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    従者の終生

    創作企画〖従者の終生〗です

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    従者の終生

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    フリート(12月度🎄)

    12月に投稿した「今日の従者終生」の原文纏めになります。

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    2021/12/01
    【研究者の日記】
    開いた本「私たちは生まれを選べない。しかし、生まれは人生の大半を左右してしまう。特に種族そのものを揺るがすのならば、尚更だ。
    もし【主】に、【従】に、【民】に生まれていたならばと夢想することも仕方がない。
    そして、逃げ出そうとすることも」

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    2021/12/02
    【主従研究記録】
    📖「【主】と【従】は共に在るべきである。その思想が最も強く出ているのが、今の社会であるだろう。【主】は【従】にこそ守られるべきであり、【従】は【主】にこそ従うべきである。それは相互に対する制約と結束の強要だったのかもしれない」

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    2021/12/03
    【■の記録】
    📖「あの人は今日も来ない。雪がひどく降っているのだから仕方がない。代わりに、いつものあいつがやって来た。吹雪紛いの雪だというのに、どうやらまだ友人の元に通っているらしい。結構な執念だ。あいつを待つ人間は、さぞかし鬱陶しく思うだろう」

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    2021/12/04
    【研究者の日記】
    📖「今日も彼が待っている。私の姿を見るなり、助手席のドアを開けてくれるようになっていた。
    よく見ると、彼の手元には小さなランプが置いてある。所々の枠が錆びて、やけに古びたLED式のその灯りは、銀色に耀いているようだ。」

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    2021/12/05
    【研究者の日記】
    📖「今日も彼が待っている。手元には碧に灯るランプを持っていた。普段は喋らない彼だが、少しだけ口を開いた。
    ずっと待っている人は、此処で待つようにと言ってずいぶん昔に去った。また来るという約束を、彼は律儀に守り続けている。」

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    2021/12/06
    【研究者の日記】
    📖「今日も彼が待っている。手元には朱に灯るランプを持っていた。今日は雪の勢いが弱い。流石に毎日邪魔をするわけにはいくまいと、車の前で少し悩んでいたらクラクションを鳴らされた。さっさと入れと睨む彼は、そうとう心配性なんだろう」

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    2021/12/07
    【研究者の日記】
    📖「今日も彼が待っている。手元には金に灯るランプを持っていた。誰を待っているのか、と訊く。一緒に居たい人だと彼は言った。どのくらい此処に居るのかを訊いてみたら、分からないと呟いた。雪がひどく降っている。一人にするのが忍びなかった。」

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    2021/12/08
    【研究者の日記】
    📖「今日も彼が待っている。手元には橙に灯るランプを持っている。車内には暖房が効いているとはいえ、やはり肌寒さはある。もし、車が壊れたら凍死するのではないかと問うと、彼は首を横に振った。自分は死なないのだと。
    彼は多分、ヒトではない」

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    2021/12/09
    【主従研究記録】
    📖「【従】は時間感覚が狂いやすい。長い時間を生きる彼らは、時折その時間が、或いは間隔がどの程度のものであるか分からなくなるのだ。100年もの記憶が飛んだり、10年を一瞬に感じたり。彼らの歴史はあまりに長く、けれど人の脳を持つ。」

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    2021/12/10
    【主従研究記録】
    📖「時間の感覚が違うのは、【主】も同じだ。勿論人にもよるが、30年という制約を生まれたときから知る彼らの中には人生を逆算する者も居る。達観するものも諦めきれない者も、どちらも決して悪ではない。彼らもまた人の身体を持っている。」

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    2021/12/11
    【主従研究記録】
    📖「【主】が〝アルジ〟であったのは、【従】が居たからかもしれない。この二つの種族が揃わなければ、【主】は誰かに守られることはなく、また【従】も、【主】さえ居なければ〝ジュウ〟者ではなく誰かを守る為を役目としなかったかもしれない」

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    #今日の従者終生
    2021/12/12
    【研究者の日記】
    📖「真実に善悪はないが、人を救うことも、傷つけることも出来る。真実を自分だけが知ってしまったとき、どうするべきなのだろうか。墓まで持っていくと言うのは簡単だが、今はその墓石がとてつもなく遠い。嘘も秘匿も、罪だろうか」

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    #今日の従者終生
    2021/12/13
    【研究者の日記】
    📖「【民】をヒトと呼び始めたのは、誰だったろう。まるで【主】と【従】を人ではないと言わんばかりのこの呼び名は、千年では効かないほど古来使われ続けている。定着が早かったのだろう。彼らは【主従】を人だと信じたくなかったのかもしれない。」

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    #今日の従者終生
    2021/12/14
    【研究者の日記】
    📖「嵐探、という名前。雪を払う為の道具だが、その被害や脅威に対する畏怖からもっと分かりやすい自然災害を呼び名に使ったのだろうと思われる。夜のような星月もなく、暗闇のように落ち着いてもいない。そのさまから嵐と形容されたのだろう。」

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    2021/12/15
    【主従研究記録】
    📖「寿命と才能。人を狂わせる二大要因といっても過言ではないだろう。一定数までは金で買うことか出来るかもしれないが、その〝先〟は触れることの出来ない領域だ。そこに触れた【主】や【従】がこの世界を良くも悪くも狂わせてきた」

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    2021/12/16
    📖「才能は人を狂わせた。強欲に力は求められた。求められた主は傲慢になった。美食は当然となり暴食は起きた。産み出される魅力は人を惹き付け色欲の的となった。王は嫉妬し首を刎ねた。憤怒を抱えたまま主は死にゆく。救われ慣れた民は怠惰になった」

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    2021/12/17
    📖「寿命は人を狂わせた。死にたくないと強欲に願い、死ぬわけがないと傲慢に座し、最後の晩餐には暴食し、愛は不滅と色欲を美化し、不死の身体に嫉妬して、何故死ななければならないのかと憤怒を繰り返し、それでも怠惰に時間を浪費する」

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    2021/12/18
    【主従研究記録】
    📖「〖 強欲 〗死にたくないと願う人々は【主】に縋った。才能に望み、そして多くは果たされた。人の平均寿命を延ばし、多くの病から解放し、不治を極限まで減らした。この世で唯一、全く進展が無かったのは【主】に残された時間だけだった。」

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    2021/12/19
    【主従研究記録】
    📖「〖 傲慢 〗死ぬわけがないと傲って笑ってそれでも怖くなり、逃げ出したいと泣いている。死は平等にやって来る。才能など構いなしに容赦なく襲い来るものである。【従】は長寿で不死身だが、しかしほんとうの不死ではない。寿命は傲るには儚過ぎた」

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    2021/12/20
    【主従研究記録】
    📖「〖 暴食 〗人生最後に何を食べたいか。そんな問いが当たり前に拡がっている。パンとワインの時代を過ぎ、美食追及から飽食の時代へと移り変わった。美味しいことが普通になり、不味いことは悪となった。【主】で肥えた舌は、もう切り落とせない」

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    2021/12/21
    【主従研究記録】
    📖「〖 色欲 〗【主】はその血を絶やしてはならない。【従】はその血が絶えるまでが長い。子供を産み、育てることは一つの義務だった時代もある。結ばれたのは愛だったのだろうか。貴方は何で隣を選んだのだろうか。種族が違えば相手も変わったのか」

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    2021/12/22
    【主従研究記録】
    📖「【主】にとっての幸福と、【従】にとっての幸福。そして【民】にとっての幸福はきっと違う。いや、それ以前に幸福など人間個人次第だろう。違うことを受け入れなければ愛にはなれない。あなたの愛とは何だろうか。誰に向けた、何だろうか」

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    2021/12/23
    【主従研究記録】
    📖「この世界に、もしも【民】しか居なければ争いは無かったのだろうか。全ては平等に収まっていたのだろうか。恐らくそれは違う。きっと【民】にも能力の優劣がつき、そこに蟠りは生まれていた。
    もうすぐクリスマスが来る。この季節も、もう終わる」

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    2021/12/24
    【従の記録】
    📖「あの人はもう来ない。幸せを自分で掴んだから、もう手を繋ぐ必要もない。これで良かったんだと思う。そう思いたい。
    主を【主】として大切にしてきたつもりだった。だが、【主】から解放されることだけが主の願い。それを選ばなかった俺は、俺だけが。」

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    2021/12/25
    【研究者の記録】
    📖「【別離の従】が手にした嵐探の中に、含まれなかった色が一つだけある。彼はその色の意味を願わなかったのか、願えなかったのかは分からない。その色の名前を、無意識に避けていたのかもしれない。
    最後にもう一度、あの場所へ向かうことにする」

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    2021/12/26
    【研究者の記録】
    📖「クリスマスを終えた。今年も多くの主従を見てきた。【主】を守る選択を、【従】と生きる選択を、全て似通うものだと思えないほどに異なる彼らのことを、見てきた。
    今回もアンケートの回収に成功した。私も選ばなければならない。」

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    2021/12/27
    【主従研究記録】
    📖「■■国。【民】の王が統治した小さな亡国。かつて【主】が居なかった地。
    ある日その国にも【主】が生まれた。数学に優れ、閃きに愛され、効率を手にした少年は国じゅうから求められた。
    王は少年の首をはねた。次に生まれた【主】も、その次も。」

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    2021/12/28
    【主従研究記録】
    📖「不死の従者は王に問うた。〝なぜ天才を殺めるのか〟王は答えた。〝私が それ ではないからだ〟非凡を殺め、才を失い、国の力は伸び悩む。その国は、【主】を活用し技術を発展させた周囲の国々に食い潰され、戦に敗れほどなくして亡くなった。」

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    2021/12/29
    【主従研究記録】
    📖「ほぼ全ての国々において総数が同じくらいずつであるにも関わらず【従】を見つけることは、【主】を見つけることよりも容易い。当然、【主】の特徴は意図的に隠すことが出来るが、【従】の特徴はどうしても外に表れやすいからである」

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    2021/12/30
    【主従研究記録】
    📖「我々は、【民】が、【主】が、【従】が。全ての種族が平等に暮らせる世界に出来るだろうか。
    この百年で世界は、少なくともこの国は徐々に個人の生活を尊重出来るようになってきた。しかし溝は埋まらない。我々は人間だ。我々は、人間だ」
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    2021/12/31
    【🔔】
    いつもお世話になっております、従者の終世です。

    今後の運営スケジュールは
    ▼1月初頭:第5回イベント予告公開・概要ページ設置
    ▼1月中旬~2月中旬:第5回イベント開催 の予定です。

    どうぞよろしくお願い致します。

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