シグナ・ル・プリマ【2】:シグナと外の世界。 島にいた頃は巫女の修練に明け暮れていた。否、シグナにはそれしかなかった。一日中舞い続ける体力と精神力を養うため厳しい修練が呆れることさえ忘れるほど毎日毎日繰り返され、シグナもこれを退屈だと思うぐらいにはうまくやれてしまっていた。だが、それだけだった。
「(わたしは、何のためにこんなことを続けているの?)」
平穏を守るため、指輪を守るため、世界を守るため、人知れず巫女は祈り舞い続ける。しかし幼少の記憶も怪しくほとんどすべての記憶が島の中で完結していたシグナにとって、”世界”とは島とそれを取り囲む水平線だけだった。海の向こうにもっと人がいるのだという、知らない世界があるのだという。けれども実際に見たことがなければ実感なんてわきやしない。
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