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    Namako_Sitera

    @Namako_Sitera
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    Namako_Sitera

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    ヴァローレに帰ってきたシャナと、ヴァローレでまだまだ頑張っているバルジェロの一幕。実装おめでとうシャナ!

    ただいまと言わせて ヴァローレに戻ってきてまず思ったのは、空気の匂いが変わったというところだった。
     喧騒は相変わらずだけれども、息が詰まるような苦しさがなくなっている。聞けばヘルミニアが倒れたことであの忌まわしい”粉”の莫大な取引はなくなり、比較的以前よりも健全な商売で食べていけるようになったらしい。ただその一方でヘルミニアが牛耳っていた”粉”の販売経路が分散され、今でも”粉”に苦しめられている人たちが多いのだという。
     
    「帰ってきて早々任せてすまないな、シャナ」
    「いいの、気にしないで。あたしはこのために帰ってきたんだから」

     むしろこの件に関しては頼ってほしいなとシャナはバルジェロに微笑む。
     ヴァローレに戻って数日、シャナは薬師として駆け回る日々を送っていた。患者たちの今の様子を確認したり”粉”中毒の対処に必要な薬の調合をしたりとやることは山積みだ。

    「仕事の調子はどうだ?」
    「まずまず、でも思っていたよりは手ごたえを感じるの。”粉”中毒は手強いけれど……絶対に治せるものだって今なら分かるから」
    「そうか、それならよかった」
     
     けれどもシャナにとっては充実した時間でもあった。ヴァローレに住まう人たちや賑わいに触れると暖かな気持ちになる、バルジェロたちがこの町をマシにしようとして頑張った蓄積がそこにはある。そしてシャナもまたその蓄積の一つになれることがたまらなく嬉しい。何もできなかったあの日の自分を追い越して歩くこの町は、あの日よりはるかに鮮やかだ。

    「バルジェロの方はどう?」
     
     バルジェロとヴァローレを歩きながら、ふとシャナはバルジェロの仕事について聞いてみることにした。シャナが町で奔走する間、バルジェロたちはどこかへ出かけている。バルジェロもこれでもれっきとしたマフィアの頭だ、シャナに詳細を話さないのは気を使っているのかもしれないとも思ったが、今日はどうにも帰りが早かったのだ。
     
    「”相棒”と一緒に粉の販売業者を潰していた……んだが、帰された」
    「えっ、何かあったの?」
    「いや、”後始末は済ませておくからお前は友人のところに顔を出してこい”……と言われてな」

     ”相棒”にそう言われて早上がりしてきたのだというバルジェロの何とも言えない表情に、シャナは思わずくすりと笑ってしまった。多分渋々帰ってきたのだろう、不服だと顔に出ている。そんな顔をしてしまう彼のズレたところが面白いなとシャナは思う。
     
    「お節介焼かれたんだ」
    「そうなるらしい」

     気を回さなくともいいのにとバルジェロはため息をつく。

    「なら期待に応えないとね。アジトに寄っていい? ハーブティーを淹れたいの、そして目いっぱい旅の話をしようよ。あたしが知らないあなたの話を聞かせてほしいな」

     姿を見かけない彼のことも、新しく見えた相棒のことも。そしてあなたのことや明日の話、沢山話したいことが山のようにある。一緒に歩いているだけではもう足らない、刹那のように過ぎ去った出会いの日々よりももっと多くの言葉を語ろう。
     パンを分け合ったあの日のように、あたしにも貴方に分け合いたいものが沢山あるのだから。
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