師弟と喧嘩と野次馬。「おやヨルン、今日はなんだか不機嫌ですね」
「ほっといてくれ」
「あぁ! そういえばまた副団長と派手にやりあったと聞きましたけど、それが原因だったりします?」
「話聞いてたか?」
あからさまに弱点であろう話題を突かれてジト目で睨んでくるヨルンの姿に、ステッドはほらやっぱりそうだとほくそ笑む。入団した当時はこれっぽっちも思わなかったが、我らが団長ほど分かりやすい人はいない。
旅人ヨルンとしては大抵のことができても、“団長”ヨルンとなれば話は別だ。風の噂に聞くに、討伐依頼の最中不意を突かれてしまったところを、副団長であるクレスに盛大に庇われてしまったのだとか。
しかもこういったことはよくあって、その度に団長は不貞腐れるとか。底知れないと思われた男も、雪狼の前では形無しだ。
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