学生時代フェヒュ
「フェルディナント、もしよかったらこの後に時間をもらえるかな」
フェルディナントが担任教師のべレスに声をかけられたのは、演習を兼ねた魔獣討伐から修道院に帰還し、訓練場で得物の手入れをしていた夕方のことだった。
「先生?この私に何かご用かね、もちろん良いとも。」
凄腕の傭兵であるベレスから個人指導を受けることができるかもしれない、と浮き立っていたフェルディナントの期待は、その待ち合わせ場所を聞いて即座に雲散霧消した。
「じゃあ、夕飯後にヒューベルトの部屋に来てくれ」
べレスの用向きは予想ができる。自分とヒューベルトの仲の悪さは黒鷲の学級の中でも有名で、たまに会話を交えれば嫌味と皮肉の応酬、今回の演習でも腰巾着はエーデルガルトの後衛にべったり張り付いていた一方、自分は少し離れた前線で戦っていた。
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