谷底に降る。「戻る前に一つ相談がある」
そういって、彼……ヨルンはタイタス大聖堂の大広間に来るようロンドに告げた。──それは教皇さまからの後押しで選ばれし者と共に各地を巡り、フレイムグレースに向かう道中のことだった。
きっと言いづらいことだったのだろう。ロンドが約束の時間にかの場所に向かうと、彼はしばらくの間ロンドの到着に気が付かなかった。遠目から見ても大火の前に立つ彼の表情は重く、じっと手に握った何かを見つめている。
意を決してロンドが声をかけると、「あぁ、もう時間か」と彼は顔を上げた。その目は炎を目の前にしても光を通さない夜闇のように黒く、これからする話がそれだけお互いにとって重たく根深いことなのだろうことを知らせていた。
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