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    はなねこ

    胃腸が弱いおじいちゃんです
    美少年シリーズ(ながこだ・みちまゆ・探偵団)や水星の魔女(シャディミオ)のSSを投稿しています
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    はなねこ

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    ツイートをサルベージしたわなまゆっぽいもの。副会長!私、そのカレンダー欲しいです!

    #わなまゆ
    ring-shapedCocoon

    副会長の野望 その日、聡明な副会長が持ち込んだ企画は、愚昧な生徒会長の想像の成層圏を余裕で越えるものだった。
    「瞳島会長の素晴らしさを広く全校生徒に知らしめるために、会長の写真をふんだんに使用した日めくりカレンダーを作ってみようと思うのですが、いかがでしょうか? いわゆるプロパガンダです」
     プロパ……ンガスが何だって? と訊き返したいのをぐっとこらえて(おそらくガスは無関係だろうから)、それより何より聞き捨てならないワードの尻尾をつかまえて、わたしはおっかなびっくり口を開いた。
    「ええっと、日めくりカレンダーって、一日一枚構成になっていて、日付が変わるごとに一枚ずつめくっていく、あの日めくりカレンダー?」
    「はい! その日めくりカレンダーです」
    『雪女』という二つ名を跡形もなく溶かしてしまうような晴れやかな笑みを浮かべて、聡明な副会長――長縄さんが言葉を継ぐ。
    「カレンダーに使用する写真は、わたしのアルバムから厳選したものに加えて撮り下ろしも入れて! 学生が使うものだから四月始まりがいいですよね♡」
    「いいですよねって、ちょっと待って!」
     四月始まりってことは、つまり、三百六十五日で一周するカレンダー? てっきり三十一日で一周する万年タイプのカレンダーのことだと思っていたわ。――いやいや、違う違う、そんなことを言いたいのではなくて。
     長縄さんがぱあっと顔を輝かせた。
    「ちょっと待ってということは、会長もやっぱり全て撮り下ろしをご希望なんですね! わたしもそちらの方がいいと思っていたのですが、三百六十六枚をお願いするのはいくらなんでもとちょっぴり遠慮してしまって、折衷案を提示してしまいました。ここは『ガンガンいこうぜ!』ですね♡」
    「そうじゃないしそこじゃない」
     三百六十六枚――閏年にも対応した万年タイプのカレンダー? ダメだ、頭がクラクラしてきた。
    「実は仕上がりイメージを確かめるために、手持ちのデータでプロトタイプのカレンダーを作ってみたのですが……」
     そう言うと、長縄さんは学生鞄の中からプラスチック製の書類ケースを取り出した。「こんな感じです♡」と手渡されたカレンダーは、はがきサイズほどの大きさで厚さは約五センチ。単語帳のそれよりも二倍は大きいカードリングで綴じてあり、そこそこ重い。そして――。
    「どこをめくってもわたしがいる……」
     表紙にも、四月二日にも五月十四日にも六月十六日にも八月二十八日にも十月十日にも十二月二十一日にも、どの日をめくってもわたし、わたし、わたし、瞳島眉美のオンパレード。カメラ目線のものもあれば隠し撮りっぽいのものもある中で、全て制服姿だったことが幸いというか何というか、うわあ、何この顔。
     すっかり度肝を抜かれてしまってカレンダーに目を落としたまま動けないでいるわたしを見やり、何を思ったのか、長縄さんは顔の前でぱちんと両手を合わせて、ごめんなさいのポーズを取った。
    「家庭用プリンターで印刷したので画像の質が荒くてすみません! わたし、自分の部屋の机の上にこのカレンダーを飾っているのですが、毎朝このカレンダーをめくると、今日も一日頑張ろうって気持ちになれるんです。瞳島会長から元気をいただいているんです」
     マジかよ、長縄さんの言葉に嘘はひとつもないと思うけれど、このカレンダーにそんな効力があるとは到底思えない。こんなものを配られても、生徒は困惑するのではないだろうか。
    「このカレンダーを通して、全校生徒にも元気を分けてあげたくて。でも……」
     言葉に詰まったように、長縄さんは指先をもじもじさせた。
     続きを聞くのがこわいけれど、好奇心をそそられているのも事実だ。ごくりと唾を飲み込んで、わたしは先を促す。「で、でも?」
     熱っぽい視線をわたしへ向けて、長縄さんはふふっと肩をすくめた。
    「本音を言えば、瞳島会長の魅力を独り占めしたいなって気持ちもあるんです。他のひとと分かち合うのはもったいないと思っている自分がいるんです。――ごめんなさい、会長はみんなの会長なのに……」
     頬を染めて、長縄さんは恥じらうようにぺろっと舌を出した。「わたし、わがままですよね」
    「長縄さん……」
     きゅううん……と、思いがけずに胸を絞られて、わたしの中の少年が、手の甲で鼻の下をこすりながらはにかむ。
     気がつくと、わたしはぐいっと身を乗り出していた。長縄さんに伝えずにはいられなかった。
    「わがまま大いに結構! わたしは長縄さんに独り占めしてもらった方が嬉しいわ。むしろ独り占めしてちょうだい!」
    「会長…!」
     長縄さんが嬉しそうに目を潤ませる。
    「分かりました。プロパガンダ用カレンダー制作の件については、一旦白紙に戻します」
     そうなることだけを狙った発言では決してないと断言できるけれど、ひとまず長縄さんが思い留まってくれてよかった……と胸を撫で下ろしたのも束の間、わたしの手をぎゅうっと握ると、長縄さんは今日一番の笑顔でにっこり微笑んだ。
    「その代わり、わたし専用独り占め用三百六十六日撮り下ろし日めくりカレンダーを作りましょうね♡ カメラマンは僭越ながらわたしが務めさせていただきます! うふふ、会長はどんな衣装やポーズやシチュエーションをご所望ですか?」
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