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    sangurai3

    かなり前に成人済。ダイ大熱突然再燃。ポップが好き。
    CPもの、健全、明暗、軽重、何でもありのためご注意ください。
    妄想メモ投げ捨てアカウントのつもりが割と完成品が増えてきました。

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    sangurai3

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    ダイ大二次創作 原作完結後 マァムの心情メインに色々未満なポプマムメル3人旅の一幕
    マァムを美しく可愛く格好良く書きたいのになかなか上手くいかない。女の子ムズカシイ。

    乙女心が殻を突く東の空に朝日が昇るのとほぼ同時にマァムの1日は始まる。
    まだ夢の中にいる2人、ポップとメルルを起こさぬよう寝床を出て動きやすい服に着替える。
    朝食の用意には早いため水だけを汲み置き、眠る彼等から少し離れ開けた場所を目指す。日々の日課である鍛錬を行うためだ。
    鍛錬と言っても早朝から激しいものは行わない。
    自身の筋肉や関節の動きを感じながら、ゆっくりと武術の型をなぞるのだ。
    目を閉じたまま、掌を真っ直ぐ前に伸ばす。肩からではなく胸の筋肉から全てが腕であるように意識する。
    つま先から徐々に脚を上げていく。体幹がぶれぬよう集中して。地から天に向け、身体の中に一本の芯が通っているかのように立つ。勢いで蹴り上げるのではなく、全身の力を無駄にせず先端へと伝えていく。
    親譲りであり、自らも更に磨き上げてきた力と素早さ。ここに老師から教わったしなやかさを合わせ、身のこなしを極めていく。
    風にしなる枝のように、あるいは激しい流れに耐える巌のように、その身体が自然と一体となるのを目指してマァムは無心で型を繰り返す。

    マァムの旅の同行者はどちらかと言えば夜型だ。
    ポップは完全に宵っ張りの朝寝坊。毎日夜半過ぎまで起きていて、朝はマァムに叩き起こされている。
    時折誰より早く目を覚ましていることもあるが、それは「起きた」のではなく「寝ていない」のだとマァムは知っている。
    ちゃんと寝なさいと注意をしたいのが本音だが、遊ぶために起きているのではないと知っているのでどうも昔のようには叱りづらい。
    不意に目が覚めた深夜、薄い光を身に纏わせて瞑想をするポップの姿に目を奪われてしまってからは、彼の夜更しに対して一層何も言えなくなってしまっている。
    メルルはそれなりに早起きだが、集中して占いをするには騒がしい日中よりも静かな夜の方が良いらしい。
    水晶玉や占いに使用する道具を月光浴させながら瞑想している彼女の姿は神秘的で、同性のマァムから見てもとても美しいと感じる。
    ぱっと見は正反対だが2人の本質は実はよく似ている、とマァムは思う。
    何しろあの大戦の中、意識を共有することができるようになったほどなのだ(現在は無闇に交信しないよう敢えて"閉じて"いるらしいが)。通じ合うものがあるのだろう。
    普段表には見せぬ情熱、激情。夜の闇の中、瞑想をしているときの清廉さ、神聖性。
    人知を越えた力を持つ、魔法と、占術の使い手。マァムも多少の魔法は使えるがその差は語るまでも無い。
    あの2人は、私とは違う。
    そう感じたときに胸に宿った気持ちにふさわしい名前を、マァムはまだ見つけられずにいる。
    人によってはそれは疎外感だと言うのだろう。またある人は嫉妬だと言うのかもしれない。
    多分それらは正解に近い、とも思う。しかし近くはあるがそのものでも無いとも感じるのだ。
    2人が互いの間でしか分からないことを語り合っているとき、もやりとしたものが顔を出すことがある。
    だが笑い合う笑顔を見ていると、何とも言えない温かな気持ちに包まれることもあるのだ。
    穏やかなわけではない、しかし辛いわけでもない。矛盾した感情が胸の奥の更に内側から、こつん、こつんとマァムをつつく。

    ポップもメルルもマァムを蔑ろにすることなど一切無い。ただ、それぞれの間には「仲間」では済まない感情があることも確かだ。
    ポップに想いを伝えたメルルと。マァムに告白をしたポップと。そして今もはっきりとした答えを出さずにいるマァムと。
    焦って答えなくてもいい、とポップは言ってくれた。無理に答えを出すよりちゃんと考えてくれていることの方が嬉しい、と。
    自分の胸の内にあるこの感情は恋に近いのだろうか。それとももっと幼い、子どもの我が儘のようなものなのだろうか。
    マァムはまだ分からないままでいる。

    無心であるべきところを結局あれこれと雑念に囚われてしまった。
    駄目ね、まだまだ修行が足りないわ、と反省しながらマァムは朝の鍛錬を終える。
    伸ばしていた手足を自らの元に納め、ふーっと深く息を吐いて心を落ち着けようとしていると、ぱちぱちぱちぱち、と不揃いな音が聞こえてきた。
    目を開き音のした方に顔を向ければ、いつの間にか起きていたポップとメルルが並んで座りマァムに拍手を送っていた。
    「…え、何?どうしたの?」
    何故拍手を受けているのか分からず、戸惑う。そんなマァムに「すいません」とメルルは切り出した。
    「朝食の用意が出来たので呼びに来たんですが、マァムさん集中してらして…」
    「あ、ごめんなさい。声かけてくれてたのね。気付かなくって」
    慌てるマァムに、違うんです、とメルルは続ける。
    「声もかけられないくらい集中していらっしゃるのが分かったんです。その、その姿がもう…」
    ぐっと両の手を握りしめメルルは目を閉じる。頬が微かに赤い。何か怒らせるようなことでもあっただろうか、とマァムが思案していると
    「とっても綺麗だったんです!」
    「…はい?」
    ぱっと開いたメルルの瞳はいつも以上に大きく、きらきらと輝いていた。
    「あんまり綺麗だったものですから、これは私1人で見るのはもったいないと思って!慌ててポップさんを起こしてきたんです!」
    「そ、そう…?」
    今までに見たことないほど興奮したメルルの姿にマァムは少々気圧される。一方のポップは呆けたような表情で口を開いた。
    「いやあ、朝からいいモン見させてもらったわー…眼福ってこういうこと言うんだなー…凄かったー…」
    ぽけーっとしたまま言葉を続ける。
    「体幹がしっかりしてっから動きにブレが無えんだよなー。素早く技かけてる時ももちろん凄えけどあんなゆっくりでもブレないってのがまた凄えよなあ。反動使うんじゃなくて身体の芯から力伝えてるから拳も蹴りも安定してるし。あ、今のって型やりながら瞑想もしてたろ?」
    「え、ええ、一応」
    予想以上の的確な感想と指摘に戸惑いながら答える。
    「だよなー。身体動かしながら瞑想とかマジですげーよお前。座ってても集中続かない奴もいるのに。閃華裂光拳は魔法力の消費は少なくてもコントロール難しそうだもんな。やっぱこういう日々の鍛錬が物を言うんだなー」
    「私は魔法のことはそんなに詳しく分かりませんが、やはり凄いことなんですね。マァムさんキラキラしていて武術の型なのに何というか神々しいくらい美しくて…」
    「舞踊みたいな」
    「そう、そうですポップさん!子どもの頃、神殿で巫女様の舞いを見たことがあるんですがそれを思い出しました!」
    「究極まで洗練された身体の動きっつー意味では武術と舞踊は近いモンがあるのかもなあ」
    「ああ、なるほど、そうかもしれませんね。戦いのための動きも極めればここまで美しくなるものなんですね!」
    興奮したままのメルルと、うっとりとした様相のポップ。ぽかんとしている当のマァムそっちのけで語り続ける2人。いつもならあのもやりとした感情が顔を出すところなのだが。
    何だかその様子が
    「…可愛い…」
    え、と2人同時にマァムの方を向く。そのきょとんとした顔がまた可愛らしく思えて、マァムはつい笑ってしまう。
    「ふ、ふふふっ…ごめんなさい。2人が、すごく褒めてくれるから…何だか…」
    笑いが治まらないマァムの様子を見て我に返ったのか、メルルは更に顔を赤くして恥ずかしそうに俯く。ポップの方は「可愛いって…やっぱガキ扱いかよ…」と遠い目をしていた。
    「ふふっ…違う、違うの、子ども扱いじゃなくてね」
    2人のように饒舌には語れない。でも今、彼等に言っておきたい言葉があった。
    「何だかね、好きだなあって思ったの。2人のこと」
    晴れやかな笑顔で告げるマァムに、ポップとメルルは目を丸くする。
    マァムとお互いの顔を幾度か交互に見返した後、照れたようにふわっと笑った。
    「私もマァムさんのこと、大好きですよ。もちろんポップさんのことも」
    「おれも…えーと、うん、前言ったとおり、好き、だし、メルルのことも、あのほら、うん。好きだぜ。…えーと…」
    素直に思いを返すメルルと、誤解を生まぬよう言葉に気を付けねばともごもごするポップ。その様子に分かってますよとメルルが微笑み、ありがとうとマァムも笑った。
    いつだかレオナが言われたことがある。愛の形に優劣は無いし、恋の仕方だって人それぞれのはずよ。激しい愛もあれば温かい愛もある。あなたの心を誰かと比べることは無いわ、と。
    今はこの感情に無理に名付ける必要は無いのかもしれない。私は私なりに歩んでいけばいいのよね、と笑い合いながらマァムは思った。

    「そうそう、朝ご飯だったわね。待たせちゃってごめんなさい。何か手伝うことがあるかしら」
    仕切り直そうとパンと両手を叩き、マァムがメルルに問う。
    「大丈夫ですよ。マァムさんが先に水を汲んでくれてましたし。今、火は消してますから温め直しましょう」
    メルルに促され野営地に向かって歩き出す。腹減ったーと言いながらポップがマァムのすぐ側に来た。
    (あっ…!)
    急に自分が汗だくであることに気付き、焦る。戦闘の際など汗をかくのはいつものことなのだが、近づかれたせいで妙に気になってしまう。
    「ちょ、ちょっとポップ、近くない?」
    そう言うマァムに「へ、そうか?」と返すポップ。鍛錬時のマァムの薄着もいつものことだ。毎度見とれてはいるがポップとしては怒られるほど近づいてはいないつもりなのだが。
    きょとんとするポップに、意識しているのは自分だけかとより恥ずかしくなるマァム。とにかくこの汗を早くどうにかしたいと更に焦る。
    「え、えっと、私…水汲んでくるわね!」
    言うが早いかぴゅーっと川辺に走って行ってしまった。残された2人は呆然としている。
    「え、あいつ先に水汲んでくれてたよな…?」
    「そうですね…」
    手ぶらでどうやって水汲むんだよ?もしかしておれまた何かやっちまったか?と首を捻るポップを見ながら、メルルはマァムの突然の行動の理由を察して薄く微笑む。
    (普通に汗を流しに行くって言ってくれても構わないのに…でもマァムさんのああいうところ、何だか可愛いわ)
    一応恋敵ではあるのだが、真っ直ぐな性分のマァムはとても好感の持てる人だ。
    彼女の中で答えが出る日もそう遠くないのかもしれない。でもできればこの3人でもう少し旅を続けられればいいな、とメルルは思った。

    (あー私ったら何で普通に汗を流しに行くって言えなかったの!?て言うか何で急にポップのこと意識しちゃったの!?
    ち、違うわ、ポップだったからじゃないはずよ。だってあの時近くに来たのが他の人だったとしてもやっぱり汗が気になっちゃうもの。た、たとえばヒュンケル…
    待って待って今ヒュンケルのこと考えるってどうなの!?え、考えちゃ駄目だっけ!?あーもう、またもやもやする!やっぱり修行が足りないんだわ、この未熟者ー!)
    頭の中でごちゃごちゃと叫びながらマァムは走る。胸の奥からまたこつん、こつんと何かがマァムをつつく。
    もどかしくていらついて、でも何故か愛おしい。何だか分からないけど手放してはいけない大事なものなのだということだけは彼女にも分かっている。
    (いつか、いつかこの気持ちの名前が分かる日が来るのかしら。そのとき私はどうなっているのかしら)
    ゆっくり歩んでいけばいいって思ってたのに私ったら自分から走っちゃってるみたい。水辺を目指しながらまとまりの無い自分の思いにマァムは苦笑いを浮かべた。

    まだ名前の無い小さな想いが殻を破って羽根を広げるまで、きっともうすぐ。
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