灰塵を食む。 聖火の灯を背に感じながらヨルンは選ばれし者として戦場の切っ先に立つ。”黒幕”が示唆する聖火教会への襲撃まであとわずか、ましろの雪の先に黒い怨嗟の足跡が聞こえてくるようだった。
防備を固めるべく慌ただしく行き交う聖火騎士たちを尻目に、曇天の空にため息を吐く。嫌なゲームに乗ってしまったと、ヨルンは口が裂けても言葉にできない立場にあることに対しむしろ呆れていた。
凶人の群れの総数は考えるだけでも頭が痛くなる。聖火騎士の総数、防備施設の配置、旅団メンバーの戦闘力や対応力。今まで研鑽を重ねてきたのはこんなことに対抗するためではなかったし、何よりもそうしたくはなかった。だがヨルン一人ではこれから引き起こされる惨劇を止められない。その惨劇を見過ごすことさえも、できない。
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