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    みはる

    ワンクッションはR18ではない程度の肌色等、R18はR18。あとはその他いろいろ。
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    みはる

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    一昨々年「クリスマスにデートするキバマクを書こう」

    一昨年「書き終わらないから代わりに絵描くか……」→大晦日前後に出したクリスマス絵

    去年「どうしても埋まらない箇所あるから来年の自分に任せた」

    先月「できた」

    っていう経緯で生まれた短編です。

    淡雪のひかり その日の朝は生憎の空模様で、先日からぼくの家に来る約束をしていた寒がりの恋人は、キルクスのいつ雪に変わるとも分からない冷たい雨に降られて、玄関に入って来た時は子犬のように震えていた。
    「おはようございますキバナさん」
    「マクワ〜」
     どうやら傘を持たずに出た途中で雨に見舞われたらしく、びしょ濡れだった。
    寒さから逃れる為かぼくを抱きしめてきたけれど、こんな冷えたまま玄関に居ても仕方がない。
    震える彼を宥めながら家に上がってもらう。

     暖炉前の1人がけのソファーにキバナさんを座らせて、バスタオルを取りに行く。
    ソファーの上で縮こまっているキバナさんの髪をそれで拭いていると、少し落ち着いたのかこちらを見てへにゃ、と笑った。
    「すまないなぁ」
    「それは言わない約束でしょう」
     他地方の時代劇のようなやり取りだが、この冗談めいたやり取りをどこで知ったのかは知らないけど、彼は地味に気に入っているらしい。
     たまにこれをやってくるので変に覚えてしまった。
    先程玄関で震えていた時よりは良いけど、まだ体の芯は冷えているようだ。
    「お風呂沸かすから後で入ってください」
     このまま雨が止まなければ、出掛けないのも選択の内かもしれない。
    今日はホリデーシーズンの初日だし、目当てのクリスマスマーケットは今日から始まって数日間続くから時間の余裕は充分ある。
    「一緒に入りたいな」
    「キバナさんの家と違って結構狭い湯船ですよ」
    「オマエが嫌じゃなければ気にしないよ」
    「休暇の初日から朝風呂なんて、なんだか贅沢ですよね」
    「ふふっ」
     自宅に独立した浴室があるというのはガラルでは珍しい方だけど、温泉街のキルクスでは地域柄割と見られるものだ。
    ナックルに住むキバナさんの家については完全に彼の趣味らしいけど。

     湯船を軽くすすいでお湯を出しておき、居間に戻ると、風呂場の水音と外からの雨音が部屋の中まで響いて、いかにも雨の日らしい気怠い空気を感じる。
     キバナさんがテレビの前の2人がけのソファーに移動していたので、隣に座った。
    テレビでは天気予報のコーナーが始まり、今日の天気について解説している。
     予報によると、昼過ぎには晴れて雲ひとつなくなるそうだ。
    「この様子なら夕方は問題なく出られそうですね。まあテントを用意している屋台が多いでしょうから、一応雨天決行みたいなんですけど」
    「マーケットは晴れていた方が楽しいもんな」
     二人でタブレットを覗き込んで、今年の開催情報を公式サイトで見る。
     毎年変わる開催場所や、去年までは無かった出店情報など、見ているだけでわくわくする。
    「ハロンやターフだった年は、あっちも珍しいものばかりで面白かったけどさ、帰るにしても泊まるにしても大変だったな」
    「あちらの方はホテルがないから民宿の争奪戦みたいになりますものね」
    「キルクスかナックルだと歩いて帰れる場所があるのはデカいよな。 今回はオレ、アルコールもいっちゃうから」
    「屋台で酔い潰れちゃダメですよ」
    「食べ歩きメインならへーき」
    「だと良いけど」
     また半日くらい時間のあるイベントへの計画を膨らませてどちらともなくぼくらは笑った。

    「そうだ、例のアレ出かける前には出すんだろ? 用意する時は手伝うぜ」
    「じゃあお風呂入った後にお披露目といきましょうか」
     例のアレというのは、他地方から特注で購入した「布団セット」だ。
    ぼくの使っているベッドはよくある市販のシングルベッドで、長身のキバナさんだと一人でも狭い......というよりははみ出てしまうので、
    今までキバナさんがこちらに泊まりに来るのは難しかった。
     が、今回買った布団はメーカーに無茶を言って8フィートの正方形という、わけのわからないサイズで製作してもらったのでキバナさんでも大の字で寝られるくらいはあると思う。
     問題はサンルームに干してあるあれをどこの部屋で広げるかだ。
    「ダブルサイズくらい?」
    「キングサイズはあるんじゃないかな......マットレスは収納の都合で幅4フィートのが2枚になりましたが」
    「お手数おかけします......」
    「いえいえ。 あ......そろそろお風呂溜まりますよ、入りましょうか」
    「おう」
     バスタオルを準備して風呂場に向かう。

     脱衣所に入ると、洗面台の棚に置いておいたぼくの歯ブラシの隣に、お泊まりセットから出したらしいキバナさんの歯ブラシが置いてあった。
     なんだかくすぐったいような気持ちになって思わず頬が緩む。
    ぼくが泊まりに行っている時のキバナさんもこんな気持ちだったんだろうか。
     服を脱いで浴室に入ると、一足速く入っていたキバナさんが湯船に浸かっている。
    「お邪魔します......入れるかな」
    「オレが端寄ればいけるって、おいでおいで」
     掛け湯をして湯船に入る。
    「結構ギリギリですよ」
     二人とも両膝を立てて向かい合ってぎゅうぎゅうに座っているのがおかしくて、ぼくは思わず笑ってしまう。
    「オレは好きだぜこういうの」
     キバナさんも笑う。
    そのまま彼の肩に頭を乗せて、他愛のない話をしながら体を温めた。

     風呂上がり、ぼくはドライヤーで髪を乾かし、キバナさんはそのまま自然乾燥派らしく、ぼくが風呂に入っている間に居間のローテーブルの上に置かれていたヘアオイルを手櫛で馴染ませている。
    「冷えちゃいません?」
     家に来た時の凍えていたキバナさんを思い出して聞いてみた。
    自宅にいる時の感覚でやっているのだろうけど、今の時期のナックルとキルクスの気温は10度くらい差がある。
     キバナさんがハッとした顔をした。
    「風呂であったまって寒かった事忘れていたわ」
    「そんな事だろうと思いました。 乾かしますからこちらに来て下さい」
     丁度自分の髪を乾かし終わるところだったので、座っていたチェアから立ち上がり、キバナさんにそこに座るように促す。
    「じゃあお願いしようかな」
     少し照れたような顔で言われて、思わず可愛いと感じた。
    ドライヤーのスイッチを入れて温風で髪の根元からしっかり乾かしていく。
    ふわりとヘアオイルのいい匂いがする。
    髪が絡まないように手櫛で梳くようにしていたら、撫でられている猫ポケモンみたいにキバナさんが目を細めた。

    「そういえば、今日届いた荷物の中に何が入っていたんですか?」
     ふと、朝一番の宅配でキバナさんよりも先に来た謎の小包の事を思い出した。
    事前に宅配が来る事は知らされていたけど、なんだかんだで今まで中身について触れられていなかった。
    指定日とキバナさんが泊まりに来る日が同じだから、本人に聞いてから開けるつもりでいた小包は今、ダイニングテーブルの上に置いてある。
    「あー……あれな。
    多分お前が気にいると思う」
    「そうなんですか?」
    「うん。
    楽しみにしてて」
    「わかりました。 ......はい、おしまい。 乾きましたよ」
    「ありがと。 ......ってオマエ、乾かしっぱなしじゃん、ブラッシングするから、ほら交代」
     そう言って今度はぼくがチェアに座らされ、髪をブラッシングされる。
    丁寧にブラシをかけられていくのはとても心地が良い。
     時折地肌に触れるキバナさんの手がとても優しくて、つい眠ってしまいそうになる。
     ぼうっとしている内にブラッシングは終わっていたらしく、頭を撫でられる感触だけが残るというよりは、現在進行で続いていた。
    「今寝かけていたな?」
     キバナさんがぼくの頭を撫でながらニヤニヤしている。
    「キバナさんだってさっき」
    「まあ多少ウトウトしたけどオレは寝てねーもん」
    「くっ」
    「そこまで悔しがらんでも」

     それからひとしきりふざけ合ったあと「そろそろ特注の布団のお披露目してくれよ」とキバナさんが切り出した、それは勿論なのだけど。
    「その前に......先にキバナさんが送ってきたあの謎の小包、開けてみても良いですか?」
    「いーよ」
     そうして二人でダイニングテーブルの方に行き、ぼくは両手に収まる大きさの小包を手に取った。
    割と軽いので余計に中身が想像つかない。
     開封すると中に入っていたのは、それぞれの名前の頭文字が入った二つのマグカップだった。
    シンプルな白いマグカップで持ち手には金色の蔦のような模様が入っている。
    ぼくが以前、雑貨屋で一目見て気に入ったものだ。
    「これ......」
    「前にデートした時オマエこれずっと見てたろ? 後日同じ店に行ったら他のイニシャルのも追加されていてさ、オレのKもあったからお揃い」
    「ありがとうございます......ぼくこれずっと気になっていたんです」
    「クリスマスシーズンだし、これで一緒にエッグノッグとか飲もうな」
    「......うん」
     そういえば、お揃いの食器なんてこれが初めてかもしれない。
    お互いに、それぞれの持ち物から良いと思ったものを真似で買ってみた事はあったけど、ちゃんとしたお揃いは初めてだった。
    キバナさんも自分の分のマグカップを取り出して眺めている。
    二人とも無言でしばらく見つめていたけれど、なんだか急に照れくさくなってしまった。
    「じゃあとりあえず、布団を出すの終わったらこれでお茶しましょうか」
    「そうだな、牛乳ある? オレ様特製のロイヤルミルクティー淹れてやる」
    「ええ、楽しみです」

     包装を片付けて、マグカップを洗い、ドレーナーに置いた後、ぼくらは布団を干してある二階のサンルームへ向かった。
    「デカいなぁ」
    「まあでも、キバナさんの家のベッドも大きさはこのくらいですよね」
    「いやぁでも和式の敷布団がこのサイズは初めて見るわ。 これどこに広げて寝るんだ?」
    「ぼくの部屋と居間で広げられるのは確認したのでどちらかですね。 暖房が効くのもその二部屋だし」
    「じゃあマクワの部屋かな......一階に下ろすの大変だろう」
    「一応暖炉もある分居間の方が暖かいですよ」
    「でも使った後干すのも収納場所もこのサンルームだろ?」
     冬季に雪深くなるキルクスではベランダではなく一部屋を丸々温室にしたようなサンルームがある事が多く、うちの家も例に漏れずフローリングの広い個室になっている。
    「マットレスだってあるし全部二階で済むようにしようぜ。 それに寒さなら......」
    「?」
    「オマエがいればあったかいよ」
    「......もう」
     ぼくの恋人はとても素敵な人だけど、隙あらば甘い言葉を投げかけて常にこちらのペースを乱してくるのだけは困ったものだ。
     腰を抱かれ引き寄せられて、キバナさんの顔が至近距離に来るのが恥ずかしい。
     ぼくが身動いでいるとキバナさんはぼくの頬に手を添えて、そのままキスしてきた。
    触れるだけの優しいキス。
    ぼくは目を閉じてそれを受け入れる。
     唇が離れると、キバナさんはぼくを抱き締めて 耳元で囁いた。
    「もう良いですってば、充分伝わりましたよ」
    「えーもうオレが言いたいから言ってるだけだよ」
    「ば、場所も決めた事だし、夜に備えてセッティングしましょう?」
    「おお、そうだな」
     少し強引にぼくは甘い空気を断ち切った。
    このままペースに呑まれると、おろしたての布団でいきなり致していまいそうな気配がしたからだ。
    別にイヤではないけど、初めてこの布団を使う時は修学旅行のような、お泊まり会のようなちょっと特別な感じを味わいたいなんていう、個人的な理想がある。
     今回キバナさんは数日泊まるから、そういう雰囲気になる日は確実にあるだろうし、この布団で初めて寝る今晩だけはぼくのワガママを通すつもりだ。
     キバナさんはぼくの頬に名残惜しそうにキスをくれた。

     それからぼくの部屋の家具を少し動かして、空いた床のスペースにマットレスと布団、枕をセッティングする。
    「あーこの感じ、テレビで見た事ある。マットレスはなかったけど」
    「ぼくベッドしか使った事が無いので、少しドキドキします」
    「わかる〜オレ様も。あの部屋にタタミとかある地方に旅行に行くとこんな感じなのかな......いつか旅行行こうな」
    「連れて行ってくれるんですか?」
    「勿論」
     意外と問題無く部屋に収まった布団にぼくは満足した。
    これで、クリスマスマーケットで夜遅くまで遊んできても、すぐ飛び込める寝床が出来たわけだ。
    だけど、ちょっとソワソワしている。
    そばにいるキバナさんも、同じような様子でこちらを見てきた。
    「ちょっと試しに横になってみるか」
    「いいですね」
     ぼくらは馴染みの無い珍しい寝具に、はしゃぐ子供みたいに寝転んだ。
    ふかふかのお布団が、ぼくらを優しく包む。
    なんだか、不思議な気分だった。
    キバナさんも、同じ気持ちだろうか。
    ぼくらは起き上がって、お互い見つめ合った。
    どちらともなく、自然と顔を寄せ合って、唇を重ねる。
    触れ合って......
    「だ、ダメですよ」
    「えー? オマエさっきから随分むずがるなぁ。
    出かけるまではまだ全然時間あるのに」
    「だってお泊り......」
    「ん?」
    「いえなんでもないです」
    「いーや、今何か言いかけてた。理由があるならちゃんと教えて?」
     二人きりの場で食い下がられると、どうにも逃げられなくなってしまう。
    仕方なく、ぼくが今肌を合わせるのを避けたがっている理由を明かした。
    「なんだオマエそんな可愛い事考えていたのか」
    「......子供っぽいって思いましたか?」
    「それでも良いじゃん。 なら今日はお預けにしてやるさ、夜になったら普通にお泊まり会しような」
    「......うん」
     あっさり要求を聞いてもらえて、変な意地を張って秘密にしていたのが少し恥ずかしくなる。
    熱い顔を隠すように俯くと、キバナさんが軽く覗き込むようにそばにきて、また唇を奪われる。
    「キスは別腹だから」
     すぐに解放されて、屁理屈のような言葉でぼくに言い聞かせるように宣って、今度は長いキスを与えられた。
    閉じていた瞼の奥の光が徐々に眩しく感じて、目を開くと、窓の外で雲の隙間から陽の光が差し込んでいた。
    「雨止んだな」
     ぼくの背中を優しくさすりながらキバナさんが呟いた。

     先程プレゼントされたマグカップに、電気ポットで沸かしたお湯を注ぎ暖めている間にキバナさんが鍋でミルクティーを作っている。
     時間的には昼食時だけど、今晩はマーケットの露天で食べ歩きする予定なので、トースト一枚だけをお茶のお供にした簡単なランチで済ます事になった。
    「はい。んで、こっちはオレ様のな」
     テーブルの上には、キバナさんの作ったホットミルクティーの入ったマグカップが二つ並んだ。
    「ありがとうございます。
    いただきます」
    「召し上がれ」
     一口飲むと、身体の芯から温まる優しい味がする。
    「美味しい」
    「そりゃ良かった。
    オレ様もいただきまーす」

     テレビのワイドショーを見ながら食事を済ませる。
    食器を洗って、キバナさんが荷解きを済ませて、今日買いに行くオーナメントをつける予定のツリーを居間に出して......と細かい用事が済んだところで、クリスマスマーケットの開催時間までまだ2時間ほど余裕が出来てしまった。
     ソファーに座るとキバナさんに肩を抱き寄せられたのでそのままテレビに視線を移す。
    「この時間帯はあまり面白い番組ないなぁ」
    「そうですね……。
    あ、でもぼく、この女優さん好きです」
    「どれ?」
    「ほら、CM出てる人です」
     ぼくが指差した先に映ったのは、最近売り出し中の若手女優だ。
    「あー! この子な〜、舞台女優なのにヨロイ島でサバイバルやっちゃう子」
    「この人今日マーケットの会場に来るんですよ」
    「そうなの?」
    「なんでも期間中、一日に2回ほど、クリスマスに因んだ劇をやるとか......ああ、主人公の羊飼い役なんですね」
    「へぇ〜」
     迫力のある演技をする人だけど普段は緩いキャラで、CMやバラエティでは可愛らしい振る舞いを売りとしている。
    CMの後は競輪の番組が始まった。
    「へぇ、このチャンネルって今の時間帯競輪なんだ」  
    「普段昼間テレビ見ませんからね」
    「はー、出かけるまでちょっと暇だな」
     キバナさんがジワジワと少しずつぼくを押し倒した後覆い被さり、頬擦りをしてくる。
    「......しませんよ?」
    「わかってるって、くっつきたいだけ」
     そう言ってぼくの首元に顔を埋める。
    鼻息がくすぐったくて身を捩っていると、キバナさんがふと思い出したという風に話し始めた。
    「昨日の夜、夢を見てな。
    内容ははっきりとは覚えていないけど、薄暗くて雪のちらつく森の中にぼんやりと光が見えて......オレはそれを追いかけたんだ。
    近付くにつれ光は強まり、森の奥でとうとうまばゆいばかりのそいつと向かい合う......そこで目が覚めたんだ。
    もしかしたらあれは予知夢で、今晩伝説のポケモンに会えたりするかもな」
    「キルクスでそんな話ありましたっけ?」
    「あーでも、ニンフィアとドラゴンの御伽噺って、著者がキルクス出身だったような?」
    「あ、ん......そう、でしたっけ......?」
     他愛もない話と首筋へのキスを同時進行でしてくるから困る。
    ぼくもキバナさんの背中に腕を回し抱き締め返すと、キバナさんの動きが止まって静かになった。
    そのままお互い黙っていたが、突然キバナさんが勢いよく起き上がった。
    どうしたのかと見上げると、キバナさんが真剣な表情でこちらを見る。
    「夢で見た伝説のポケモンらしきやつ、オマエだった気がしてきた」
    「何バカなこと言ってるんですか」
     人間ですよぼくは、と言うとキバナさんはまだ何か納得がいかないように考えこんでいる。
    「......ぼくはポケモンみたいに発光しませんから」
    「そこじゃねぇんだよなぁ」
    「じゃあどこですか」
    「ん〜……内緒」
    「教えてくださいよ!」
     キバナさんの腕の中で暴れるも、結局彼は口を割らなかった。


    「さて、行くか」
    「はい」
     身支度を済ませて玄関の戸締りを確認する。
    マーケット初日は混雑するのでスマホに入ったお互いのロトム達以外のポケモンは今日はお留守番だ。
    「マクワのとこの子は慣れてるよなぁ」
     ポケモン達のリクエストを書いた買い物メモを見てキバナさんが言う。
    キルクスは観光地だけあってメインの開催年で無い時も、つまり規模の差はあれど毎年クリスマスマーケットをやっている。
     ぼくのポケモン達は出し物を把握しているからお土産のリクエストがかなり具体的だ。
     ぼくの家はキルクスのメインストリートから離れた住宅地にある為、街までは白樺の遊歩道を歩いていく。
    キバナさんは朝とは違うコートに、中に結構な重ね着をしてもこもこになっている。
    動きにくそうだけど、あまり見ない格好がなんだか可愛いかった。
     雪道を歩く足取りは軽い。
    時折冷たい風に乗って雪がちらついてくる。
    日差しがない分空気はとても冷たく、吐いた息はすぐに白く染まる。
     道すがら、ぼくはずっと気になっていたことを切り出した。
     ここ数日......特に昨日、この遊歩道の道を逸れて森の奥へ行く方角がぼんやりと明るくなっているのを、家の窓から見たような気がしたのだ。
    「まるでさっき聞いたキバナさんの見た夢みたいですね」
     ぼくが笑いながら言うと、キバナさんは少し考える素振りをして口を開いた。
    「普段その辺が明るくなるような施設や設備とか、人の侵入はあるのか?」
    「全くないわけではないのですが......でもまあ、気がした程度のものですから。 気になるなら後日調べたら良いし、行きましょう」
    「そうだな」
     考え事で歩幅が狭まっていたキバナさんが、先に歩いていたぼくに駆け足で追いついて、にぱっと笑った。

     街の中はもう観光客が往来を所狭しと埋めている。
    地元民は勝手知ったるもので、観光客が出店を歩き回る中、早々に確保した軽食片手に休憩スペースで人の流れを眺めている。
     普段ならぼくも地元の友達とそうして空くタイミングを見るところだが、今年は恋人と一緒なので観光客っぽくあの人混みに呑まれてみようと思う。
    「とりあえず端から端まで歩いてみましょうか」
    「おう。列でもたつかないように、買い食いする分はオレが出すからな。何食べたい?」
     キバナさんの問いかけに、ぼくは自分の腹具合を考える。
    食べ歩き前提で昼をトーストで済ませたが、そういえば朝食も摂っていなかったので大分余裕がある。
    「ぼくは最初から重めでもOKですね」
     そう返すと、キバナさんがふと思いついたように言った。
    「じゃあガレットとかどうかな」
    「えーと確かクレープみたいな食べ物ですよね」
     ガレットといえば、確かカロスの方の料理だ。
    一人暮らしを始めてからは久しく食べていないけど、母さんがたまに作ってくれた記憶がある。
    ちょうど側に店があるから気になったのだろう。
    「じゃあまずあれにしましょうか」
    「隣の店のスープも買いたいけどオマエも飲む?」
    「そうですね、ぼくスープの方はビスクがいいです」
    「オレも同じのでいいや、ガレットは......あったかいのが良いからエビとじゃがいものにしようかな」
    「ならぼくも同じもので」
     手で持てるように巻かれて包装された、柔らかい生地のラップガレットと、クリスマスらしい模様の付いた紙コップに注がれたビスクを手に、人の流れに沿うようにマーケットの通路を歩く。
     道中焼き菓子や串焼きなどを買い食いしながら雑貨屋の品を地図を見つつ目星をつけて、道の反対側、端っこの方までくる。
     一本道を直進しただけなので路地をチェックするならまだ半分くらいの踏破率だ。
    「あの店のカレーうまそうだな、今はちょっと腹膨れてるけど」
    「今来た道の範囲で買い物したら寄りましょうか」
    「そうだな、でその後細い道の店見に行くか」
    「はい」
     そう言って次の予定を決めていく。

     さっきよりさらに人が溢れてきたので、少し道の端によった。
    「わっ……」
     ぼくの肩をキバナさんが抱き寄せる。
    道幅はそう狭くはないが、端の方を歩く時はしばしばテントの屋根をくぐりながらの移動になる。
     その度にキバナさんが側に寄せようとして抱き寄せてくるので少しドキドキしていた。
    その心音に気付かれていたようで、目があった時に微笑まれる。
     そんなぼく達の姿をキバナさんのスマホロトムが写真に収めたようで、シャッター音の後に目線で軽く咎めると、ロトムはニヤニヤと笑っていた。
    「いたずら小僧だ」
    「おこって下さい」
    「やだよ、オレ今の写真見たいもん」
    「もう」

     メイン通りでの買い物をあらかた済ませて、先程言っていた出店のテーブルスペースでカレーを食べながら、戦利品をチェックする。
     色とりどりのオーナメントのオーブにイルミネーションの光が写ってキラキラと光った。
    「普段は寒いのダメだけど、こういう場所で食うあったかいものってオツなもんだなぁ」
     カレーと一緒に頼んだホットワインで少し赤くなった顔でキバナさんが笑った。
    「ぼくも結構好きです、毎年なんだかんだで来ていましたしね」
    「いいなぁオレもキルクスで毎年やってたのもっと早く知りたかった」
    「なら、これから毎年来ましょうよ」
    「そうだな」
     そういえば、とキバナさんが呟いた。
    「オレんちも母親がそういうの好きだったな、小さい頃は親と一緒に出かけるとしたら職場に着いて行く事の方が多かったけど」
    そう言ってキバナさんは両親へのお土産の包みを見つめた。
    「いつか、ナックルで開催する年にはご両親も一緒に......」
    「その時はオマエの家族もな」
    「......」
    「なぁに? メロンさん誘うの恥ずかしいって? オマエが言わないならオレから誘うさ」
    「お構いなく、流石に自分から言いますよ。 ぼくが言い出した話ですからね」
    「そうしなよ、オマエのママ絶対喜ぶぜ」
     キバナさんが笑いかけてくれる。
    ぼくはその笑顔を見ていたらなんだか照れ臭くて、誤魔化すようにカレーを口に運んだ。
    「よし、冷めない内にカレー食っちゃって買い物第二ラウンドといくか」
    「ええ」

     街灯の光も増して、夜が深まってくる。
    イルミネーションに包まれ、華やかに飾られたマーケットの道を堪能して、最後に昼間話していた劇を広場で見てから帰宅した。
    「はーやっぱ歩いて帰って来られる距離は良いな」
    「いっぱい歩きましたからね」
     留守番していたポケモン達に迎えられながら居間やダイニングのテーブルに買ったものを広げる。
    見返して見ると随分買い込んだものである。
     飾りに使うものは一旦仕舞って、お土産を物色して盛り上がるポケモン達を眺めながらぼくとキバナさんはそれぞれ家族や友達へのプレゼントをラッピングして、判別がつくように名前を書いたシールを貼る。
     これでクリスマスへの備えは完璧だ。

     簡単な夜食を済ませて少し寛いだ後、一通り寝る前の準備を済ませて、ポケモン達が寝た後、ぼくらは二階の部屋にセットしておいた布団に座り込む。
    「なあなあ、一通り遊んで良い感じに疲れて、今本当にお泊まり会みたいな気分だな」
     キバナさんがそう言ってぼくの手を握る。
    「……そうですね、楽しいです」
     ぼくもその手を握り返した。
    「枕投げもする?」
    「どうしようかな」
     どちらともなくクスクスと笑った。
     しばらく今日のことや、他愛もない話を喋っている内に眠くなってきて、どちらともなく布団に入った。
    「今日ロトム達が撮ってくれた写真、明日見ような」
    「うん」
     キバナさんが明日の話を子守唄のように囁いてくる。
    「朝になったらココアを淹れてやる。 アローラ産の珍しいやつが売ってたんだ」
    「ん......」
     だんだんとぼくの瞼が重くなってくる。
    「おやすみ」
     額にキスをされる感触を最後に、ぼくは眠った。


     朝起きるとすぐ側で、キバナさんが寝息を立てている。
    ぼくの身体に腕を回しているので、起き上がる事も出来ない。
     しばらくの間その寝顔を眺めていたけど、30分ほどを過ぎたところで起こす事にした。
    「キバナさん、キバナさん」
    「ん〜……」
     キバナさんの頬を指でつつくと、眉間に皺を寄せた後、何やらむにゃむにゃと寝言を言ってまた静かになってしまった。
    何事も無かったように眠り続ける彼の頬にキスをしてみても、起きる気配はない。
    「ふふ」
     昨日あんなにはしゃいでいたせいか、まだ寝足りないらしい。
    ぼくは彼の胸元に顔を埋めて目覚めを待つ事にした。
     起きたらまずおはようの挨拶をして、それから二人で朝食を作ろう。
     それと、昨日キバナさんが話していた雪の森の奥にあった謎の光の夢と、キルクスの遊歩道の奥の光が関連があるのか調べてみたい。
     あくまで夢の話なのだから、大した意味はないとは思うのだけど......。
     ぼくが思案していると肩を撫でられる感触、目線を上にやると眠そうな顔のキバナさんと目が合う。
    「おはようございます」
     キバナさんは目をしぱしぱさせながらまだ何やらモニョモニョとした声を発しているけど、言葉の意味はまだ夢の中に置いてけぼりのようた。
     唇にキスをするとパチリと目が開く......ふにゃりと笑った後彼はまたそのまま目を閉じた。
    「起きてください」
    「ん〜」
    「ココア、淹れてくれるのでしょう?」
    「んー......んむ」
     起きようとはしているらしい彼の頬をしばらくふにふにとつついていると徐々に目を覚ましてきたようだった。
    「......おはよ」
    「おはよう、寝坊助さん」
    「んふふ」
    「......」
     放っておくとこのまま二度寝に入りそうなのでそっと掛け布団を剥がすと、か細い声で「さむい」と彼が呟いた。


     昨日に引き続き留守番するポケモン達に見送られ家を出る。
    あまり人が寄り付かない場所に行く為に、寒さに強いセキタンザンとコータスに着いてきてもらう事にする。
     ジュラルドンはソファーですやすや眠っていたのでそっとしておいた。
    まあほとんど舗装された道を行くだけなのでバトルの必要はないだろう。

     昨日歩いた白樺の遊歩道の途中から、脇に逸れた別の道に進む。
    こちらも舗装はされているが、通る人は滅多にいない。
    最低限の整備だけがされた道は進むにつれて白樺以外の植物も混じり、深く鬱蒼としていく。
    「......このまま行くと山の麓だよな、先は行き止まりか」
    「まあ......山ですよ」
    「何かあるような口ぶりだな」
    「ええ。この道の先まで行くと洞窟があるらしいのですが、前に聞いた話だと人の手が入っている様子なので......炭鉱か何かじゃないですかね」
    「ほーん」
     キバナさんは砂の中から外を伺うフライゴンみたいな顔をして山を眺めている。
    「折角だから行けるところまで行きたい」
    「それなりに距離はありますよ」
    「オマエがイヤじゃなければ」
    「いいでしょう」
     ここまで来たからには自分も引き返す気はなかった。
    何の根拠もない夢の話なのに、ぼくにもすっかり好奇心が芽生えていたのだ。

     木々に遮られて空がほとんど見えない上、周囲は雪に覆われて静まり返っている。
    舗装された道は続いているが、殆どが雪に隠れて随分と狭まっている事がここに滅多に人が来ない事を示していた。
     そんな事を考えていた時だった、木々の隙間からかすかな虹色の光がぼんやりと見え始めたのだ。
     最初は目の錯覚かと思ったが、歩みを進めるたびにその光は鮮明になり、雪に反射して揺らめいているのがはっきりと分かる。
    「……なんだろ、あれ?」
    「さあ……でも、ただの光じゃなさそうですね」
    「まるで動いてるみたいだよな。風に揺られてるってわけでもなさそうだし……」
    「近くで見れば分かるかもしれません。行ってみましょうか?」
    「ああ……なんか、すげえ気になる」

     ぼくらは顔を見合わせ、自然と歩く速度も速まった。
    「きっと超常現象だぜ」
    「まさか」
    「いや、だってオマエ見てみろよ!ほら、雪に反射した光の色が絶えず変わっている......あんなの見た事ないぜ」
    「昨日見たイルミネーションも雪にうつるとあんな感じでしたよ」
    「そうじゃなくて......!」
    「分かっています、冗談ですよ。 ......あの光、どこかで見たような覚えがあるんですよね」
    「えっマジ?」
    「マジです。あっ......光がさっきより強くなってきましたよ」
     ほら、と言ってぼくは前を指さした。目を凝らすと、光源は明らかに道の先にあるようだった。キバナさんも口を閉じ、しばらくその光をじっと見つめている。
    「移動してる......?」
    「ああ、けど止まったみたいだな」
    「......もっと、近づいてみます?」
    「ここまで来たら行かない手はないよな」
     キバナさんの声に少し緊張が滲む。
    ぼくもホルダーに嵌っているセキタンザンが控えているボールに、無意識のうちに手を添えていた。
    彼が答えるようにボールを揺らす感触に、重くなりかけた足に力が入った。

     ぽっかりと大穴の空いた山肌、これがおそらく炭鉱に使われている洞窟......? ここまで足を運んだのは初めてだ。
    位置的にはもうホワイトヒルの山脈の一部だろう。
     そして光の主は、洞窟の手前に佇んでいた。
    「あれは......」
     オーロラに似た鰭から放たれる輝きが雪に反射して辺り一面が眩しく照らされている。
    アマルルガだ。
     ガラルに化石があるという話は聞いた記憶があるけど、キルクス周辺で発見された事は無い種だった筈だ。
    おそらく、雪にうつる虹色の光にぼくが先程感じた既視感は、以前テレビで見たアマルルガの映像の記憶だろう。
    「洞窟の中に入って行くぜ」
    「ついて行ってみましょうか」
     キョロキョロと辺りを見回しながらゆっくり進むアマルルガの後を付かず離れず尾行していると、進む先に人影が現れた。
    「おや」
    「あっ」
     人影はぼくがよく知る人物だった。
    マネージャーに連れられてスポンサー企業の現場見学などをした際にいつもお世話になっている人、ガラル興産の現場主任だ。
     おっ、先客か?と首を傾げるキバナさんと主任、それぞれと顔を見合わせた後、ここが何なのか聞く事にした。
    「あの、ここって......」
    「ああ、ここは鉱石の採掘場とは違うんですよ。ジムリーダーさんならほら、あの機械とかリーグの研修で見るでしょ」
     奥の方にある機械を指差して、ぼくらがそれを見やると彼が説明を始めた。

    曰く、この洞窟は化石の発掘調査の為に2年ほど前に掘られ、半年前まで調査隊がここを出入りしていたそうだ。
    「我々はここの調査隊のリーダーをしていたウカッツ博士からの依頼で機械の撤収作業をしに来ていたんですがね、その博士が復元装置の電源を切り忘れていたようで実に半年程の間あれは人知れず稼働していたらしく......」
    「じゃあ知らない内に復元した化石ポケモンがいくつもいる可能性があるって事か......言っちゃなんだが、面白半分でわざわざ化石をここに運んだ人間がいたっておかしくないぜ」 
    「ず、杜撰すぎませんか......!?」
    「......なんでも、迂闊な事で有名な方みたいですよ」
     ああ、もう機械の電源は落としてありますがねと主任が説明している背後で我関せずとばかりに先程のアマルルガがのっしのっしと周辺を闊歩している。
    「この洞窟は閉鎖する予定でして、アマルルガ達がここに棲みついているようなら退去させる必要があるので行動を観察していたんです。
     結果、現在住処にしているのはロンドエリアに隣接した地点だと判明しました。
    よってここは近日中に立ち入り禁止区域となります」
    「ではそこにいるアマルルガは......?」
    「どうやら気まぐれに生まれ故郷......古巣を覗きに来ただけのようですね。
    さあ、お前もそろそろ仲間がいる場所に帰ろう」
     アマルルガが物思いに浸るように洞窟の中を見回している。
    その場にいる全員が彼を見守っていると、しばらくしてぼくらを見て小さく鳴いた。


     アマルルガと現場主任に別れの挨拶をして、ぼく達は洞窟を後にする。
    時間はいつの間にか夕方になっていた。
    「まさかオレが見た夢そっくりの光景に実際に出くわすとは思ってもみなかったぜ......マジで予知夢かなんかだったのかな」
     キバナさんが空を眺めながら、どこかキツネポケモンにつままれたような顔で呟いた。
    「例の夢が予知夢か何かだったなら、キバナさんはアマルルガのどの辺りにぼくを見出したんでしょうね」
    「そりゃあオマエあれだ、キラキラしているところだな!」
    「うわ......返答に困る」
    「何でだよ!?恋してりゃ相手のことは常にキラキラして見えるもんだろー?」
    「そんな乙女みたいな......まあ、その、否定はしませんよ」
    「へっ!?」
     ぼくの言葉にキバナさんが一瞬固まった後、もじもじとしている。
    空が夕焼けじゃなかったら頬が赤くなっているのが見えただろう。
     おそらくぼくも同じような顔をしている気がする。
    「「......」」
     お互い照れ臭いまま、白樺の小径の中で立ち止まってしまう。
    「帰りましょ!」
    「お、おお!」
     ここにいても仕方ないので強引に照れ臭い空気を断ち切って、ぼくはキバナさんの手を引き早歩きした。
    「フフ......」
     何がおかしいのやらキバナさんがクスクス笑い出す。
    でも、同じようにぼくも笑っていた。

    「おっ、マクワ見てみて」
    「え......あっ!」
     暗色に染まり始めた空にうっすらとオーロラの光がたなびいていた。
    「知っていますか、アマルルガが吠えると空にオーロラが現れると言われているんですよ」
    「へぇ......なら空が、ここにいるアイツに気付いたんだな」
    「なんだか先程からロマンチストみたいですね」
    「......」
    「?」
     キバナさんが歩みを止めるのでぼくは振り返る。
    「オマエと一緒だからだよ」
    「な......」
    「マクワ......」
    「......返答に困る」
    「だから何でだよ」
    「はずかしいからです......」
    ぼくが口籠ると彼の顔はじわじわとにやけ顔になっていった。
    「......帰ろ」
    「あっ、待てよ」
     照れ隠しにため息一つ吐いて早足で歩き出すと、キバナさんに肩を抱かれる。
    淡雪を照らす光の過ぎ去った暗い道をはぐれないように、身を寄せ合って僕らは家路についた。
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