてくれて、寂しくなって泣いてしまったときはそっと慰めてくれた。帰りたい、とこぼした私に、帰れるよ、一緒に方法を探そう、なんて、言ってくれ 2018