膝枕はデフォルトじゃないんですか、そうですかガサゴソうるさい
肥前忠広は耳の奥で鳴る音に顔を顰める。その瞬間パキッと書類に貼り付ける為のメモに書きつけていた鉛筆の芯が折れた。それと共に自分の心持ちもどこかで折れてしまったように感じて、ガリガリと後頭部を掻きながら項垂れる。
もう数日この妙に気に触る音に気を取られ、ただでさえ暑さで削られる集中力が霧散する。うんざりする気持ちを深々とした溜息に乗せた。
…数日前、まだ日が出て数刻も経たないのに風の恩恵も何もない広い畑はもう蒸し暑かった。
今日中にはすっかり消費されてしまうであろう艶々としたナスやきゅうり、トマト、オクラなど夏野菜をカゴに入れては台車に積んでいく。食欲を刺激されるような光景も、いつもならまだ寝ているあるはずの時間帯と暑さの前には少し色褪せてしまう。
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