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    dc_akis1

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    dc_akis1

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    追う秀と逃げるれぃくん。赤安と言い張る。大したことないですが微妙に雰囲気がホラーチックなので怖いの嫌いな人は注意。

    #赤安

    ハイドアンドシーク「れーくーん。どこだァ〜?」
    「……っ」
    どうしてこうなったんだろう。
    両膝を抱きかかえて、深夜にこんな薄暗い廃病院の一室の隅っこで、聞き慣れた低い声と、コツーン……コツーン……と反響するゆっくりとした足音が遠ざかるのを怯えながら待っている。

    ​──時は遡ること一日半ほど前。
    仕事が終わり、地下駐車場に停めていた愛車の扉を開けて乗り込もうとした瞬間を背後から呼び止められ、愛の告白を受けた。告白してきたのは、赤井秀一だった。
    緊張しているのか少し震えた小さな声で、自信なさげに目は泳いでいる……なんて様子だったら、少しは可愛く思えたかもしれないのに。赤井は細めた目で、口元には貼り付けたような笑みを浮かべていた。後ろ手に手を組んで、少しずつ近付いてくる。
    赤井の告白に対して、僕の口から思わず飛び出た言葉は「は?」の一言だった。好かれていたことに驚いたのではない。奴の告白の文句がどう考えても異様だったからだ。

    『俺も君を愛してる。幸せになろう』

    俺も、って何だ?それじゃあまるで僕も赤井を愛してるかのような言い方じゃないか。
    「あの……聞き間違いじゃなければ、俺も……って言いました?」
    「言ったよ。俺も君を愛してるんだ」
    「俺もって、他に誰が僕を愛してるって言うんですか……?」
    「言葉が足りなかったかな?君が俺を愛してくれているように、俺も君を愛してるんだ」
    「は……?」
    赤井が何を言っているのかさっぱり分からなくて、これはもしかして夢なのかなと思った。赤井の纏う雰囲気はどことなく冷たくて、微塵も殺意は感じ取れないのに僕の本能は逃げろと言って、けたたましく警報を鳴らした。
    「っ……!」
    幸か不幸か、車の扉を開けていたから飛び乗ろうとしたのに、相手は仮にもFBI捜査官だ。それも優秀な……。赤井は瞬時に僕を、まるで逃亡しようとした殺人犯のごとく取り押さえてきて、腕をひねりあげられ振りほどこうとしたところで意識がぷつんと途絶えた。
    目が覚めた時、ぼくはボロボロの手術室みたいなところで台の上に寝かされていて、あたりを見回したら赤井の背中が見えた。手元は見えないがカチャカチャという金属音と、機嫌の良さそうな鼻歌が聞こえる。
    「〜♪︎」
    幸い、僕が目を覚ましたことに気付いていないようだった。パリン、という音がして、何かを落としたのかそれを拾おうとして赤井がしゃがんだので慌ててもう一度寝たフリをした。
    「暗すぎて手元がよく見えんな……やはり懐中電灯がいるか……」
    赤井はひとりでぽつりとそう言ってから、部屋から出ていった。足音が徐々に遠ざかっていく。慌てて起き上がろうとしたが手足が動かない。布製の拘束具で固定されていた。けれど運がいい、この程度の拘束の抜け方なんてお手の物だ。たった数秒のうちに関節を外して腕を自由にしたあと、素早く両足の拘束を解いて部屋から逃げ出すことにする。ただ、赤井が先ほど手元で何をしていたのか確認してから行くことにした。先ほど奴が作業していた台座を、非常灯の緑色の明かりだけを頼りに見てみると、注射器と、メスと、先ほど割れた音がした原因だと思われる瓶の破片が置いてあった。瓶の破片のひとつにはラベルが貼ってある。『general anesthesia』と書かれている。
    「全身麻酔……」
    赤井が僕に何をしようとしていたかは分からないが、命に関わることには間違いない。呼吸が浅くなる。ぼくは部屋を飛び出した。そこはやはり手術室に間違いなかったようで、どうやらここはどこかの廃病院のようだ。内ポケットに入れていたスマホはなくなっていたから、赤井に取られたのだろう。とにかく出口を探さなくてはならない。しかし出口と思われる方向へ真っ直ぐ進めば、戻ってきた赤井と鉢合わせる可能性がある。赤井がどこへ懐中電灯を取りに行ったか分からないが、こんなボロボロの廃病院にちゃんと可動する懐中電灯があるとも思えないから、一度院外に出たのではないかと思う。
    慎重に逃げ出すため、息をひそめ、足音を殺して廊下を進む。静まり返った院内からは物音ひとつ聞こえない。待合室なのか椅子が沢山並んだ空間に出てきて、大きなガラス張りの扉が見えた。「受付」と書かれたカウンターもある。出口だ。あとは勢いよく走って逃げようと駆け出したその瞬間、扉の向こうに黒い人影が見えた。
    「……っ、あ、赤井……!」
    電池が切れてないかテストでもするかのように急に懐中電灯のスイッチを入れた赤井が、ガラス戸の向こう側から光をこちらへ向けてきた。光は直ぐに消えたが、今ので僕の影が見えてしまったかもしれない。来た道を引き返し、二階の窓から飛び降りるために階段を駆け上がっていった。それなのにどの部屋の窓も、どの廊下の窓も、すべて鉄の板が打ち付けて封鎖されている。
    「な、なんで……?!」
    「れいくーん」
    「?!」
    絶望しているところに、追い打ちをかけるかのように飛んできた声。
    「脅かしてすまなかったよ。何もしないから出ておいで……」
    どこにいるのか分からないが、今いる部屋からそう遠くないところまで迫ってきている。ここはどうやら入院部屋のようで、ベッドが四床、並んでいる。ゆっくりと近付いてくる声と足音に、もはやその部屋から飛び出すタイミングを逃し、部屋の隅に体を埋めて膝を抱えた。

    ​──そして話は、冒頭に戻る。















    続かない
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