かわいそうに、かわいそうに胸の内から足先、指先まで轟々と燃える炎で、目の前の男を焼き殺してしまいたい。
僕が大人と分類されるようになってから数年が経つ。
「んッ……」
恋人や仲の良い友人のいる人はきっとそれなりに辛くも楽しい人生を歩んでいるんだろう。
僕はといえば、毎日仕事に追われ、まともな生活もままならなかった。
先週だってそうだ。誕生日だと言うのに遅くまで残業をして、家に帰ったのは日付けが変わる十分前。
帰る途中でせめてもの、とコンビニで買って帰ったショートケーキを晩飯も食べず、おめでとう自分、なんて呟きながら飲み込んだ。
小学校や中学校、高校、大学の同級生たちもこんな空しい思いを知っていたりするんだろうか。僕だけではない事を願いたい。
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