ヴォヤージュ5XXX(仮題)突如、千空たちの目の前に一人の少女が現れた。
彼女は、ゲンを探していたらしく、ゲンに遭遇するや否や「自分に協力して欲しい」と頼んだ。それと共に、「自分が未来から来たこと」と「未来がとんでもないことになっている」ことを打ち明けた。
突拍子の無い依頼と状況に困惑するゲンだが、最も気になったのは彼女が千空を見ると睨みつける事だった。ただ睨んでいるだけではなく、そこには明確な「殺意」が籠っていた。最初は「触れてはならない部分なのか」と考えていたが、千空の身に危険があると良くないので彼女から事情を聞く事にした。
なんでも、未来では千空を神の様に崇拝している者もいれば、悪魔の様に嫌悪している者もいるらしい。その理由は簡単な物で「石化現象のメカニズムを解明してしまった」というものであった。
将来、完全に解明された石化現象は医療方面で利用されることもあれば軍事利用もされている。そのせいか、未来で兵士が死ぬという事は無くなってしまったらしい。未来から来た少女の父は軍人だったらしく、既に三桁以上の回数死んでしまったらしい。しかし、石化され、蘇らせられる。何度もそれを繰り返すことで、当然の様に精神はおかしくなってしまった。狂った父におびえていた少女。父に怯え、逃げようとした母。どうしようもない状況に、終わりが見えなくなっていた。ある日、狂った父はどこかに連れていかれてしまった。狂乱の父は帰ってきたときには笑顔だった。治ったのだと少女は考えて喜んだ。母は泣いた。その日から、また、世界はおかしくなってしまった。
何をしても、恐れない。
何をしても、怒らない。
何をしても、泣かない。
少女の父は人間性を失ってしまったのだ。そして、そんな人間は少女の父だけではない事が後にわかる。
だからこそ、将来起こる大量虐殺の切っ掛けとなってしまった千空の研究をゲンに止めて欲しい。そう、少女は頼みに来たのだ。
ゲンは、その話をすぐには信用できなかった。しかし、彼女のこれまでの行動に納得は出来た。同時に「千空がそんな方向に科学を利用するだろうか」と疑問を抱く。
ひとまず、ゲンは少女の依頼を聞くかは保留にして「千空が本当に悪人なのか」を解明するところからアプローチすることにした。
かくして、未来で千空は利用されていたことが判明する。千空も、未来がとんでもない事になっている原因が自分だと知り流石に困惑する。
「俺のせいでそんな事になっちまってんのか……流石に笑えねぇ事だな」
「……だけど、千空ちゃんは悪くない」
「単純に後処理が最悪だったって話だな。……いや、待て。将来そういうのが欲しい連中が俺を殺した可能性も考えられる、か?」
次々と生まれる新たな疑問。しかし、答えは存在しないまま時間が過ぎる。
少女は千空を「処理するべき悪人」ではない事を理解し、その上でこれからどうするかを考える。
タイムマシンを使えるのは後一度だけ。少女は帰り用と考えていたが、苦悩し始める。
打開策をなんとか生み出すために、少女は年表を書き「いつ、何が起きたのか」そのターニングポイントを探し始める。