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    Rock6_low

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    Rock6_low

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    前にメモった『スクに長年片想いする男性モブ視点。その内スクとセのつくおともだちになるけど、モブに敵意剥き出すスクの弟ユジにたじたじな話。スクイタにハッピーエンドはこない』のやつ。続きは書くかもしれないし書かないかもしれない推敲もしてないいつ書いたかも内容も碌に覚えてない宿虎小説(宿虎要素はまだない)

    かわいそうに、かわいそうに胸の内から足先、指先まで轟々と燃える炎で、目の前の男を焼き殺してしまいたい。




    僕が大人と分類されるようになってから数年が経つ。

    「んッ……」

    恋人や仲の良い友人のいる人はきっとそれなりに辛くも楽しい人生を歩んでいるんだろう。
    僕はといえば、毎日仕事に追われ、まともな生活もままならなかった。
    先週だってそうだ。誕生日だと言うのに遅くまで残業をして、家に帰ったのは日付けが変わる十分前。
    帰る途中でせめてもの、とコンビニで買って帰ったショートケーキを晩飯も食べず、おめでとう自分、なんて呟きながら飲み込んだ。
    小学校や中学校、高校、大学の同級生たちもこんな空しい思いを知っていたりするんだろうか。僕だけではない事を願いたい。

    「あっ、く、ぅん…」

    いや、きっと僕だけだろう。こんな風に冷蔵庫の稼働音しか響かない無機質な部屋で、自身の尻を慰めて誰かの愛を欲しがってるのなんて。
    ああ、虚しい。学生時代、彼に恋したときからもうずっと。


    出逢いは中学二年の春。新入生が体育館にぞろぞろと入場してきて、どれもこれも似たような小学生のあどけなさが抜けない見た目に興味一つ湧かないで、それを何となしに眺めていた。突然、色素の薄いその頭に春の眠気を掻き消された。僕に背を向けて歩み行く姿を目で追って、着席と共に振り返ったその顔に心臓が跳ね上がった。気怠げに据わった赤色の眼。涼しげな眉、通った鼻筋。不機嫌に下がる口の端。新入生とは思えない明らかに異質な出立ちにどこか色気を感じて、僕はそれまで自分が女の子に対してなかなか興味が持てなかった理由を知った。この子に抱かれたい。身体が女になったかの様な気分だった。火照って、耳まで熱い。全身からイベリスが茎を伸ばして蕾が彼に向かってゆっくり開く。こっちを見てくれ。その鋭く尖った視線で僕の心臓を突き刺して。
    そんな思いが届いたのか、日に当たると桜色にも似たその栗色の頭をついと動かして彼がこちらを見遣った。目がかち合って、途端、僕は甘くて深い、深い海底に沈んだ。
    その日からずっとずっと彼が心に棲みついて、こびりついて、剥がれない。

    「あっ…!」

    指先が前立腺を強く刺激し、僕の控えめな屹立からびゅくびゅくと勢いよく精液が飛び散った。いつもあの眼差しが僕を射抜くのを思い出しては吐精してしまう。むしろ自慰の際はこれでしか達せないでいる。中学を卒業するまでの二年間、ただ眺めるだけで目が合ったのだってあの入学式だけだ。その後、彼がどの高校に行き、どんな道を歩んだかなんて検討もつかない。なのに、あれから何年も経つのに、焦がれてどうしようもない。ゲイバーで暇を潰しては、扉が開く度に彼の姿を期待してしまうほどに。





    奇跡が起きた。
    いつもの様にバーで一人酒を仰いでいると軽快な鈴の音と共に扉が開いて、どうせ彼ではないだろうと思いながらもいつもの癖で視線をそちらへ向けると、あの時よりも大人びた彼がそこに居た。がたりと反射的に立ち上がってしまって、店にいた客の殆どが僕を、そして僕の視線の先の彼を見ていた。周りの視線を辿って彼の瞳が僕を映し出す。そうだ、この、この目の覚める様な緋の瞳。この瞳こそが僕の欲しいもの。狂おしいほどに焦がれる、深い緋色。

    「虎杖、宿儺君だよね?」

    自然と声が出た。内気だった学生時代とは違う。本気ではなかったけれど、今まで数人の男と関係を持ち、経験した。彼の内に入るためなら何だってする。必死だった。だけどそれがバレてしまえば、きっと彼は離れていく。慎重に、距離を詰めなければ。

    「俺を知っているのか」

    どくり、と全身が熱を帯びる。低く静かに響く深い声。あの二年間、一度も聞くことのなかった声。燻っていた恋情が嵩を増していく。空っぽの僕の中身を彼が満たしていく。たったこれだけで絶頂してしまいそうになる。
    彼はゆっくりと僕の座るカウンターに歩み寄り、息の掛かるほど近くで立ち止まった。あまりの近さに僕は先の問いに対してコクコクと頷くことしか出来ないで、きっと今ので僕が彼を心から好いているのがバレてしまっただろう。もう駄目かもしれない、と言葉が過る。だが、予想に反して彼はその不機嫌な顔を寄せてきて、耳まで赤いぞ、と僕を揶揄って見せたのだ。離れた彼の顔には薄らと笑みが浮かんでいる。僕は衝撃で膝がカクリと力を無くし、掛けていたカウンターチェアに奇跡的に座り込む。目線は愛しい彼に縛られたまま。

    ─────好き。

    零れ落ちた。身体の内から溢れ出して口からぽろりと。
    後はもう為されるがまま。入店したばかりの彼に連れられてホテルに向かって、要らないと言う彼にどうしてもとわがままを言ってシャワーを浴びて、愛という概念からはほど遠い荒々しいセックスに身を任せた。彼にとって、一夜限りの性欲処理道具でも今は構わなかった。この一晩で彼に道具としての価値を知ってもらう。僕は持てる性技を余す事なく使って、ただ只管奉仕した。彼がそれを気に入ったかは分からなかったけれど、時折息を詰める様にして声を漏らしていた。それがまた僕を昂らせた。イった数なんて覚えていない。誰に抱かれてもここまで感じる事はなかったのに、身体が恋情に狂ったか、壊れた玩具の如く吐精を繰り返して、中でも数え切れぬほどイった。彼でなければこんな荒々しいセックスでここまで達してはいない。きっと彼だから。恐ろしいくらいに僕を惑わせる、彼だからなのだろう。
    触れると意外にも柔い猫毛。相変わらず、目つきの悪い緋。引き締まった身体。脳を震わす深い声。
    気が付けばベッドは僕の体液でぐちゃぐちゃに濡れてその臭いで全身が包まれていた。事後、そこに倒れ込む僕を置き去りにして、彼はシャワールームへ向かった。水の粒が流れ出す音を聞きながら耐え難い眠気に負けて、目が覚めると生臭いホテルの一室は、僕一人になっていた。




    それから数日間、あそこで眠った自分を責めて過ごす毎日だった。連絡先だけは手に入れようと考えていたのに、それすら出来ず。何とかもう一度会えないかとバーに毎日顔を出していた。そうして一週間、二週間と過ぎていった三週間目。仕事終わりの悲鳴上げる身体を引き摺ってバーに入ると見間違いようも無い後ろ姿がカウンター席に見えた。疲れなんてそれだけで消え失せて、また僕の内側から彼を求めて茎が伸びる。萎んでいた蕾が意気揚々と花開いて、全身で彼を誘惑しようとする。下半身から蜜が滴っているのが自分でもよく分かった。興奮して熱で蕩けそうになるのを堪えて彼に近寄り、微笑んでみせる。

    「この間は先に帰っちゃったから、もう会えないのかと思った」

    背後から静かに歩み寄り、あくまで余裕のある大人を気取って見せた僕に、こちらに向き直りながら口元に笑みを浮かべて彼は答えた。

    「お前の具合は随分良かったことを思い出してな、また相手してやろう」

    なんて悪い人なんだろう。僕の気持ちなんてもうきっと彼は気付いてる。それを全て汲み取って、上から目線で遊び道具に選ばれたことを喜べとばかりに。だけど、そんな扱いですらこの上ない喜びを感じる僕も、余程の馬鹿だ。ああ、だけど構わない。彼が僕にどんな感情を向けようが向けまいが。ただの道具として扱われようが、構わない。今この瞬間、その目に僕が映ってさえいれば、それだけで僕の人生が価値あるものに変わる。





    「はあ、うぅんッ…」

    あ、また吸ってる。
    乳首を吸うのが癖なんだろうか。この間も、何度も乳首に吸いつかれて異常なほどに感じてたけど、赤子の様に乳首に食らいつく姿を目の当たりにすると、ないはずの母性を擽られる。胸元にある頭を優しく抱きしめて乳首から伝わる痛みを快感に変える。彼の太い陰茎が僕の中で蠢き、感嘆の吐息が幾度となく口から吐き出されて、脳はどろどろに溶けきっていた。肌に伝わる柔くて硬い彼の感触を記憶に刻み込みながら、全身で味わう。

    「あっ、いっ…!」

    再度噛みつかれ、微睡んでいた意識を引き戻される。案外甘えたなのか、それとも独占欲、いやそれはないか。ストレス、だろうか。
    出会った時から人生に喜び一つもないというような顔をしていたのだから、ストレスが絶えないのかもしれない。

    「あ、いま、うごかないで……ッあん、ん!」

    噛み付く表情は苦悶に満ちていて、こちらまで胸が締め付けられる。未だ乳首に歯を突き立てながら、大人しくしていた剛直が苦悩に抗うように僕の中で暴れ始めた。

    「ふッうッ、う゛」

    顰め面で低い声をさらに低く響かせ唸る。可愛い。あんなに男としての魅力を感じていたのに、腕の中にいるこの不機嫌な男が可愛く思えて仕方がない。
    僕にだけ、その不満をぶつけて。そんな独りよがりな愛情が湧き出てくる。いとおしい。

    「く、おい、出すぞ」

    「うん、っうん…なか、にッ」

    熱い精液が柔い肉壺に放たれる。僕が女だったならこの愛しい彼の子を腹で育ててやれるのに。精液は僕の中でただ死んでいく。僕の淡い願いと一緒に。

    「どうして僕の相手をしてくれるの?」

    事後、ベッドから立ち上がって水を飲む彼に問う。気になっていたことだ。セックスに慣れてはいるけれど、彼を満足させられているかと言われれば、そうではないと思う。僕に彼のように人を惹きつける魅力だってない。
    寝そべる僕を冷たい緋で見下ろしながら、しばしの沈黙の後、彼は言った。

    「十年ほど前にも同じような目をして俺をしつこく見詰める奴がいた。」

    「……え」

    十年前、と言えば丁度彼も僕も中学生のはず。嫌な予感に首のあたりに肌寒さを感じる。彼はさらに続ける。

    「蛇のように絡みついて執着する視線が物珍しくて良く覚えている……彼奴は今頃どうしてるだろうなあ」

    ニタリと意地の悪い笑みを此方に向けて。少しずつ全身に熱が帯びていくのが分かった。

    「え、あ、あの時から気付いて…」

    ふん、と鼻を鳴らして彼は笑った。

    「あれだけ見られていればなあ」

    顔から火が出るかと思った。今すぐ穴を掘って逃げ込んでやりたい。全部全部知っていただなんて。
    十年も経って同じ目を向けてきた時は呆れたがな、と僕から目を逸らしてぶっきらぼうに言い放つ。

    「暇を潰すには丁度いいからなあ、心ゆく迄遊んでぼろ雑巾になる前に捨ててやろう」

    悪びれもせず、笑う彼にまた胸を締め付けられる。こんな男の何がいいのかなんて僕だって分からない。でもこれは僥倖だ。どうせ永遠なんてないんだから。まだ抱いてもらえるなら喜んでぼろぼろになるまで彼に身を捧げるさ。

    「なら、僕を君専用のおもちゃにしてくれる?」

    返答は無かった。ただ彼はまた僕の上に覆いかぶさって、不安な僕をその荒い愛撫で蕩してくれた。



    数ヶ月も経つと、距離は随分と縮まった。ホテルは面倒だと僕の部屋を訪れるようになり、今日で十回を数える。彼の食の好みを把握し、仕事は何で、どの辺りに住んでるのか。見た目からは想像がつかないが、料理が趣味のひとつだとか。あと、家族について聞こうとすると眉間に三本の皺が入ることとか。知る事は徐々に増えていくけれど、いつまで経っても家族の話をしない。僕の家はといえば、ふとしたきっかけでゲイであることがバレて以降、ギクシャクとした関係が続き、もう二、三年連絡も取っていない。僕の情報と引き換えに彼の家族の情報も得られないかと試みて返ってきたのは「…弟がいる」。たったそれだけだった。
    弟がいた事は驚いたけれどこれ以上聞くのは危険だと直感が言うので、その時の僕は話題をすり替えて彼の機嫌を取った。
    弟は彼に似ているんだろうか。地毛だといったこの栗色と同じ色をしているんだろうか。きっと可愛い。まだ会ったこともない弟に彼を重ねて心の中で愛でる。僕はもう重症だった。マリアナ海溝より深い場所で虎杖宿儺の気紛れに溺れてる。

    「俺の家に来るか」

    突然の提案に瞬きが増える。なぜ、と問う前に答えが提示される。

    「弟がお前に会いたいらしい」

    一瞬、彼の願いではない事に悲しみを感じたが頭から消し去る。だけど、彼が僕の事を弟に話しているという事実に今度は心躍る。

    「いいの?行っても」

    おずおずと問い掛けると、はあぁ、と長い溜息をこぼす彼に少しの恐怖を感じ、僕は身体を強ばらせる。

    「彼奴がしつこく強請るからな」

    どうやら彼自身は乗り気でないどころか嫌がっているようだが、それでも弟のおねだりには応えてやるのか。と、また新たな彼の側面を見て驚く。甘さ、なんてこの数ヶ月の間も感じることはなかったのに、弟にだけはそれを見せるんだ。
    胸の隅っこの方でチリチリと小さな火種が燃える気配がした。


    結局、乗り気ではない彼と一緒にその日の内に虎杖家に行って、僕は片手に洋菓子を持って。仲良くなれたらいいな、なんてお気楽な考えだった。
    会うや否や、「この人がセフレ?」と彼に問うた弟に牢籠ぐ。彼と似た顔立ちでありながら、彼とは正反対の人懐っこそうな顔つきで、遠慮のない表現に少なからず胸が痛んだ。彼の肉親の僕に対する認識は、まるで彼の僕に対する気持ちを代弁しているように思えたのだ。事実、そうなんだけど。
    僕に話すのと変わらない調子で、彼は弟にそうだ、とだけ告げる。ふぅん、と会いたがっているといっていた割には気のない返事、反してその目は僕を上から下まで睨め付けている。居心地が悪い。僕はもう既に来なければ良かったと思い始めていた。好いている人間の家にようやっと来れたというのに。
    それでも何とか好かれたい、と僕はぎこちなく笑顔を作って自己紹介をし、続いて問い掛けた。

    「君は、何て名前?」

    「虎杖悠二です。よろしく!」

    先程の無愛想な態度が急になくなり、太陽のように明るく笑って答えてくれた。見た目通りに朗らかな様子に、さっきのは気のせいか、と僕は胸を撫で下ろした。
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