枯れ花の栞。「それ、どうしたの?」
あくる日の大聖堂。数か月ぶりに顔を合わせたフィナとなんてことのない話をしていたその傍ら、ふとそんなことを聞かれてヨルンは首を傾げる。少し遅れて視線をやると、彼女がそれと表し指さした先……荷物の上で一輪の萎れた花が今にも息絶えるかのようにくたびれていた。
白い綿のような花、この近辺でよく見かける名もない雑草だ。薬師が見ればなにかしらの名はあるのかもしれないが、さほど気にするものでもない。それはヨルンがエンバーグロウに戻るまでの道中で見つけたものだ。
なんとなく、フィナに似ていると思ったのだ。見比べてみればその理由がわかるかもしれない。そんな程度の思い付きだったのだが、摘んだその時には鮮やかな白銀色をしていた花弁も今はすっかり萎れて灰色になっている。これでは比較しようがない。
「手土産にと思ったんだが、持たなかった。もう捨てるよ」
萎れて枯れた花を手に取る。もうゴミと大差ない、適当な場所に置いていけば虫が食ってくれるだろうか。
「……」
「なんだその目は」
「いえ、別に」
フィナがその枯れた花から視線を離さずじっと見つめていた圧に負けて話を振れば、それはそれとしてそっけない顔をされる。どういう意味合いなのだろうかとはたまた首を傾げれば、彼女は呆れたように大きくため息をついた。
「私が処分しておいてあげる」
「そんなに不味い花だったのか」
「全然? ただの雑草よ、何の力もない……ただ綺麗なだけの花」
ぱっと枯れた花を取り上げると「押し花を作るのが流行ってるの。ちょうどいいから使ってあげるわ」と彼女が微笑む。「……、枯れ花でか……?」と首を傾げれば無言でさらに綺麗な笑顔を見せられた。
これ以上何も言うな、と気圧されて「そうか」と口をつぐむ。
それからフィナの様子を眺めたが、彼女はその枯れ花をハンカチで包んでしまいこんでしまった。本気か?とも思ったが、こうなってしまったフィナは本当になにも聞かないことをよく知っている。
それ以上考えることをやめることにしたヨルンだったが、フィナに「皆がきみぐらい良い子なら助かるのにね」と褒められているのか皮肉なのか分からない台詞を言われてまた疑問符を浮かべることになったのだった。