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    dc_akis1

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    中坊赤安。いじめられっ子の赤井×クラスの人気者委員長れーくんというアウトローすぎる話です。書きかけです。

    #赤安

    Happy School Life一番後ろの窓際の席の前に立って、黒いリュックサックを背負ったままじっと机の上を見つめているのは赤井秀一だった。見つめる先の机の上は黒い油性ペンで書かれた暴言の落書きでひどく汚れていたし、椅子の上には生ゴミがぶちまけられていた。到底座れるような状態ではない。その一角の光景を切り取ってしまったとしたら、あとは教室の中は至って平和なものだった。始業を待つ間、生徒たちはただただ和気あいあいと朝の挨拶を交わし、昨日あった出来事なんかを喋りながら楽しそうに過ごしているのだから。

    しばらく微動だにせず机を見つめていた赤井は、ようやくのろのろと動き出すと、下ろしたリュックサックの中から雑巾を一枚取り出した。教室の隅に置いてあるゴミ箱を机のそばまで運んできて、雑巾で払い除けるように椅子の上の生ゴミをゴミ箱の中に叩き落として、一度教室から出てトイレの手洗い場で雑巾を濡らし、再び自分の机の元へと戻ってきて椅子の上をゴシゴシと丹念に拭く。そこで机の中にも生ゴミが詰め込まれているのに気付いたが、ちょうど始業ベルがなってしまったので、仕方なく椅子に座った。机の中から生ゴミの汚臭が漂ってくるが、どうしようもなかった。

    きりーつ、れーい。担任教師が教室に入ってくると、号令と共に全員が席についた。

    「今日は、転入生を紹介します」

    教台にたった教師の言葉に、クラスがザワザワとどよめく。

    「入っといで」

    そう言われて教室に入ってきたのは、金髪に青眼、褐色の肌の少年だった。教師が黒板に『降谷零』と書いてから、「降谷零くんです。彼の髪は染めてるわけじゃなくて地毛だから校則違反ではありませんのでね。皆さん仲良くしてあげてください」

    大きな目の愛らしい顔つきのその少年は、愛想良くわらって簡単な自己紹介をする。
    みんなが「可愛い」「ええ?かっこいいよ」なんて話しているものだから、いつも俯きがちに座っている赤井も、そんな転入生が気になるのでちらりと顔を上げて、降谷の顔を見てみた。たまたま、ばっちり目が合ってしまって、慌てて目を逸らした。目が合った理由はすぐにわかった。空いている席が、自分の隣だけだったからだ。案の定というか必然的に、自分の隣の席に降谷がやってきた。
    みんなに褒められてキラキラ輝いて見える彼に「よろしくお願いします」と微笑まれても、「……う、うん」と目も合わさずに小声で返すのが精一杯だった。

    キラキラした転入生が入ってきたからといって、赤井の現状が変わるわけではなかった。登校してくれば自分の靴は見当たらないし、あったらあったで靴の中には画鋲が入っていたりするし、廊下を歩いていたら「キモイ」「学校来んなよ根暗」「こっち見んな」なんて暴言が潜めた声で囁かれるし(こっち見るなは冤罪だ、見てないのに。なんて思いながら)、机は日に日に落書きが増えるし、椅子や机の上に生ゴミがない日にはぐちゃぐちゃに丸めた紙くずや泥水なんかが撒き散らされていた。

    そんな「いつも通りの」日常の中で、ひとつだけ変わったことがあった。

    学校中でもっとも輝いている素敵な人が、自分の暗い世界に光をさしたということ。降谷零、彼は赤井にとっての太陽となった。

    降谷は転入してきて暫くすると、異例ながらも半端な時期に委員長になったのだ。というのも、委員長をつとめていた男子が転校することになり、急遽代打を探すことになり、投票で文句なしの一位になったのだ。彼は勉強もスポーツも、家庭的なことですら何をやっても一流で、非の打ち所が見当たらないのだから、当然の結果だった。

    降谷が赤井の置かれた現状に気づいたのは転入初日のその日すぐだった(明らかな惨状に気付かない方がどうかしているとは思うが)。降谷は「大丈夫?」と赤井に声をかけて、一緒に机を綺麗にしてくれた。クラスの誰ともろくに話したことがなくて、降谷だけが自分とまともに会話をしてくれる存在となった。
     いつしか頭の中には、常に降谷の笑顔が浮かぶようになった。降谷の笑顔が心の中にあると、どんな境遇にあっても幸せでいられた。





    赤井は家に帰ると、庭のバケツに並々と水を張り、庭で捕まえた虫たちの足や羽をもいでから水に浮かべた。じたばたと苦しみもがきながら水に沈んでいく虫の姿を無表情で眺めた後、今度はヨレヨレのダンボールを持って家の近くの山に向かう。山を散策して見つけた動物の死骸をダンボールに入れて家に持ち帰り、部屋から運んできた塩酸の実験セットを庭にひろげて死骸の肉を溶かし、取り出した骨を大切そうにかかえて自室に向かう。カーテンを締め切って、窓にはガムテープで目張りまでしてあるような暗い部屋の棚には、いくつものガラス瓶がずらりと隙間なく並べられている光景が、緑色の電球で不気味に照らし出されている。そのどれもに白い骨が入っていて、今日の実験で得た骨もまた、空き瓶のひとつにおさめられた。そんな部屋の隅にあるベッドに横になって何も無い天井を見上げると、また降谷の姿が浮かんできた。自分に向かって微笑みながら、「今日も実験は成功でしたね。すごい!」と褒めてくれる。「そんなことないよ。ずっと同じ実験してるから……大したことないよ」と、空想の降谷とお喋りするのが最近の赤井のもっぱらの楽しみだった。

    ​──いつしかそんな空想は、赤井にとっての現実となっていった。




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