yoshii_no☆quiet followMOURNING芍沢くん視点芍→つかさ きっかけ いつも通りの授業を終えて、ある者は部活、ある者はバイトとバタバタと教室から人が散っていく。僕も図書室に行くため席を立とうとすると、目の前に立ちはだかる人。「芍沢、ごめん!掃除当番変わってくんね?実は母ちゃんが体調崩したらしくて、早く帰って手伝えって言われててさ…」「……君のお母さん、身体弱いんだもんね。わかった。僕が代わりにやっておくよ」「まぁじ助かる!今度芍沢出られない時はオレ出るから!じゃあな〜」…ー掃除代わってもらえた!遊び行こうぜ〜…ーお前の母ちゃんピンピンじゃん。お前、主演男優賞狙えんじゃね?少し離れたところから聞こえるそんなふざけた会話を聞こえないフリをして、今日もいつもと同じように押し付けられた掃除当番をこなす。掃除自体は嫌いではないので、あまり苦には思わない。僕が綺麗にした場所で、あなたが笑ってくれるなら僕は毎日だって掃除をする。「…っ」机を後ろに片付けるときに、そっと指で机をなぞる。この机であなたは勉強して、ご飯を食べている。伝わる熱は無機質なものだったけど、なんとなくあなたの生活が身体に染み入るようだ。「芍沢くん、お疲れ様」「っ…!お疲れ様。つかさくん」不意に後ろから声をかけられ、驚いて勢いよく振り返る。そんなに驚かなくてもいいのにと笑いながら言う彼は、僕にとってはすごく眩しく見える。「あれ?今日の掃除当番って、芍沢くんじゃないよね…?」周りを見渡し、僕に掃除を押し付けたであろう人物を探しているのだろう。生徒会に所属している君は、ただ僕に仕事を押し付けたあの子を許せないだけと分かってはいるけど、まるで僕のために怒っているかのように見えて少し嬉しかった。「お母さんが倒れたんだって。もう何回倒れてるんだって思うけど、掃除が嫌いなわけじゃないし、まぁいいかなって」「ダメだよ、当番制度にしているか意味がなくなっちゃうだろう。今度からは変更したい時は俺に言うようにさせるから」ほらまた、あなたは僕の欲しいものをくれる。あなたが僕にくれるもの全てが、蓄積されて溢れそうになる。言ってはいけない。その言葉を言えば、もう戻れない。「ところで、俺の机になにか用でもあった?」「へ?!いや、特になにも…」コツコツと靴音を鳴らし、距離を詰められる。僕とあなたの指がそっと絡め取られ、気付けば唇はゼロ距離になっていた。「…っ」「実は、気付いてたんだ。芍沢くんが、俺のこと好きだってこと」「じゃ、こ、れは…」「二人だけの、秘密だよ」Tap to full screen .Repost is prohibited Let's send reactions! freqpopularsnackothersPayment processing Replies from the creator Follow creator you care about!☆quiet follow yoshii_noMOURNINGつかさ→セナ気になったのは、幼稚園のとき。幼いが故に、最初はただの憧れだと思っていた。活発で友達の多かったセナは、気弱で友達の少ない僕にとってはヒーローのような存在だったから。『つかさは綺麗な顔してるもんな。みんな僻んでるんだよ』小学5年の帰り道、そんな何気ない一言に僕の想いは気付かされた。他のクラスメイトに言われても何も感じなかったその言葉は、気持ち悪いほど僕の心に染み付いた。『セナは、僕のことどう思ってる?』『ん?幼稚園の時からずっと、つかさは綺麗で自慢なオレの幼馴染だよーん』『そっか。セナの自慢になれて嬉しいよ』『ちょっと、オレの嫌味スルーすんな!』そう言って、持っていた体操袋で軽く叩く。体操着からふわりと香るセナの匂いに胸が高鳴って、変態だなと思いながら答えを否定することはなかった。僕がセナの想いに気付いたと同時に、僕はイギリスへの引っ越しが決まった。家族の中では決定権の無い僕は、親に言われるがままセナの元を離れることになる。まるで、この想いを忘れろとでも言うかのように。セナと最後に交わした言葉は「オレたちはずっと一緒だかんな。帰ってくる時は連絡して 903 yoshii_noMOURNINGセナ→芍沢きれいな理由「おはよー、セナ」「はよー」欠伸を噛み殺しながら、今日も騒がしい教室に足を踏み入れる。学校は好き。でも勉強は嫌い。友達は好き。でも先生はあんまり好きじゃない。そんな普通な高校生活。オレの高校生活を色付けてくれるのは、窓際の席のあの子。「しゃーちゃんっ」「…っ。セナくん?」オレの方を見て視線を泳がせるキミ。たぶん、いや絶対。オレのことは苦手だと思ってるんだろうけど、それでもちゃんと返事をしてくれるいい子。「昨日、アイツの掃除当番代わったんだって?アイツ掃除は休み〜とか言ってたから無いのかと思ってて止めらんなかった!ごめんな?」「別にいいよ。僕も暇だったし」「そっか。今度はちゃんと掃除させるよう言っとくな」キミとの接点を作りたくて、中身のない会話をするのはもう何回目か。この学校が好きなのは、キミのおかげ。花瓶の花がいつも綺麗なのも、黒板のクリーナーが綺麗なのも、机が綺麗に並べられているのも。全部キミがやっているから。綺麗の理由は、全部キミにしてしまう。「すき」「え?」「…なんでしょ。つかさのこと」キミが綺麗な視線を送る先、そこにい 588 yoshii_noMOURNING芍沢くん視点芍→つかさ きっかけいつも通りの授業を終えて、ある者は部活、ある者はバイトとバタバタと教室から人が散っていく。僕も図書室に行くため席を立とうとすると、目の前に立ちはだかる人。「芍沢、ごめん!掃除当番変わってくんね?実は母ちゃんが体調崩したらしくて、早く帰って手伝えって言われててさ…」「……君のお母さん、身体弱いんだもんね。わかった。僕が代わりにやっておくよ」「まぁじ助かる!今度芍沢出られない時はオレ出るから!じゃあな〜」…ー掃除代わってもらえた!遊び行こうぜ〜…ーお前の母ちゃんピンピンじゃん。お前、主演男優賞狙えんじゃね?少し離れたところから聞こえるそんなふざけた会話を聞こえないフリをして、今日もいつもと同じように押し付けられた掃除当番をこなす。掃除自体は嫌いではないので、あまり苦には思わない。僕が綺麗にした場所で、あなたが笑ってくれるなら僕は毎日だって掃除をする。「…っ」机を後ろに片付けるときに、そっと指で机をなぞる。この机であなたは勉強して、ご飯を食べている。伝わる熱は無機質なものだったけど、なんとなくあなたの生活が身体に染み入るようだ。「芍沢くん、お疲れ様」 1076