Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    sangurai3

    かなり前に成人済。ダイ大熱突然再燃。ポップが好き。
    CPもの、健全、明暗、軽重、何でもありのためご注意ください。
    妄想メモ投げ捨てアカウントのつもりが割と完成品が増えてきました。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 64

    sangurai3

    ☆quiet follow

    ある行為に没頭するポプと見守る(?)師匠。ネタバレはないはずです。無駄な努力をお楽しみいただければ幸い。

    ひとときの戯れ 眼前で惜しげもなく晒された若い素肌を、マトリフは食い入るように見つめていた。
     立て襟のついた長袖に長手袋。場所季節を問わず全身を覆い隠す衣服を着込んでいるポップがその身を露わにすることは滅多に無い。若木のように健やかに育った身体はほどよく引き締まり、成長期の少年らしい瑞々しさに満ち溢れている。その一方で日焼けを知らぬ腕に残された肉色の傷は妙になまめかしく、強い口吸いを受けた跡のようにも見える。
     自ら生みだした炎や氷の影響を受けぬよう厚めの衣を選ぶのは魔法使いにとっての常識ではあるが、それにしてもこれほど白い肌の持ち主を見たことがあっただろうか。マトリフは自身の長く深い経験を紐解いてみる。一瞬かつて共に戦場を駆けた年下の友人達の姿が浮かぶ。しかし彼らについて常に気にかけていたのは隠している傷は無いか痛めている部分は無いかということばかりだったと思い出し、そっと瞼の裏の残像を打ち消した。
     冷静に思い返せばパプニカの姫君やポップの兄弟子である戦士の方がよほど色白なのだが、普段人目に晒されることの無い部分を自分だけが目にしているという現実がマトリフの感覚を狂わせる。百に近い年月としつきをどれだけ掘り下げてみても、目の前のポップが放つ艶を記憶の中の若人達に見つけることはできなかった。
     静寂のなか、ポップは緩く瞼を開いた。契りを交わした余韻に頬は紅潮し、とろりとした光を孕んだ瞳はいまだ恍惚感に囚われている。しなやかな肢体にはじっとりと汗が浮かび、無数の水滴がきらきらと反射している様は光の羽衣を纏っているかのようだ。
     薄く開かれた唇から赤い尖りが覗く。乾きを潤すようにぺろりと舌なめずりをした後、ポップはこくんと唾を飲み込む。少年の細い喉奥で奏でられた音はマトリフの鼓膜を刺激し、体内でじわじわと反響し続けた。
     遂げられた行為に神聖性を求めようなどと、マトリフは露ほども思っていない。無論、生半可な気持ちで手を出すべきではないと考えてはいるし、想いの強さが伝われば深く結びつくことができるのだという説に否やを唱えるつもりも無い。ただ、どんなに理屈を重ねても結局はひとときの戯れに過ぎないのではないか。並みよりも長く深い時を生きた男は、ついそのように思ってしまう。
     如何に強い想いを捧げても叶わないこともあれば、圧倒的な力によって生涯を運命づけられるほどの契りとなることもある。浄めも穢れも関係ない。そこにあるのはただひとときの夢の戯れ。報われるかどうかも分からぬ契りであれば、そう考えていた方がいっそ身も心も楽になれるのではないか。少年の瑞々しい身体を見据えながら、老いた大魔道士は昏い笑みを口元に浮かべる。
     気怠げな息を吐いたのち数度瞬きをして、ポップはその大きな目をしっかりと開いた。意識は契りの快感からうつつに戻され、頬の赤らみも徐々に薄らいでいく。物言わぬマトリフを気にも留めず、ポップは乱雑に脱ぎ捨てられた衣服に向かって腕を伸ばした。その手に取られたのが若草色の上衣ではなく傍に置かれた小刀であったことにマトリフは瞠目する。制止の声が上がるより早くポップはさっと鞘から刃を抜く。そして銀色の切っ先を手のひらに当て、真っ直ぐ赤い筋を引いた。

    「ホイミ」
     唱えられた言葉は波音に混じり溶けていく。呆然とするマトリフを尻目に、ポップはもう一筋傷を作り同じ言葉を唱えた。三度繰り返しても何の変化も起きない手のひらをじっと見つめ、次いで刃先を手首にあてがう。ここでようやく我に返ったマトリフが慌てて近寄り、小刀を白い手から奪い取った。
    「何してやがる、この馬鹿」
     師匠からの叱責に、だって、とポップは口を尖らせる。くるりと振り返り砂浜に描かれた魔法陣を指差した。
    「せっかく回復呪文の契約出来たんだからさ。すぐ試してみてえじゃん」
    「だからっててめえの手に傷つける奴があるか。しかも手首まで切り裂こうたあ、どういう了見だ」
     睨みつけられた上に小刀の柄でごつんと小突かれ、ポップは涙目になる。だって師匠がさあ。ぼやく声にマトリフは眉をぴくりと上げる。
    「オレが何だってんだ?」
    「師匠が言ったんじゃねえか。おれは追いつめられないとダメだって。実際ベギラマできたのだってもう死ぬかもって時だったし。だからもうちょっと深い傷負ってヤベエってなったらホイミも使えるようになるかなーって……」
    「阿呆」
     弟子の言い訳をマトリフは一蹴した。赤く染まる手のひらに杖をかざす。
    「ホイミ」
     大魔道士の呪文は違えることなく効果を発揮し、薄い切り傷は跡形も無く消え去った。不満げな表情を隠さないポップをもう一度小突き、洞窟の入り口近くに置かれた水瓶を指す。
    「一回ごとに試してちゃ時間が足りねえだろうが。さっさと手ぇ洗ってこい。血まみれで契約陣になんぞ入ったらえらい目に遭うぞ。汗もきちんと拭いとけよ」
     へーいと気の抜けた返事をしてポップはぽてぽてと歩き出す。先程までとはうって変わったとぼけた後ろ姿に、マトリフはハアと溜息をついた。
     そもそも魔法使いである彼に回復系の呪文を契約させたのは今後の戦いにおいて必要になる冷静な視点を持たせるためでもあった。生じた効果をそのまま敵に放つ攻撃呪文とは違い、回復呪文はかける相手の状態を的確に見極めることが肝要である。傷の状態や体力の消耗具合を感知し、誰から、どこから癒やすのが最適であるかを即座に判断しなければならない。
     更に、時には敢えて前線から身を退き"自らを第一に守ること"も回復手の重要な役目だと言える。回復の担い手が先にやられてしまえば戦況の悪化、ひいてはパーティー全滅のおそれもあるからだ。どんな手練れであっても無傷で戦闘を終えられる者などそうはいない。戦士ら前衛職が身を盾にして僧侶や賢者を守るのは自分達のためでもあるのだ。武闘家に転身したマァムだけでなく、本来純粋な後衛職であるポップが回復役を担えればパーティー全体のバランスもより良くなるはず。そしてやたら最前線で無理をしがちなこの少年も多少は自らの身の安全を気にかけるようになるのではないか。アバンの忘れ形見達の命を無駄に散らせるわけにはいかないと考えるマトリフにとって、勝利そのものよりも彼らの生存こそが本願である。回復系呪文をポップに契約させたのはポップ自身と彼の仲間達が生き残る手段を増やすためだ。いたずらに傷を作り実験を繰り返させるためではない。
     そのあたりあの馬鹿はまったく分かっちゃいねえな。師匠の胸中をまったく推し量れぬ弟子の浅はかさに、大魔道士は天を仰ぐ。確かにポップは常に土壇場で新しい呪文を成功させてきた。しかしその成功の要因が『大切な仲間を守るため』であることに本人は気付いていないようだ。契約成功後も呪文が発動しない現状、他者のために成長してきたポップがいくら自傷を重ねようとも、彼の魂は『追いつめられた土壇場』にいると認識はしないだろう。いつか仲間達が危機に陥ったとき、ポップの真の実力が発揮されるはずだ。もっとも、それは決して望ましい事態ではないのだが。
     マトリフが思案に耽っている間に血と汗を洗い終わったポップは、新たに魔法陣を描き次の呪文の契約準備に入っていた。精霊を呼び寄せるための陣は既に仄かな光を放っている。ポップから契りを乞われるのが待ちきれず騒ぎ始めているのだ。。
     この世界に存在する数多の精霊達は気まぐれで悪戯好きで好奇心旺盛、そして時にとても残酷だ。糧となる魔法力の保持は当然のこととして、契約の可否は彼らに気に入られるかどうかに大きく左右される。そっぽを向かれれば生涯魔法を会得することは出来ないし、逆に気に入られ過ぎると身を破滅させられる場合もある。ポップに身を洗い清めるよう指示したのも彼らに気に入られ過ぎないためだ。生物の体内を巡る血液はいわば命そのもの。好奇心旺盛で残酷な彼らの大好物だ。万が一怪我を放置したまま契約陣に踏み入ってしまったならば、精霊達は歓喜の声を上げて流れる生命のきらめきを吸い上げ喰らい尽くしてしまうことだろう。
     また今回のポップのように、契約が成立したにもかかわらず呪文が行使できないという例も少なくはない。どんなに強い思いを込めて呪文を唱えても氷粒一つ作れない者もいれば、強力な呪文を御しきれず自身を焼き尽くした者もいる。全ては彼等のご機嫌次第。魔法を扱う者は皆、永遠の命を持つ精霊達がひととき戯れる相手として選ばれたに過ぎないのだ。
     陣の中心に立ったポップは解毒呪文の契約を乞うた。定められた文言を唱え終わらないうちに契約陣は激しく発光する。今この海辺には無数の精霊達が集まってきているのだろう。早く早く次の呪文の契約を。私とも契って、私とも遊ぼう。波音の中にそんな声を聞いた気がしてマトリフは思わず目を閉じる。弟子が生き残る確率を少しでも上げるために行わせているはずの契約が、むしろ精霊に生命を捧げる行為になってしまってはいないか。素質があれば十に満たない子どもでさえ扱える初級呪文であるにも関わらず、ポップが行う呪文契約はこの上なく美しく、危ういものに見えた。まだそちらには連れて行くなよとマトリフは心の中で願う。聞き届けたのか挑発しているのか、契約陣は更に眩しく光った。

     深き交わりを果たした身体は熱く火照っていた。身の内の猛りがそのまま溢れ出るかのように、拭っても拭っても汗がしたたり落ちてくる。ポップはそっと息を吐いた。
     こちらが乞う以上に相手は契りを望んでいるらしい。次を次をと求めてくる声が聞こえてくるようだ。快感に溺れそうになりながら、精神の一端で必死に現にしがみつく。完全に流されてしまっては身も心も壊されてしまう。若い身体は本能的に契りの奥にある危険を察知していた。委ねきってはならない。強い力に屈してしまってはならない。自ら望んだ契りであっても全てを明け渡したりはしない。何もかも奪われそうになったとしても、最後の一欠片だけは自分の手の中に。それがこの行為に身を投じる者が持つべき覚悟だとポップは考えていた。
     遂げられた行為に神聖性を求めようなどと、ポップは露ほども思っていない。無論、面白半分で手を出すべきではないと考えてはいるし、想いの強さが伝われば深く結びつくことができるのだという説に否やを唱えるつもりも無い。ただ、どんなに理屈を重ねても結局はひとときの戯れに過ぎないのではないか。並より濃く深い瞬間を生きている少年は、ついそのように思ってしまう。
     単なる遊び道具だと軽んじられていても構わない。ただ望む熱を与えてくれさえすればいい。わずかな期間に数えきれぬほどの契りを交わした身をポップは自らの腕で包む。全てを持って行くなら最後の最後にしてくれ。本願を成就したならば、この身などいくらでもくれてやるから。瑞々しい裸体を戯れの相手に惜しげなく晒し、少年は妖艶な笑みを浮かべ次の契りを求めた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏👏👏👏👏🌋🌋👏👏👏👏❤❤❤😊😊😊☺💖👏👏👏👏👏💫💫💫💖💖💖👏👏👏👏👏👏👏❤❤❤❤👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏❤💖😭👏👏🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works