眠れない夜に。布団に潜り込み、目を閉じる。
今日も変わらず簡単には眠りにつけなくて、お気に入りの曲を流し始めた。
いつもなら歌詞を頭に浮かべていたらいつの間にか寝ているのに今日は全く眠れない。
今は午前0時。日付が変わったばかり。
このまま眠れないのはまずい。雪宮は焦る。
その時、ふと彼女の顔が思い浮かぶ。
(すずちゃんの声聞きたいなぁ)
そう思いLINEの画面を開いてメッセージを送る。
「起きてた?」
「少し声が聞きたいんだけど、話せないかな」
既読のマークがすぐについた。
「いいですよ!」
通話ボタンを押せば、雨水はすぐに出た。
「やっほー、聞こえてます?」
「うん。聞こえてる。」
「何かありました?」
「ううん。特に何も用はないんだよね」
「えぇー??無いんかーい」
楽しそうに笑う彼女の声が愛おしくて胸が締め付けられる。
「すずちゃんの声聞いたら眠れるかもって思ったんだ…………」
「眠れそう?」
「わかんない」
「寝れるまで付き合いますよ、私課題やってるとこですし。」
「うん。ありがとう。」
画面の向こうから紙の上でペンが走る音や教科書を読み上げる雨水の声。
時折交わされる雪宮と雨水の他愛のない話。
その全てが雪宮の心を落ち着かせ、眠りへと導いていく。
「課題おーわりっ!!よし!寝るぞ」
「……。」
「雪宮センパイ?」
「……すぅ……」
「……けんゆーくーん」
「………………すぅ……」
雨水が呼びかけるも返ってくるのは寝息だけだった。
雪宮が眠れたことを確認して雨水はホッと安心した。眠れて良かった。
「おやすみなさい。剣優くん。」
良い夢を。